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11月が過ぎ去り12月に入った。寒さも本格的になり手が凍てつくような風がナイトレイブンカレッジにも吹き続けている。いつもなら周りの生徒は近々予定されている学期末のテストに恐怖しているはずなのだが今日はなんだか様子が違うようだ。
━━━side 監督生━━━
登校中に感じた他生徒の違和感の答え合わせはすぐに出来た。
他生徒の視線の先には廊下の奥から歩いてくる見慣れない男の人がいた。その人物は黒のジャケットに白いシャツを着ていて整った顔に四角の厚縁眼鏡を掛けている。彼はあちらこちらを見回っていて少し困っているようだった。
「こんにちは!どうされました?」
気づけば僕は話題の人物に声をかけていた。
彼は爽やかな声でああ、どうも。と言い僕に胸元から出した名刺を渡してきた。
「こんにちは、私はルミナス芸術専門学校のプロモーション科の中村修司といいます。」
「ど、どうも…」
「それで中村さんはどうしてここに?」
彼は名刺ケースを懐に戻しながら答えた。
「自分の担当アイドルを探しているんですよ。…あなたの後ろをついてきてる少女をね」
━━━side 茉白━━━
その人は唐突に現れた。
「久しぶりですね、茉白さん」
懐かしい声が段々と近づいてくる。見慣れたジャケットと黒縁眼鏡。一歩、二歩と彼はこちらにやってくる度に胸がぎゅっとする。その姿が完全に見えた時呼吸が止まったかのように思えた。
「これを見て、ここにたどり着きました。迎えに来るのが遅くなってしまってすみませんでした。」
彼の手には数日前に書いた手紙が握られていた。
「わざわざお手紙ありがとうございました。2ヶ月以上も急に学校から消えて心配していたところでしたので非常に助かりました」
彼は穏やかな笑みを浮かべ私の手をとった。
「おかえりなさい、俺の最高の担当アイドルさん」
「ぷ、ぷろでゅーさー。ありがとう…」
私は安堵して力が抜けてしまったのかその場でしゃがみこんで涙を零した。止めようとしても両頬に流れる涙が止まらない。彼の手を握った私は触れた瞬間からじんわりと心が溶けていく。優しい、懐かしい彼の体温が私に伝わってくる。
「泣く暇は無いですよ、茉白さん。」
プロデューサーは手を離して私にハンカチを差し出す。
「ライブ予定日は待ってはくれませんからね」
━━━━━━━━
プロデューサーと呼ばれた男中村は茉白の背中を擦りながらどこかへ二人で歩いていった。
残されたユウと途中から近くで見ていたエースとデュースが集まって話す。
「プロデューサーってどういうこと?」
「アイドルとか、言ってたよな?」
騒ぐエースとデュースを尻目にユウは中村から受け取った名刺を見る。
ルミナス芸術専門学校 プロモーション科 中村修司
宮代茉白 専属プロデューサー
と書かれていた。
「ここに書かれてる住所って日の国の地名っぽいよね。」
名刺の下部には小さな文字でルミナスという名の学校の住所と電話番号が印字されている。
「アイツ、何モンなんだゾ?」
肩に乗っているグリムも興味津々である。
「宮代さん…」
監督生は茉白が消えた廊下を見ることしか出来なかった。