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微もりょき
ご本人様関係なし
sideM
ぴんぽーん
インターホンが鳴った
今日は俺の友達?の若井が「彼女とデート行ってくる!」と元気に言っていた日だから若井ではないはずだ
通販でもないだろう
と言うことは涼ちゃんだろう
涼ちゃんは俺のただのクラスメイト
クラスで孤立していた俺に話しかけてくれた
俺のことを少し気にかけてくれただけ
涼ちゃんがどうしてここに?
特別親交が深い友達でもない
俺が引きこもっているとはいえ
そんな人が俺の家まで来て心配の言葉をかけるだろうか?
俺にはその動機が見えない
怖い
分からない
ドアを開ける勇気はないの でドアスコープを覗くことにした
覗いてみると少し長めの金髪で中性的な容姿の人が立っていた
やはり涼ちゃんだ
ドアスコープ越しでもわかる柔らかなふわふわとした雰囲気を醸し出している
涼ちゃん が突然喋りだした
ねぇ僕知ってるよ
きみがひとり”XX”してるの
知ってるよ
ビクンビクン震えてさ
声もダダ漏れなんだわ
正直に言っちゃえよ
バレてるんだし言っちゃえよ
効いてんの?
普通普通恥ずかしい?
みんな隠しているだけ
なんで涼ちゃんがここに?
俺を虐めるため?
或いは苦しんでる俺の姿をみて楽しむため?
涼ちゃんがわからない
なぜか涼ちゃんは俺が一人で自慰行為をしていることを知っているらしい
なんで?
ねぇ僕知ってるよ
君がひとり”涙”してるの
知ってるよ
グスングスン凹んでさ
夜にひとりカラオケで弱音吐いてたよね
朝が来るまで一緒にいたげる
もっと泣いたって何度だって受け止めてあげる
もう我慢しないでいっぱい出してね
途中途中ノイズが走ったように視界が濁るが少し古めのマンションなので汚れが何かだろうと割り切ることにした
さっきの発言からさらに俺が最近ひとりカラオケに行ったのも知ってると言われた
俺は涼ちゃんからストーカーのような危うさを感じた
だけど涼ちゃんは一晩中俺のそばにいて弱音を全部受け止めてくれると笑顔で言っている
危うさはあるけど俺の悲しみに寄り添ってくれるような気がした
だけど
涼ちゃんが怖い
俺は今とても人前には出れない情けない姿をしているからそれをネットに投稿して笑おうとしているのではないか?
急に涼ちゃんがドアスコープに近づいてきた
その途端涼ちゃんの顔の周りに極彩色のカオスが現れた
お願い
君が欲しいの
慰めさせて?
泣かなきゃ枯れてしまう
ねぇいいでしょう?
舐め取って飲み干したいんだってば
「泣かなきゃ枯れてしまう」?
俺が泣くのを我慢して心をすり減らしてるの心配してくれている?
僕に頼って?
chicラブなんて最高ね
分けてくれなきゃ
君の”痛い”感じていたい
ねぇいいでしょう?
吸い取って
救いたいんだってば
救いたい?
ならば救って欲しい
こんな俺を
うつ病になり精神的に疲弊した俺を
ゔぅ…
サイケデリックに侵される
見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たいの君の中
見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たいの見たいの
涼ちゃんの本当の気持ちが知りたい
涼ちゃんの全部が見たい
涼ちゃんを愛しているから
愛されたい
sideR
最近元貴がおかしい
元貴が引きこもって数日
家から出てくることはほとんどない
僕は元貴が引きこもりになってしまった原因を知っている
僕も元貴と一緒だった
今の僕になら元貴の気持ちもわかる
元貴を助けてあげたい
見捨てはしない
君はひとりじゃないと伝えたい
今度また元貴の家に訪ねよう
数日後
sideM
また涼ちゃんが来た
ねぇ僕知ってるよ
君がひとり悔しがってるの
知ってるよ
ズキュンズキュン高まるじゃん
きみを推すことやめない
また俺について話された
涼ちゃんが俺に対して偏愛的になっている気がする
俺が悔しがっているのを知ってる?
