私は其の手を__
取らなかった
太宰「い、嫌です、」
太宰「帰りたくないですッ」
太宰「探偵社へ帰りたいッ」
太宰「それか此の儘此処で死にたいッ」
森「…そうかい」
そう言うと森さんは隠していた銃を
私に向けて撃った。
バンッ
太宰「カハッ」
其の銃弾は私の横腹を貫通した。
中也「ッ」
撃たれた所から血が滲み始める。
痛さに耐えられなくその場で座り込んだ。
敦「太宰さんッ!」
国木田「!」
森「君が私に逆らうとは考えなかったよ」
太宰「…ッ」
森「…しょうがない」
森「君を勧誘するのは諦めるとするよ」
太宰「えッ…?」
森「中也くん、作戦通りに頼むよ」
中也「はい」
太宰『やっぱり私が帰る事を拒絶すると想定して作戦を練っていたのか…ッ』
中也が異能を使い国木田くん・敦くんの処へ目に見えない程の速さで移動した。
中也「やぁ、探偵社」
国木田「ポートマフィアッ」
中也「前は手加減してやったが今回はそうもいかねぇんだ」
中也「悪ぃけど時間稼ぎに付き合えッ!」
国木田『時間稼ぎだと、?』
考え事をしている暇も無く
中也は国木田に拳を打ち込んだ。
国木田「ぐッ」
敦「国木田さん!」
中也「よそ見してんじゃねぇぞ、人虎ッ!」
敦「ゔッ」
敦『一刻も早く【二人】の処へ行かないと行けないのにッ!』
中也「…..」
取り残されたのは私と与謝野女医、
私は此の状況に嫌な予感しかしなかった。
森さんが与謝野女医の処へ近づいて行く。
そして何かを企んでいる様な満面の笑みで
与謝野女医に告げた。
森「与謝野くん」
森「ポートマフィアに戻って来給え」
与謝野「は、ッ?」
森「太宰くんが駄目なら君だ」
森「本当は太宰くんが良いのだけど」
森「君でも十分に役に立つだろう」
森「君なら昔の様に私の側で活躍してくれるだろうからね」
其の言葉を聞いた瞬間
与謝野女医の顔が恐怖の顔へと変わった。
与謝野「い、嫌だッ!」
与謝野「二度とお前の元へなんか行くものかッ!」
森「君に拒否権なんか無いよ」
与謝野「ッ」
太宰「与謝野女医ッ」
私は与謝野女医の元へ駆け寄ろうとした。
しかし、歩き出す前に
私の足元に激しい衝撃が走った。
バンッ
太宰「ッ!?」
森「動くな」
自分の足元に
銃弾を撃ち込まれたのを理解する。
太宰「…..」
森「行くよ」
与謝野「嫌だッ」
与謝野「絶対に行かないッ」
与謝野「あんな地獄、二度と見たく無いッ」
森「君の感情なんて聞いていないよ」
森「君は唯、私の元で私の指示に従って患者を治療し続ければ良いんだ」
与謝野「私の周りでは命の値段が安くなるッ」
与謝野「もうあんな地獄、思い出したく無いッ」
与謝野「嫌だッ嫌だッ!」
森「…..」
太宰『私のせいだッ』
太宰『私が助けないとッ』
森に動くなと言われたが
私は自然と身体が動いてしまった。
其の動きに気づいた森さんは
与謝野さんの足に銃を一発撃ち込んだ。
与謝野「い”ッ」
太宰「ッ」
森「動くなと言っただろう?」
私は其の場から動けなくなってしまった。
すると森さんが私の元へ近づいて来た。
森さんはしゃがんで私と視線を合わせる。
すると誰にも聞こえない様な声で
私に囁いた。
森「与謝野くんが傷付いたのは」
森「君のせいだよ」
森「君のせいで又大切な人が死ぬ」
森「結局君は昔から変われていない」
太宰「ッ」
そう言われた瞬間、
私はあの記憶を思い出してしまった。
…其れがいけなかったのだ。
太宰『そうだ、』
太宰『与謝野女医が傷付いたのは』
太宰『私がポートマフィアへ帰る事を拒否したからだ、』
