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🫶
「大森君!一回だけ!一回だけでいいから食事会参加して!」
面倒臭いのでその手の食事会は極力お断りしているが、以前ソロ活動してる時にお世話になった人からのお願いなので
「一回だけなら…。」
とOKしてしまった。
それがいけなかった…。
「大森君に会いたかったんだよ~。」
ほぼ初めましての人たちの中、とある大物俳優が話しかけてきた。
「えー本当ですか?嬉しいです!ありがとうございます。」
この手のタイプへの対応はひたすら謙遜し、相手を持ち上げるのが正解。
ひとしきり話し終えた後
「そういえば大森君、またソロになる気はないの?」
「え?」
「ギターの子はともかく、キーボードっていらないでしょ。大森君とバックバンドで十分じゃない?そしたら大森君だけが映像に映し出されるからファンの子もみんな嬉しいでしょ。」
俺はにっこりとほほ笑んだ。
「やめてくださいよー。俺一人じゃ何にもできないんですよ。二人がいてくれるからやってこれてるだけなんで。」
「いやいや何言うてんの。大森君ありきじゃん。」
ブチギレそうになるのを必死に抑えて
「あ、グラスが空いてますね。どうぞ。」
「おぉ、ありがとう。若いのに気が利くねぇ。」
「いえいえ。あ、こっちのお酒もおいしいですよ。いかがですか?」
度数が高いものを注文し、大物俳優にすすめる。
「うわきっつ。これアルコールきつくない?」
「いや、でも似合いますよ。流石っす!俺飲めませんもん。」
「大森君歌手だからね。喉大切にしないといけないよ。」
「そうですね。あ、こっちもおいしそうですよ!すみませーん、コレくださーい(度数激高酒)」
食事会はなんとか終了。
「ごめんね!大森君!!」
俺を誘った人はひたすら謝ってくれた。チームのことをよく知ってる人だから、俺が笑顔の裏でブチギレていることは察していただろう。
「いいえ、お疲れさまでしたー。」
さっさと帰る。
「えー?大森君もう帰ったのー?」
後ろの方で酔っぱらいが何か言ってたが無視して店を出た。
そのまま家に帰りたくなくて涼ちゃんにラインする。
大森:今何してる?
すぐに返信が来た。
藤澤:何もしてないよ。家にいる
大森:今から行っていい?
藤澤:いいよー
コンビニで適当に食べるものと飲み物を買って涼ちゃんちに向かう。
早く会いたくて気づいた時早足になってしまっていた。
「いらっしゃい。」
部屋に招き入れられてすぐ、涼ちゃんの肩にぐりぐりと額をこすりつける。
「お疲れさま。」
涼ちゃんが頭を撫でてくれる。
ようやく息ができる気がした。
「疲れたよぉぉぉ。」
「元貴がここまでなるってことは相当大変だったんだね。」
「食事会なんか行きたくない…。三人でゲームしてたい・・・。」
それが許されないのはわかってる。
「元貴に頼ってばかりでごめんね。」
違う。
そんなこと言わせたいわけじゃない。
「元貴がいてくれてよかった。いつもありがとう。」
「・・・っ。」
涼ちゃんの優しい声が頭のてっぺんからじんわりと体中に染み渡る。
「俺だって、涼ちゃんと若井いなかったら立ってらんないよ。」
「嬉しい。僕も少しは役に立ててるかな?」
「少しじゃないし。沢山だし!」
離れがたいが一度涼ちゃんから離れ、持っていた袋を渡す。
「お土産。コンビニで適当に買ってきただけだけど。」
「ありがとう。食事会だったし食べて来たよね?」
「あんまり。うざ絡みしてくるジジィ黙らせるためにひたすら酒飲ませてた。」
「何か食べる?それともお酒飲む?それとも…。」
「僕・・・?」
言って恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にする涼ちゃん。
「な、なーんてね。」
「……。」
「もう!なんか言ってくれないとめっちゃハズいんだけどっ。」
「涼ちゃんで。」
「え?」
「涼ちゃんでお願いします。」
涼ちゃんの手を握ると、真っ赤だった顔がさらに赤くなり、目が泳いでいる。
「涼ちゃん…。」
甘さを含ませた声で名前を呼べば、ウルウルとした瞳で見つめられた。
「元貴…。」
「ベッドとソファーどっちがいい…?」
以上で【日常】終了となります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
初投稿でシリーズ見切り発車とか無謀すぎたので
次回書くことがあれば計画的に投稿できればと思います。