テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
居なかったことにできたなら
ふんわりとした世界観
いつまで経っても何も載せられないので出来たところまで
赤中心の自己満パロ
最終的には愛されになると思います
まだ途中なのでなんとも言えないですが感覚としてはメリバに近いかもしれません
どしゃ、っと嫌な音が室内に響く。
一瞬何が起きたかわからなくて、呆然としていた。
あの音は即死だろう。間に合わない。
遅かったとは思わなかった。思えなかった。
来たタイミングが悪かったとさえ思ってしまった。
そんな自分が悔しくて情けなくて、苦しくて、それでもやっぱり彼に対しての情が湧かない。末期だなと自分でも思う。
羞恥するべきその感性を振り払うように少し遠くで鳴った音の方へ顔を向ける。
知っていた。解っていた。
正直、アイツが死んだという事実よりも気になったのは、誰が殺したのだろうという疑問だった。
形上ではあるが皆平和にやっていたと思う。
即死ということは殺した奴は相当血が上っていたか、怨みという怨みを買っていないのだろうか。
怨みを買って即死?それは、あまりにも──
ソイツが去る気配がして顔を上げる。
少し遅かったのか、もう既に姿は見えなかった。
視界を死体の方に向けると、それの手足は縛られていなく、四肢を投げるように転がっていた。
縛られていないにも関わらず、直前で暴れた様子もないようで、その死体が抵抗していなかったことが分かる。
明らかにおかしい。
組内での許可のない接触は御法度で、またしてやそのまま殺してしまうなど上は許さないだろう。
すぐに消えたソイツ、抵抗していない死体、許されない行き過ぎた接触。
脳がひとり浮かんだ人物のことしか考えられなくなり、胎内はドクドクと鼓膜を破る勢いで暴れている。
すぐに答え合わせがしたく、興奮したままその死体を覗き込んだ。
「は、」
思わず口角が上がる。
いけない、面白すぎる、楽しすぎる。
これは怨みを買ったとか、そんな程度の話ではない。
彼は自身から自分の手を汚してまで”今”殺したかったのだ。本当になんてことをしたのだろう。
「は、…ふはっ」
なんでよりによってお前なんだ。
俺も大概単純だ。
視界の端に映るのは、カラーが抜けてシックなワインレッドがシアーピンクに近くなった髪色をした能天気野郎。殺されたのは莉犬だった。
傷んでいるくせに漏れた光に照らされて、それはよく輝いていた。
眠る様に転がって死んでいる彼の顔をよく見たくて、顔を覗き込むようにしゃがむ。
あまりにも酷く惨殺されているため見るに堪えないような無惨な姿になってはいるが、剥がれた皮膚からもその表情は確認できた。
莉犬は随分とまあ、笑っていた。
コイツは隠すのが誰よりもうまかったなあと思う。
きっと先日の失態はわざとだっただろうし、それは最初で最期の彼のSOSだった。
上層部や幹部らはそれを解って無視を決めたのだから、もっとも彼が怒る理由は確かにある。
それでも。
自分から彼の怒りを買う人間だろうか。
空元気。浮き沈みが激しい。行動派。それでいて物事を客観視できるし、感情論が漏れない奴であった。
ああ、そういえばコイツは元公安だった。
それは俺らの敵となる存在だったというわけで、その事実は幹部のみが知っている情報である。
昼時に飲んだアメリカンコーヒーの酸味が未だ舌に残っている気がして、ザラザラと舌を拭うように舐めた。
部屋へ戻ると、そこにはるぅとところんがいた。
「他は?」
と問うと、るぅとは「まだ。」と一言。どうでもよさそうに呟いた。
返答が返ってくるということは、それはるぅとにとって虚言を意味する。状況は把握しているようだった。
ブ、ブッブーー。
ゲームオーバーの音が室内に響く。
喋らないくせにゲームの音量は無駄にデカく、そのくせイヤホンはしない。前に話しかけた時は睨まれた気がする。
「なー、ころんはどーすんの?」
ソファに腕をかけ前のめりに話しかけると、暫くしてブ、ブッブーー。とまたゲームは死を報せる。
怠そうに電源を落とし、こちらを振り返ったころんの顔は窶れていて、意外な顔ぶりに「え、ころんって莉犬と仲良かったっけ?」と思わず口が零れた。
ころんは1度俯き、解ったようにパッと顔を上げ、ふわりと笑う。
あぁ、ころんはこう笑うんだと初めて知った瞬間だった。
「りいぬくん、死んだんだ!」
ころんは今まで表情を大きく変えることが無かった。それは元居た施設が潰されたと聞いた時も、淡々とゲームを続けていた。