太宰『私がポートマフィアへ帰る事を拒否していなければ』
太宰『こんな事になっていない』
太宰『私のせいだ、』
太宰『私のせいで与謝野女医が傷付いた、』
太宰『【あの時】と同じ様に』
太宰『私のせいで大切な人が死ぬ』
太宰『又繰り返してしまう、』
太宰「ぁ、ッ」
森「…笑」
此の時は気付けなかった。
此れも森さんの作戦の内なのだと。
森「さぁ与謝野くん行くよ」
そう言って森さんは与謝野女医の腕を
無理矢理持ち上げた。
与謝野「いやッ」
与謝野「嫌だッ…!」
与謝野「いや_」
太宰「森さんッ」
私は与謝野女医の言葉を遮り
森さんの名前を呼んだ。
森「…如何したのかね?」
太宰「…私が、」
太宰「私が戻ります」
太宰「だから、」
太宰「此れ以上、」
太宰「仲間を傷付けないで下さいッポロッ」
太宰「お願いしますッ」
与謝野「太、宰」
私は皆んなが私のせいで傷付かない様に
ポートマフィアへ戻る選択をした。
森さんの作戦だと薄々わかっていながら、
森「…ニヤ」
森「歓迎するよ、太宰くん」
森「中也くん」
中也「ピタッ」
森「帰ろうか」
中也「…はい」
敦「はぁッ、はぁッ、」
国木田「ふぅッ」
中也が一瞬で森さんの元へ戻った。
中也「太宰の回収には成功したのですか」
森「あぁ、予定通りだよ」
撃たれた処が痛み動けない私を
森さんが抱き上げた。
森「大事になってしまって申し訳ないね」
森「もう用が済んだから帰るよ」
森「次は戦場で会おう」
敦「ッ太宰さん!」
太宰「…..」
与謝野『太宰、』
与謝野「済まなかったボソッ」
私は夜の闇の中へ姿を消した。
_次の日
敦「…..」
太宰さんが居なくなって
未だ一日も経っていないと言うのに
悲しい気持ちと悔しい気持ちと申し訳ない気持ちで
心が押し潰れそうだった。
敦『何も出来なかった』
敦『太宰さんを必ず救うと誓ったのに』
敦『救うどころか』
敦『何も出来やしなかった』
そんな事を考えている内に
探偵社の扉の前に立っていた。
僕は如何言う顔をして
扉を開ければ良いのかわからず、
暫く扉の前に立った儘だった。
此の儘此処で立って居ても
しょうがないので勇気を振り絞って
扉を開ける事にした。
ギィィッ
扉が開いた。
中を見渡すと
乱歩さん・国木田さん・与謝野女医しか
居なかった。
敦「皆さん…」
国木田「…敦、此処に座れ」
僕は国木田さんの言う通り
乱歩さんの隣の席に腰を掛けた。
気まずい沈黙を破ったのは
意外にも乱歩さんだった。
乱歩「結局太宰は戻って来なかったのか」
国木田「…はい」
乱歩「…矢張りか」
与謝野「如何言う事だい」
乱歩「太宰はね」
乱歩「死のうとしてたんだ」
乱歩「与謝野さんに撃たれて」
与謝野「…..」
乱歩「実際に与謝野さんは太宰に銃を向けただろう?」
与謝野「あぁ」
乱歩「本当なら太宰は与謝野さんに撃たれて死ぬ気で居たんだ」
乱歩「だから太宰は敦に手紙を出した」
乱歩「敦に太宰が書いた手紙が届けば」
乱歩「必ず他の探偵社員へ敦が其の事を伝えると予測して」
乱歩「だけど」
乱歩「太宰の計画は失敗した。ポートマフィアの首領、森鴎外が現れた事によって」
乱歩「森鴎外は脅しに与謝野さんを使った」
乱歩「太宰はあぁ見えて仲間思いだ」
乱歩「森鴎外は其の事を知っていた」
乱歩「だから仲間を使った脅しをした」
乱歩「実際に太宰にとって其の作戦は効果的だった」
乱歩「…僕はお前達に助言しただろう」
乱歩「太宰に会えのは辞めた方が良い、と」
乱歩「でも遅かった」
