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夜間、僕らの行軍は続いていく。
「一希、一太の前歩け、」
と一兄ちゃんに言われ、僕は前に出る。
一太の前には僕、田村、横山、神尾の三人が塞ぐように立ってている。
(万が一のためか、、)
一太が捕虜に手を出したりしない用にするため
田村と横山、そして念入りに僕を入れるのか。
一太は相変わらず下を向いていて何も話しそうにない。
「あれー?一太ー?今冬なのに支那は雪降ってないなぁー?もったいねえなぁー?雪なんて綺麗なもん見れないなんてー人生の6割は無駄にしているよー」
すると一太が僕の方を振り向いて
「一希兄ちゃん、」
「ん?どうした?」
「うるさい。」
僕の体が何故か動かなくなった。自分でもわかる。今、石化して崩れ落ちる気がしている。
「一兄ちゃん、」
突然一太が一兄ちゃんに声をかけた。
「どうした?」
それに応じる一兄ちゃん。
「前。」
一太に言われるがまま、一兄ちゃんが前の方を向くと
「去死吧,你們這些混蛋!」
(死ね!この下衆ども!)
するとつれていた支那軍が突如手榴弾を取り出して横にいた河内にしがみつき始めた。
「おい、離せ、、、」
直後
という、耳をつんざく音と共に土埃が空を舞った。
「おい、おい、、こりゃあ、、、かなりやべえなぁ、、 」
と、田村が僕の肩に手を置いてきた。
「いやぁ、やべえですなぁ、」
と神峰が僕に声をかけた時。
「児玉、、」
直後、神峰が頭から血飛沫をあげ地面に吸い寄せられた。
「おい、まずいぞ!伏せろ!」
するとなんと支那軍が建物の屋上から機銃掃射をしてくる。
「ぐあぁ!」
「ぎゃあ!!!!」
屋上から、再び乾いた連射音。
ダダダダダッ——
機銃の音だ。
弾丸が空気を裂き、
壁を砕き、
地面を跳ねる。
地面に叩きつけられるように伏せると、
すぐ頭上を弾が通り過ぎた。
——近い。
「お前ら!応戦は無理だ!死んだふりしろ!」
その言葉に僕は体を固め、目を閉じる。
同じく一太、増田、神尾や田村も同じようにしていく。
やがて銃声が止むと多くの足音が鳴り始めた。それは徐々に大きくなっていき、こちらに向かってくるようだ。
「好吧,這些人都死了,所以我會收下任何看起來能賣出去的東西。」
(ふふ、こいつら死んだな。さて、こいつらから売れそうなもんを貰っていくか。)
中国語が多く耳に入ってくる。
意味はわかんないけど、多分物色しているんだろう。
すると奴らが僕の近くに来て僕の雑納の中を漁り始める。
「一本筆記本和一枚手榴彈…」(ノートに手榴弾、、、)
僕が様子を見ようと目を開けようとするが瞼(まぶた)がまるで鉄のように重い、いつもは何も考えずに瞬きができるのに、恐怖心からだろうか目すら開けられない。
(田村、、メガネが取られてんじゃねえか。)
田村の家は意外とお坊ちゃんだからメガネは質が高いもんがつかわれているんで、あぁ、盗まないのは分からんでもない。
僕が恐る恐る視線を一兄ちゃんの方に移動させると
「哦!這是!一把軍刀!它一定能賣個好價錢!」
(おぉ!これは軍刀!高く売れるんだよな!)
と言って支那兵が一兄ちゃんから日本刀を奪おうとするが一兄ちゃんは子供みたいに頑なに離そうとしない。
(一兄ちゃん、軍刀は俺の誇りって言ってたもんね。)
「什麼?屍僵?」
(なんだ?死後硬直か?)
