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#高校生
「クソ袋ども、オレに平伏せ。額を床にこすりつけながら許しを乞え。そうすればほんの少しだけ生かしておいてやるぞ。ただし、そこの金髪は除外するものとする」
レッドアラームがけたたましく鳴り響く異世界の廃城にオレは静かに怒りを口にした。
オレの眼の前には同じ高校の制服を着た少年少女達が青ざめた表情で茫然と立ち尽くしている姿があった。彼等は全員、オレのクラスメイト達だ。
彼等はこの異常事態に混乱しているのか、もしくはオレの豹変した態度に驚いているのかは定かではない。
ただ一つだけ確定しているのは、彼等が生きるも死ぬも、その運命はオレの気分次第であるということ。
しかしながら残念なことに、そのことを理解しているのはオレ以外は皆無であるようだった。
その証拠に、オレにとっては怨敵とも呼べる金髪の男が、怒りと悪意をもって鋭い眼光でオレを睨みつけていた。
「てめえ、ミニフランケンの分際で何をほざいていやがる⁉ お前ごときがオレをどうするってんだ⁉」
ブルブルと怒りを露わに身体を震わせながら、菅野翔は怒声を張り上げた。初期装備の銅の剣をオレに突き付けてくるが、どうやらこいつは未だに状況が理解できていないらしい。己の立場も理解できず、ただただ尊大で横柄で癇癪を起こした子供のようにただただ凶暴な感情を露わにしていた。
この異世界において、ギルドマスターであるオレに逆らえばどんな目に遭うのか。もはやこいつの死刑は確定しているが、オレの怒りに油を注げば注ぐほど無惨な死が待っている。
オレは石畳の上で座り込んでいる銀髪の少女に目を向ける。
彼女の名は大谷リーリエ。先月、オレが転移元の現実世界の高校にやってきた転校生。彼女の頬は赤く腫れあがっていた。それを見れば見るほど、オレは目の前にいる金髪クソヤンキーこと菅野翔に対する怒りと、何よりも殺意が込み上げた。
「オレに対する今までの仕打ちは無かったことには出来ないが、現実世界に帰還するまで忘れておいてやることは出来た。だが、お前は自ら助かる道を閉ざしたんだ」
オレの脳裏に、大谷リーリエが目の前のクソ野郎によって殺害されそうになった光景が過ぎる。あろうことかこのクソ野郎はオレの大恩人である彼女を生贄に捧げようとしたのだ。
しかも、オレを実際に生贄に捧げた直後に、である。
それを誰も止めようとはしなかった。自分たちが助かりたいがために。ならばこの場にいる者全員が同罪だ。オレはクラスメイト達に対して慈悲の心を捨て鬼になることを決めた。
オレが生き残り、現実世界に戻るためにはもう手段は選んでいられない。
いや、正確にはオレ達二人が、であるが。
オレは心の裡でそう呟き、銀髪の少女を一瞥する。
もう大丈夫だ。君はオレが守る。
「もういい。耳障りだからさえずるな。お前は合成素材にでもなってもらう」
「合成素材だぁ? 訳分かんねえことぬかしてんじゃねえぞ⁉」
金髪はそう叫びながらオレに斬りかかって来る。
だが、奴の攻撃は初期装備の銅の剣がオレの身体に触れる前に、見えない障壁によって弾かれた。
「なんだ、これ⁉ わっけわかんねえんだよ⁉」
状況が理解できない金髪は凶暴化したチンパンジーのように奇声を張り上げながら何度も銅の剣で斬りかかっては、その度に弾かれた。
「意味分かんねえ、意味分かんねえよ!」
「お前、ゲームは説明書を読まずにプレイするタイプだな? いや、そもそもゲームのルールどころか人語が理解出来ないチンパンジーの類だな」
「こんの、ミニフランケンがほざいてんじゃねえよ!」
ミニフランケンとはオレの蔑称だ。
オレの見た目は背が低く、顔立ちもフランケンシュタインのように恐ろしく崩れていることから、不名誉なあだ名をこいつらにつけられたのだ。
そんな見た目とあだ名から分かる通り、オレはいじめられっ子なのだ。目の前で吠えている金髪はその主犯格。
正直、オレにとってこいつは殺しても飽き足らない存在だ。中学高校と同じ学校で同じクラスになってしまったのが運の尽き。サンドバックにされる地獄の日々を過ごし続けて来た。
しかし、それも終わりだ。何故ならば、今からほんの一時間前に事態が急変したからだ。
あの時、オレが毎朝の日課のように教室でサンドバックにされていた時のことだ。
突然、教室は眩しい光に包まれ、気がつくと見知らぬ石造りの建物の中に立っていた。
そこが異世界の廃城だと知ったのは更に事態が急変してからのこと。
オレ達は謎の存在から送られてきたメッセージによって、クラスの中から生贄を差し出すように強要されたのだ。
逆らえば全員の死。そういう状況にオレ達は追い込まれていた。
そして、その時、ほぼクラス全員の一致した意見によって生贄はオレに決定したのだ。
理由はミニフランケンだから。醜いから。いなくなっても困らないどころか、いなくなればせいせいするから、だとオレはこいつらに言われた。
だが、その中でたった一人だけその意見に反対し、オレの身代わりに自ら犠牲になろうとした存在がいた。
オレは脳裏に銀髪の少女の姿を思い浮かべる。
彼女を、大谷リーリエを死なせるわけにはいかない。
そう思ってオレは自らの意志で生贄になることを選んだ。
しかし、それはオレにとって不幸なことではなく、むしろ逆で人生の転換点となった。
何故なら、オレは、この廃城のコアと融合し、いわばこの世界の支配者に君臨することが出来たのだから。
「ギルドマスター北条一馬が命じる。菅野翔、お前を合成素材にする。合成するのはそうだな。オレが今履いているトランクスだ」
アイテム合成に成功すれば、オレの履いているトランクスは+1くらいにランクアップするだろう。
次の瞬間、金髪クソ野郎こと菅野翔の身体は光に包まれる。
ようやく状況を呑み込めた菅野翔は青ざめた顔でオレに対して哀願の眼差しを送って来る。だが、オレは奴が命乞いの言葉を口にする前にパチンと指を鳴らした。
それが合図であるかのように、菅野の身体は光の粒子となってオレの履いているトランクスに吸い込まれていった。
オレの目の前には青白いメッセージ画面が表示される。
『アイテム合成に成功しました。
メンズアンダーウェア+1 防御力が2アップ致しました』
そのメッセージ画面はクラスメイト全員に見えているようで、たちまち周囲の空気は凍り付いた。
ようやく状況が理解できたか、クソどもめ。
オレは心の裡でそう毒づき、目の前に現れている青白い画面に表示された合成の項目をタップする。
「さあ、お次は誰が合成素材になるのかな?」
オレの言葉にクラスメイトたちは顔を青ざめさせ、誰もが身体を恐怖で震わせていた。
時間はほんの少しだけ遡る。