乱歩「お前達が太宰の元へ行こうと行かないと結末は同じだ」
敦「ど、如何言う事ですか…!」
乱歩「…..」
乱歩「太宰は此の後_」
目が覚めると
真っ白な天井が視界に入った。
此の光景に見覚えがあった。
でも違う所が一つあった。
其れは拘束されている事。
逃げられない様にする為か、
其れとも拷問をする為か、
未だわからなかった。
目覚めてから数刻経った頃
部屋の扉が開いた。
其処には白衣の身にした男が立っていた。
私は其の男を無表情で見つめた。
森「体調は如何かね?」
太宰「…良い訳ないでしょう?」
森「そうだね」
太宰「何で拘束されてるの?」
森「目覚めたら又逃げると思ってね」
太宰「…..」
拷問では無い事に胸を下ろす。
森「今から拘束を外すよ」
そう言い、森さんは私を身纏っていた拘束を全て外した。
森「傷が深いからあんまり動かない様にね、激しい動きすると傷が開くからね」
太宰「は~い」
森さんが出て行こうとすると
又扉が開き今度は自分よりも背が低い
オレンジ色の髪の毛の男が立っていた。
太宰「げ、」
中也「…起きてたのか」
森「中也くん、良い処に」
中也「如何されましたか?」
森「暫く太宰くんの看病をして欲しくて」
中也「俺が太宰の看病ですか?」
森「うん、少しの間だから」
中也「…わかりました」
太宰「ちょっと!」
太宰「私は嫌なのだけど!」
中也「手前の意見は聞いてねぇんだよ」
森「じゃあ宜しく頼んだよ笑」
中也「お任せ下さい」
ガチャンッ
太宰「何で引き受けたのさ~」
中也「仕方ねぇだろ!」
太宰「はぁ、」
暫く沈黙が続いた後
中也が話を切り出してきた。
中也「此れから如何すんだよ」
太宰「如何するって?」
中也「ポートマフィアに居るのか?」
太宰「…そうだよ」
太宰「もう諦めたのだよ」
中也「、そうか」
太宰「中也はさ、ポートマフィアに居て良かったって思った事ある?」
中也「あるぜ」
太宰「つらいって思った事は無いの?」
中也「今ん所はねぇよ」
中也「首領は命の恩人だ」
中也「首領の為なら自分の命を投げ出す、そう決めたんだ」
太宰「…凄いね」
中也「今更だろ」
太宰「そうだね、」
太宰「相変わらず脳筋だ」
中也「あ”ぁ!?」
太宰「だから、脳筋だって言ってるの!」
中也「ぶっ飛ばしてやろうかッ!」
太宰「怪我人に向かってそんな扱いをするのかい?」
中也「くッ」
中也「絶対死なすッ」
太宰「やってみなよ!笑」
中也「この青鯖がッ!」
太宰「はぁ?」
太宰「君だって蛞蝓だろう?笑」
中也「あ”ぁ!」
中也「むかつくッ!」
太宰「本当に君は変わらないねぇ笑」
中也「五月蝿ぇ」
太宰「否定しないのだね笑」
中也「手前も変わってねぇだろ!」
太宰「ーーー!」
中也「ーーーーッ」
太宰「ーー笑」
中也「ーーーーーー💢」
太宰「ーーー💢」
中也「ーーー!笑」
太宰「ーーッ!」
くだらない話をしている内に
時間は過ぎていき
気づけば二時間程経っていた。
私は少し、昔に戻ったみたいで
楽しいと思ってしまった事は
中也には言ってやらない。
_一年後
首領に呼ばれた俺は
今最上階にある執務室に居る。
簡単に言えば組織の殲滅だった。
双黒の仕事だ。
本当は太宰が居るのだが
結局最後まで来る事は無かった。
多分自殺でもしているのだろう。
苛つきを隠しつつ太宰の家へ向かった。
ポートマフィアから太宰の家は遠い方で
歩きで行くには時間が掛かった。
太宰の家は前よりは少しマシになっており
相変わらず薄暗くはあったが
独特の雰囲気は無かった。
