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「寝てれば治るか…。」
明日には、会社に行けますように。そんな願いを込めながら、布団を深く被り、目蓋を閉じる。
…が、その時――
「ちょっとあんた!!いつまで寝てんのよ!!仕事行くんじゃないの!?」
耳障りな高い声と、ドアを激しく開く音によって私の睡眠は妨害されたのだった。
明らかに不機嫌そうな声色と共に入ってきた人物。見なくても、苛立って眉間にシワを寄せている女――母親と呼べる存在の姿が目に浮かぶ。
まるで早く出ていってほしい、と言わんばかりに。
それはそうだ。今日から父親が出張で2日間帰ってこない。
男を呼ぶには絶好の機会だ。そうなると、私は邪魔者なんだろう。
…まあ父親も、本当に出張か怪しいけど。
どうでもいいけど、今は寝かせてほしい。
「……今日は熱があるから休む。会社には連絡したし。」
布団を被りながらそれだけ答える。すると、微かに舌打ちが耳に入ってきた。
母親とは思えない態度にも、もう慣れたから今更何とも思わない。
「はあ!?何でこんな時に!?めんどくさいわね…あたし、明後日まで帰らないから!!それまでには治しなさいよ!!移したら許さないからね。」
――バタン!!――
勢いよくドアが閉められ、豪快な足音と共に去っていく。
何だか、熱が上がりそうだ。
この母親に看病してほしいとは思っていなかった。
だが、少しくらい心配してくれると密かに期待していた。
そんな自分が許せなかった。
具合が悪い娘をほおっておいて出かける母親は世の中にどのくらいいるんだろうか。
それともこれが普通なんだろうか。