テラーノベル
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#再会
#一途な思い
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「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私はそこまでの人間じゃないし……。それに私には欲しいものがあって、きっとそれはあなたからはもらえるはずがないの。だから……」
「でもさっきは俺を受け入れてくれただろ?」
「わかってる。私だってあなたのことは嫌じゃない。むしろ好きよ……友だちとして最高の人だと思ってる。でも今は守らなきゃならないものが出来たの」
「守らなきゃならないものって何なんだ? 二人でいたら守れないのか?」
宗吾が苦しそうに言葉を搾り出す。悲しみに顔を歪めた顔を見られまいと、六花は下を向いた。
「それは……」
返事に困り黙り込んでしまう。なんて言えばいい? 話せば受け入れてくれる? ──娘のことを打ち明けてもいいのか、心が揺らいだ。
いや、もう今更ダメよ。私は嘘をついて宗吾の元を去った。それは自分とお腹の子のためにした選択だったが、宗吾の気持ちを考えたかと聞かれれば、そうではないかもしれない。
初めて契約結婚と疑似恋愛の話をした時、『阿坂がそばにいてくれたらそれだけでいいんだよ』と宗吾は言った。
六花ははっとする。もしかして私は彼の気持ちを裏切ったのだろうか。妊娠という事実に焦って、自分のことしか考えていなかった? きちんと話していれば違う未来があったのだろうか──心の片隅に抱いたささやかな願いが、もしかしたら現実になっていた可能性があったのかもしれないと思うと、胸が締め付けられる。
でも娘のことを話して受け入れてくれたとしても、私が宗吾にしてしまったことを今さら変えることは出来ない。
「あの、宗吾……」
尋ねようにも言葉が出てこなかった。
頭も心もぐちゃぐちゃ──唇を噛み締めたそのタイミングで、運良くデザートが運ばれてきたため二人の会話は止まる。
六花がわざと話題を逸らすようにデザートの話を始めると、それを察したのか、宗吾も敢えてそれ以上は聞かないように口を閉ざした。