鍵が閉まっている事を予想しながら
俺は取っ手に手を掛けた。
然し予想は外れた。
鍵が開いていたのだ。
危ねぇな、と思いながら家に入る。
太宰が居そうな雰囲気は無かった。
でも何としてでも
太宰を見つけ出さなければならないので
居ないと思いながら太宰の家を探索した。
何処の部屋にも矢張り太宰の姿は無かった
最後の部屋の前に立つ。
俺は何とも思わず扉を開けた。
其処には、ロープで首を吊った太宰が居た。
中也「は、ッ?」
突然の事に俺は戸惑いを隠せないでいた。
我に返り急いで太宰の首のロープを外し
息をしているか確認をした。
然し、既に太宰は息を引き取っていた。
暫く俺はその場から動けないでいた。
何も思わず
何も考えず
唯その場に座っていた。
どれくらい時間が経ったか
わからなくなった頃、
ふ、と太宰の上着のポケットに
紙が入っている事に気づいた。
俺は紙を取り出し中を見た。
すると其処には
彼奴からのメッセージが書いてあった。
[中原中也へ
此の手紙を見ていると言う事は
私は既にこの世に居ないと言う事だね。
良かった。
探偵社を抜けてからの一年、
少しばかり楽しいと思ったよ。
そう思えたのは君のおかげだ。
ありがとう。
君は混乱している頃かな。
無理もないね。
あ、君に言う事なんて無いよ笑
唯誰かに手紙を書いてみたかっただけさ。
君の身長が伸びる事を祈るよ笑
じゃあね、中也。
太宰治]
俺は心の奥から込み上げてくる感情を抑え
太宰を抱き上げ首領の元へ向かった。
太宰が死んでから数日が経った。
此の数日間は色々大変だった。
太宰は幹部だった為
葬式を盛大にやり、
首領が探偵社へ太宰の死を報告した所、
ポートマフィアに探偵社が押し寄せたり
言葉では言い表せない程に
大変な数日間だった。
俺はとあるバーに居る。
太宰に教えて貰った店。
哀しげな音楽が流れており
独特の雰囲気を纏っていた。
今の俺には此の雰囲気が丁度良かった。
俺は自分で持ってきた酒を開ける。
【ペトリュス】
高級なワインだ。
俺はペトリュスの八十九年物を開けた。
一口飲むと俺の好きな味が口の中に広がり
気持ちが高まった。
片手にはワイン、
もう片方の手には
彼奴の手紙を持っていた。
ワインを飲みながら彼奴の手紙を見つめる
手紙の文字が水か何かで滲んでいた。
俺は其の正体を理解した瞬間
目元が熱くなり、
涙が止まらなくなった。
自分に「此れはワインのせい」だと
言い訳をしながら一夜を過ごした。
目の前には太宰が持ってた
【Lupin】と書かれた小さな箱がある。
俺の席の隣には一つの酒が置いてあった。
誰も居ない筈なのに
隣から笑い声が聞こえた気がしたのは
きっと俺の気のせいだ。
__他に選択肢はなかったのかよ
どうでしたか?
これにて「苦しみから私を解き放して」は
完結です!
最終話長すぎちゃったね…💦
(文字数6400文字)
みなさんが予想した
結末になったでしょうか?
結構頑張ったので
❤️とコメント沢山してくれると
嬉しいです…!(図々しくてすみません💦)
今、新しいストーリーを考えてる途中なのでお楽しみに!!
リクエストがあれば言ってください!
じゃあまたね~!
コメント
38件
テラーで、初めて泣いた
一気見してしまった、織田作と、いや、織田作に君との約束を守れなかった、とか、 言って織田作と楽しくしてるのだろうな、安吾は、かなり悲しんでいるだろうな、 二人の、親友を亡くしたのだから、最高でした、これからも頑張って下さい! 無理しないで下さいね!?