好きでいさせて

渡辺は好きにしたらいいと言った。

目黒は好きになってごめん。

そう言って帰って行った。

渡辺は9人でいる時や、３人でいる時など目黒を意識するようになった。

目黒は、あの日が嘘のように態度に出ない。

時々、目が合う。

目黒が先に逸らしてしまう。

渡辺ー何だよ、あの日から俺が気になってしまってるじゃないか。

目先の目黒は、阿部や向井達とふざけて大笑いしている。

渡辺の方が笑えなくなってしまった。

その頃から、目黒は渡辺のことをしょっぴーと呼ばなくなった。

渡辺ー目黒、ちょっと話がある。

目黒ーん〜今から撮影なんだけど？

渡辺ー終わったらうちに来い。

目黒ー分かった。

深夜と言ってもいい時間に目黒から連絡があった。

もう遅いからどうしようと。

渡辺はいいから来いと言った。

目黒が渡辺の家に行った頃、渡辺は普段飲まないビールを飲んでいた。

目黒ー珍しいね、ビールなんて。

渡辺ー酔わなきゃ話ができない。

目黒ー俺は何もしてないよ？

渡辺ー分かってる。

目黒ー翔太くんを思ってる事もダメなの？

渡辺ー違う、俺がお前を気になって見てしまうんだ。

目黒ーでも、好きじゃないんでしょ。

渡辺ー分からん、この気持ち何が知りたい。

目黒は渡辺の手をそっと握った。

目黒ー嫌じゃない？

渡辺ーん。

目黒ー抱きしめていい？

渡辺ーん。

目黒はそっと渡辺を包み込む。

渡辺は抵抗する事なく目黒の腕の中にいる。

だけど細かく震えている。

目黒は渡辺の髪にそっとキスをした。

目黒ー嫌？

渡辺ー分からん、でも嫌じゃない。

目黒ー抱きしめてていい？

渡辺ー心臓が煩い。

目黒ー期待していいのかな？

渡辺ー怖いからやだ。

目黒ー何が怖い？

渡辺ー自分が変わってしまいそうで。

渡辺はやんわり目黒の腕を解く。

目が潤んでいる。

目黒は指で渡辺の涙を拭う。

渡辺ーこんなの俺じゃない。

目黒ー何で泣くの？

渡辺ー知らない。

目黒ー抱きしめたい。

渡辺ーやだ。

目黒ーそれ以上何もしないから。

渡辺ー・・。

俯いて目黒から背を向けている。

目黒は渡辺を怖がらせないよう、優しく背後から腕を回す。

目黒の腕に渡辺の手がかかる。

渡辺は目黒の腕を抱きしめた。

細かく震えているくせに、腕を離さない。

目黒ー怖い？

渡辺ーん、俺はどうしちゃったんだろう？

目黒ー俺のこと気になる？

渡辺ーずっと考えてる。

目黒ー嫌い？

渡辺ーその聞き方は卑怯だ。

目黒ー好きになってくれた？

渡辺ー俺のこの気持ちが何なのか分からない。

静かに涙を流す。

目黒は抱きしめる腕を少し強くした。

渡辺は逃げない。

目黒ー翔太くんは何も変わらない。

渡辺ー俺は男のまま？

目黒ー当たり前じゃない。

渡辺ーでも、目黒は・・。

目黒ー女扱いなんかしない。

渡辺ーしてるじゃないか。

目黒ーちゃんと、翔太くんが好き。

前に回した目黒の腕に涙が落ちる。

渡辺は、目黒を好きになったか分からない。

でも、この気持ちを何と言うのだろう。

渡辺ー俺はこのままでいいの？

目黒ーもちろん。

渡辺ーこれから好きになるか分からないよ？

目黒ー抱きしめていいなら、これからもそうする。

渡辺ー怖いよ。

目黒ー好きになって？

渡辺が振り向く。

目黒は泣いていた。

渡辺も泣いている。

2人で涙を流しながら、抱き合った。

震える渡辺の背中をさすりながら目黒が言う。

目黒ー好き、いっぱい好き。

渡辺ー・・まだ分からない。

目黒ー好きになって？

渡辺ー怖い。

目黒ーずっと待ってる。

渡辺ー目黒に抱きしめられるとドキドキする。

目黒ーもっとドキドキして？

目黒は、渡辺を怖がらせないよう抱きしめ髪にそっとキスをする。

震える渡辺が目黒の背中に腕を回したのは３ヶ月ほどしてからだ。

でも、好きと言わない。

目黒はずっと待ってる。

渡辺を抱きしめる度、好きと伝える。

いっぱい好きと言う。

渡辺は自分の気持ちを確かめる術がなかった。

渡辺ー俺はこのままでいいの？

目黒ー好きになって？

渡辺ー・・。

目黒ーいっぱい好きになって？

渡辺ーまだ分からない。

目黒ー翔太くんが好き、いっぱい好き。

渡辺ー目黒・・。

渡辺は目黒の頬にそっとキスをした。

目黒が驚いている。

震えているくせに。

渡辺ー今はこの気持ちが好きか分からないけど。

目黒ーキスしてくれるの？

渡辺ードキドキする。

目黒ー翔太くん。

渡辺ー皆んなと違う。　この気持ちが好きなのかな。

目黒ー抱きしめていい？

渡辺ーん。

恋は始まったのかな。

渡辺は目黒に好きって言う時が来るだろうか。