今こちらに向けた笑顔は本物だった。まるで今から夢の国へ遊びに行く子供のような顔で、目尻を下げて眠るように笑うころんの姿は何処か見覚えがあった。
正直、見るに絶えなかった。
思わず目を伏せると、
「なーくんは?」
るぅとは資料から目を離さずに冷えた声で問う。
きっとるぅとも情報を整理したいのだろう。
それでも誰1人として莉犬の様態への心配を口にしなかったあたり、他人に興味など1ミクロンもない。
「なんか資料確認しに行ったで〜」
とトロい声でのほほんと喋るジェル。
彼は上層部とよくつるんでいる印象がある。和気藹々と喋って情報を収集している姿は、一見楽しそうに写るが、その時の表情は何処かいつも鋭く、細められた目の奥には温度のない冷え切った目があった。
情の熱い人間であるが、感情論や理想論などをアイディアとして使わないし、『あくまで平等』が前提にあるような人柄である。幹部の中では彼が1番人間に近い感性を持っていると思う。
「…終わりやなぁ、」
ジェルは独り言のように呟く。
実際俺らの言葉達は全て独り言であるが、その言葉は全てを無に帰すような独特な空気を纏っていた。
終わりがあるならば始まりだってある。
俺たちの始まりは、どれだけの温度を持っていただろう。
どれだけの愛が篭っていただろう。
どうしたら、その愛が戻ってくるのだろう。
部屋にはまた、ゲームオーバーの音がひとつ響いた。
1度きりの人生、そう振り返ってみればとても充実した1生涯だったと思う。
ただそれが心置きなく死ねるに繋がるかといえばそれはまた違うものであって。
小さい頃の話はよく憶えていない。
多分産まれも育ちもきっと施設だったと思う。
思い出せる中で最古のものは、こちらに手を伸ばす男の記憶だった。
男はピッタリとしたスーツを着て、髪の毛はカチカチに固められていて、如何にもメガネを上げる仕草が似合うような細身の者だった。
ただぼんやりと、眠たいなあと思っていた。
施設での生活は苦痛ではなかった。
6時に起床し、バランスのとれた朝食を食べ歯磨きをする。
8時から12時まで勉学に励み、またバランスのとれた昼食を食べ、午後からは筆記テストを行う。
毎回難易度や内容はバラバラで、3ヶ月に1度程のペースで実技テストもあった。
こんな生活を続けていたものだから、体力なんて階段を上るだけで息切れし膝が笑うくらいには無くて、それを見兼ねた男が時々外に出しては日光に浴びさせようと庭園を散歩させてきたりした。
昔から頭は良かったと思う。
施設は本当に何も無くて、唯一暇を潰せるものが勉強であったくらいだ。無理もなかった。
義務教育が修了し程なくして、木刀を素振りしたり時には銃を扱う勉強が組まれた。
5つの頃には自分の生活が普通じゃないことくらい理解していたし、10つにもなればここが公安によって計画された施設だと知った。
自分が18にもなるときっと公安の1人として簡単に人を捌き殺していくのだろうとぼんやりと思っていた。
毎日同じのルーティーンを繰り返していると、自然と建物や仕組みも覚えていく。
それは記憶力の定着、安定と同時に、自身の潜在意識に”常識”が刷り込まれていった。
18歳になった翌日、ガタイがよく、声の低い白髪の男が俺を迎えた。
「いいかい。君はこの国を変えるための架け橋になるんだよ。」
そう言った男の笑みをぼんやりとまた記憶した。
罪の重い者は勿論、軽い強盗や迷惑行為などで捕まった軽犯罪者までも簡単に殺していった。時に罪の無い人までも殺したこともあった。
1度、日本の汚いやり口を知ったFBIが 俺のように育てられたまだ8つの子供を攫ったという事件が起きた。
犯人を突き止めるのも殺すのも俺で、上からは「お前が思う殺し方をしなさい」と言われた。
犯人は気の強そうな女で、俺はどれだけ考えても彼女が攫った意図が解らず、純粋に「何故攫ったのか」と聞いた。
彼女は俯きがちに肩を震わせながら「…貴方も…貴方も同じ経験者でしょうに…何故わからないの…何故苦しくないの……」と逆に問い返された。
本当に話の理解ができなくて彼女の頭に突き付けていた銃を下ろす。
女は決意を固めるように拳を握りしめた。
「…日本はどうなっているの?あんな施設はあってはならない。そして貴方みたいな人間を作ってはならないのよ…。何故かわかる?」
「…」
ゆっくりと顔を上げ、こちらをじっと見つめながら
「…人が人でなくなってしまうからよ。」
と。
