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式が終わり、賑やかな笑い声と写真を撮るシャッター音に包まれる校門前。
友達に「おめでとう」と抱きしめられたあと、咲はそっと辺りを見渡した。
「……悠真さん」
そこに立っていたのは、スーツ姿で少し照れくさそうに手を挙げる悠真。
視線が合った瞬間、胸が熱くなり、足が自然と彼のもとへ向かっていた。
「卒業、おめでとう」
近づいた咲を見つめながら、悠真が静かに言った。
「ありがとうございます……」
声が震え、言葉のあとに涙がこぼれそうになる。
その瞬間、悠真は咲を抱き寄せ、低く囁いた。
「咲ちゃん。これからは、もう妹じゃなくて……俺の、大切な人として隣にいてほしい」
涙に濡れた笑顔で頷く咲。
二人の影が、春の訪れを告げる柔らかな光の中で重なった。
――私たちの間柄は、もう恋人でしかない。