何分か押し問答が続くと支那兵も諦めたのか僕達から離れていく。
支那兵も大喜びで装備品を持ち向こうと姿を消そうとした。
突然、僕の目の前にいた支那兵が僕に覆い被さるように倒れ、僕 の顔に血飛沫がかかる。
「何、、?」
僕が体を起こして状況を確認しようとすると
「ダメだ。」
一兄ちゃんが僕を静止してきた。
僕が薄目で状況を確認すると、3人の影が銃を放っている。
支那軍が反撃しようと銃を撃つが、奴らに全く歯が立たず、一人、また一人と死んでいく。
やがて戦闘も終盤に差し掛かってきた頃。
残された如何にも将校でありそうな人物の命乞いが僕の耳に入ってきた。
だが、直後聞こえたのは、刀を抜刀する音だった。
するとその人物が僕達の元へと近づいてきた。
僕は目を固く瞑り心に中で祈った。
(気づかれませんように、気づかれませんように、気づかれませんように。。。)
僕は自分に言い聞かせるように祈った。
「なんだ?おい、そんなに怖いか?」
僕の耳に流れ着いてきたものは流暢な日本語だった。
見ると、そいつは肘までまくった日本軍の軍服。何も被っていない坊主頭。腰には軍刀を一本さしている。
僕のこめかみに向けてトンプソンを突きつけていた。
「あの、、撃つつもりですか、、、?」
僕が恐る恐る聞くとそいつは笑いながら
「まぁ、怖がんな坊主。俺は味方だ。俺、鮫島龍哉(さめじまりゅうや)上等兵だ。」
「大丈夫なのか、、、?一希、、、」
一兄ちゃんも体を起こし、そいつらの方を向くと
残りの二人が姿を現した。一人は 一等兵、もう一人は二等兵だ。
最初に、一等兵の男が前に出た。そいつは袖までまくった日本軍の軍服。帽垂れ付きの戦闘帽。腰には一本の軍刀。手にはドイツ軍の正式小銃Kar98kを手にしている。
「飯島修造(いいじましゅうぞう)。一等兵だ。こいつはドイツから直接輸入してるから撃ちやすいし、照準もズレないぜ。」
すると二等兵の人物が一礼をして前に出た。
そいつは二人とは違い、シワ一つなく、最後まで袖を通した軍服に擬態用の網付きの鉄兜をかぶって三八式を持っているが、形が違う。
「西宮虎徹(にしみやこてつ)。二等兵です。」
すると一太が前に出て鮫島という男に向かって口を開く。
「鮫島さん、、、前の職業は何ですか、、、?」
すると鮫島さんが笑いながら
「元道明寺組の組員だ。」
すると一太が僕の後ろに隠れて肩にしがみついてきた。
「安心しろ。子供から金を取ったりはしない。そこの二等兵と一等兵、そして曹長のお前ら、見たところお前らは兄弟だな?」
鮫島さんは何でわかるんだろう。僕はそれを聞こうと口をひらこうとした途端。
「名前は?年はいくつだ?」
すると一太が
「花部一太(はなべいちた)!19です!」
僕も続いて
「児玉一希!22です!」
すると一兄ちゃんも
「児玉一、28です、、、何で敬語使ってんだ俺?」
すると一兄ちゃんが鮫島さんに声をかける。
「おい、貴様。所属はどこだ? 」
すると鮫島さんが訝しげに兄ちゃんを見つめて
「知るかよ、俺らだけ生きてたわ。」
すると一太も飯島さんに駆け寄る。
「飯島さん、支那の銃は撃ちにくいんじゃないの?」
「こいつは西洋から直接輸入してるからな。 」
僕は西宮さんに話しかけてみる。
「西宮さん。その銃は一体?」
すると西宮さんは銃を僕の前に出し説明を始める。
これをするのは二等兵以来だな。
「一希君だったかな?」
「これは試作型です。撃鉄を回し排莢せずに
撃ち切ると――」
西宮さんが空撃ちする。
カチン、と乾いた音がした次の瞬間、
弾倉が自動で飛び出した。
「……自動排出?」
「はい。再装填の時間を減らすためのものです。 正式採用はされていませんが」
「おい、鮫島、」
と一兄ちゃんが声をかけると
飯島さんが兄ちゃんをぶん殴った。
「鮫島“さん”だろ?アホ?これからはお前は、、」
すると飯島さんの頭に鮫島さんの拳が飛んだ。
「馬鹿野郎!軍隊だぞ!俺らは敬語使うんだよ!」
すると鮫島さんが口を開いた。
「今日はここで野宿だな。」
すると一太が
「鮫島さんたち天幕は?」
すると飯島さんが笑いながら
「悪いねぇ、一太君、入れてくれ、」
すると一太は5秒間沈黙した後
「いやだ。二人ともタバコ臭い。」
「えー嘘だろ!?」
僕は記録帳に手を伸ばした。
西の空から降りゆく弾丸。それが止むのもまた弾丸。
かつては道を極めたものたちとの力があると心強くなる。
けど、そんな心強さは必ず明日、いや、できれば今すぐなくなってほしい。