確かにと思った。
今まで沢山の人を殺してきた。
罪の軽い者を殺す前に時々、自分が殺されるとしたらどんな刑罰を受けるのだろうか。そんな思いが頭をよぎってたこともあった。
「最近はAIが進歩してきている。AIはイラストを描いたり、意味を調べてくれたり、比較しデータを出してくれたり、命令すればその通りにするわ。
でもね、それでも人間には及ばない。」
「AIは、ここがないの。」
そう俺の左胸を人差し指で刺しながら言う。
まるで訴えかけるようにまっすぐな目が俺を捕える。
その目に魅せられてしまったのかもしれない。
「人の心は、どうやったら手に入りますか?」
女は口に狐を描き、
「もう貴方は人間になれないわ、残念だったわね。」
と。次は俺が銃を向けられたようだった。
『12.自身の生命に関わるものであった場合、内容を放棄して良い。第一に我が身を優先すべし。』
これは所謂、精神的苦痛…に当てはまるのではないか。ひとつ、人間に近づけたようで嬉しかった。
彼女がまた次の引き金を引こうと口を開こうとする。
それよりも前に俺は彼女を殺してしまった。
人の心を持っていない人間は、どうすればよいのだろうか。
第1地点公安部仮拠点に戻り、PCを可動させる。
今回、構成の異動が大幅な為に公安は勿論、特化保安部隊も新たに作られた。
書類の最初に記載があったのは検察部隊だったので検察の方で調べようかと思ったが、第一、周りから見れば自分は”得体の知れない安易に触れられないモノ”なのだから、内部をよく知らない部隊で調べるものではないと考えただけである。
今日の経過報告を記録し、過去のデータを引っ張り出す。
[東京都江戸川区女子高校生殺人死体遺棄事件 x月x日]
[東京都葛飾区強盗殺人事件 x月x日]
[東京都葛飾区男子児童生轢き逃げ x月x日]
[東京都新宿区歌舞伎町死体遺棄事件 身元不明 x月x日]
[xxxx年度 死亡者記録簿]
誰かが閲覧した痕跡が残っている。2回フリックして、軽くスクロールする。
少しスクロールして、ふと思った。
俺はなんて名前で登録されているのだろう。
仕事柄、人を執念深く疑うことが普通であった。
そしてPCやAI、プログラミングなどは施設の頃一通り教わっていたし、元々あれだけの勉強をしていたので調べることは得意だった。
だから幹部は勿論、上層部や無法地帯になりかけた下層部の一人ひとりの情報は脳に記録されている。
自分がまだ上層部にいた頃、内通をしようとしているものは容赦なく俺が殺したし、それを知り幹部に招待したのはななもりだった。
廊下を二人歩いて幹部室へ向かっていたとき、ななもりは何も包み隠さず
「莉犬くんの身元、どれだけ調べてもわからなかったんだけど、何者なの?」
と少し馬鹿にするように聞かれた。
別に隠す必要はないと判断した為、
「元公安でした。当時の最重生物学研究施設、”α”で育ちました。」
ふぅん、へー…と口元を緩ませながら顎を弄るななもり。
名前や施設までは知らなかったらしい。
このとき俺は心底安心していた。そう、自分のしたものは正しかったのだと。
腕前披露ということで任された大役は、先月夜逃げしてそのまま見つかっていない45歳の男の調査ということだった。
調査といっても身元の詳細は浮き出ているらしく、どちらかといえば確保して金だけ引っ張り出せ、生死は問わないといったところである。
体力にはあまり自信がないが、それを見越しての内容なのだと思う。
それにしても舐めた態度である。
今のお前の立場はこれだと、はっきりと示されたようで気分が悪かった。
視線を感じ資料から顔を上げると、こちらをじっと見つめるななもりと目が合う。ゾワ、と全身から血の気が引いていくのを感じる。
初めての感覚だった。
じっとこちらを見つめる彼の目には何も写っていなかった。
その後、また読めない笑みを浮かべたななもりの「行ってらっしゃい」という言葉を合図に、仕事はたったの40分程度で終わった。
内容が内容であった。これは馬鹿にされているな、ということは流石の自分でも解かっていたが、そんなことなどどうだってよかった。
ただただ、あの初めての背骨を抜かれたような気味の悪い感覚に震えが止まらなくて、結果報告書に纏めななもりに渡せたのはそれから30分後のことだった。
「もう終わったんだ。さすがだね。」
その笑顔を、忘れたことはなかった。
続く
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