環那が扉を開けると、部屋は真っ暗だった。不思議に思った彼女はこう尋ねずにはいられない。
「これは何事ですか?」
「闇鍋だよ」
瑞幹が答えた。
「やみなべ?」
「結構楽しいらしいぞ。環那も食うか?」
誘ってきたのは幸治だ。
「いいえ。嫌な予感がするので見学してます」
「えぇ?一緒に食べようよ」
「幸治が作ったんだもの。まずいものは入ってないはずよ」
結和と冴弥花が口々に言う。けれども環那は一向に首を縦に振らない。そして彼女は部屋に入った当初から感じていたことを口にした。
「ところで、恵夢くんはどうしたんですか?」
「ああ、あいつなら――」
「僕がどうかしたかい?」
環那の背後から声がしたと同時に部屋が明るくなる。
「ちょっと、なんで電気つけちゃうの」
「これじゃあ闇鍋の意味がないじゃない」
「普通に食べた方が良いに決まってるじゃないか。火傷のリスクもあるし」
結和と冴弥花が不満げに述べるも、恵夢の言葉に誰も反論することができない。
そんな中、幸治が苦笑しつつ言った。
「恵夢もこう言ってることだし普通に食べるか、闇鍋」
「闇要素はどこに――え?」
「鍋の中真っ黒!」
驚く瑞幹の横で結和が叫ぶ。彼女の言葉通り、鍋の中は黒い液体で満たされ、中の具も黒く染まっていた。
「これはどういうことなの?」
「ただ暗闇の中で普通の鍋をつつくのは物足りないと思ってイカ墨を入れたんだ」
冴弥花が尋ねると、幸治は得意げに黒い物の正体を明かした。
「それならどんな具かがよりわかりにくくなりますね」
「成程、考えたね」
「だろ?」
環那と恵夢に称賛された幸治は笑顔で応じる。
「どんな具が入っているかは食べてみてのお楽しみ。ってことでみんなで食おうぜ」
「『みんな』ってことは、わたくしもですか?」
「そうだぞ?」
一度断ったはずなのに、何故か頭数に入れられている。
少しの沈黙の果て、環那は仕方なく折れることにした。
「……まあ、折角なのでいただきましょう」
「歓迎するわ」
「おいで〜」
「恵夢もね」
「わかってるよ」
二人が席に着いたと同時に幸治が宣言する。
「それじゃあ改めて、闇鍋パーティー開始だ!」
コメント
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珍しく、事件起きる前に嫌な予感を感知できてたのに、、、環那さああん! でもこっからどんな展開になるのか楽しみだわww 次回が気になりすぎる!!✨ 楽しみにしてる!投稿お疲れ様ぁぁ!🍵