テラーノベル
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「君がいないなら、生きてる意味なんてない」
彼がそう囁くと、彼女はすぐに
「私もだよ」
と重ねた。
その言葉は慰めであり、呪いでもあった。
互いが互いを支えながら、同時に引きずり込んでいる。
やがて二人は未来の話ではなく、「もしもの終わり」の話ばかりをするようになる。
一緒に消えてしまえたら、どれほど楽だろう、と。
目の前の世界は冷たく、息苦しいのに、二人の間だけは甘く、溺れるように心地よい。
ある夜、彼女が小さくつぶやいた。
「ねえ、ほんとに行ってしまったら、もう二度と一緒には笑えないんだよ」
彼は肩を抱き寄せ、
「でも、一人で死ぬより寂しくない。」
といった。
沈みゆくような愛情の底で、まだふたりはかろうじて踏みとどまっていた。
終わりに手を伸ばす前に、互いの温もりに縋りつくように。
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