前よりもいくらか同情的な言葉だな
「きみを推すことやめない」?
推し活かよ
俺にとって酷く心地の良い言葉が並べられていく
都合が良すぎるくらいに
ねぇ僕知ってるよ
きみはできる子
知ってるよ
つらい時は弱いくらいで丁度いい
僕それでも好きだよ
「好きだよ」
と言う言葉と同時に
涼ちゃんの目にハートが現れた
君はできる子か
やっぱり
心地よい言葉が投げかけられる
ところどころで普通の俺の記憶の中にいる涼ちゃんが現れる
しかしこの涼ちゃんにはノイズがかかっている
また涼ちゃんがドアスコープに近づいてきた
極彩色のカオスも現れた
前よりも酷くなっている気がする
お願い
きみが欲しいの
名前を呼んでよ
いつだって会いにくるからさ
きみはひとりだ
だからきみは「ひとりじゃない」って歌う
もういいでしょう
ソロプレイはお仕舞いなんだってば
名前を呼べば会いにきてくれるらしい
確かに俺はひとりだ
引きこもって
立ち上がれず
孤独に蝕まれている
そんな俺に寄り添ってくれて、一緒にいてくれるらしい
きみが病めるときも僕そばにいるよ
いつも見守ってるよ
そう
怖くないの
病めるときもそばにいる
まさに愛を求める俺のための理想的で完璧な言葉
本当に都合がいい
涼ちゃんが消えた
俺は涼ちゃんを探す
視界を動かせば俺の記憶の中にいる”普通”の涼ちゃんがいる
俯いたり
座ったり
下を見たりしている
この涼ちゃんは憂いている顔、姿をしている
ここで俺は気がついた
俺の心、防衛機制、欲求不満が涼ちゃんを捻じ曲げて俺自身が涼ちゃんをモニタリングしていたことに
お願い
きみが欲しいの
僕に頼って?
sickラブなんて最高ね
分けてくれなきゃ
君の”痛い”感じていたい覗いていたい
吸い取って
救いたいんだってば
視界がノイズと極彩色でいっぱいになる
今までのオカシイ涼ちゃんが入り乱れる
俺は俺自身が作り出したどうにか取り払おうと、懸命にもがく
こちらを覗くハート目の涼ちゃんにノイズが走る
目も溶けているように見える
徐々にノイズがかかっていた”普通”の涼ちゃんがはっきり見えてくる
極彩色のカオスも減る
ついに本当の涼ちゃんが一瞬見えた
心配そうな顔をしてこちらを覗いている
ねぇ僕知ってるよ
また最初の涼ちゃんが現れる
君がひとり”涙”してるの
偏愛的な涼ちゃんも現れる
知ってるよ
普通の涼ちゃんも現れる
グスングスン凹んでさ
弱音ヒトカラin the night
3人が入り乱れる
朝が来るまで一緒コース
だんだん普通の涼ちゃんが現れる回数が多くなる
もっと泣いたって何度だって受け止めてあげる
涼ちゃんの放つ言葉が俺に寄り添ってくれる涼ちゃんの優しさを帯びたように見えてくる
sideR
僕は話しかけても何も答えてくれない
ドアの向こうに元貴がいるかも分からない
だけども
少しの希望を信じて
固く閉ざされてしまったドアに話しかける
もう一人で抱え込まないで
その痛みを
涙を
出してってば
さぁ
sideM
固いドアの先にいる涼ちゃんを安全圏から見続けていた俺
ついに俺は自ら安全圏を壊し、固く閉ざしていた扉を開けて、 涼ちゃんと対面した
恐怖や妄執とは決別し、ありのままの現実に向き合うために
俺は涼ちゃんを強く抱きしめて
「ありがとう、涼ちゃん」
と言った
人は一人で生きていけるようにできていない
一人で自立することが求められているこの時代それでもみんな隠しているだけで、つらい時、苦しい時であっても、誰かの手を借りて生きているものだ
涼ちゃんはそのことがわかっていたからこそ俺に手を差し伸べ続けてくれたのかもしれない
俺と涼ちゃんはこれから何を話し、どんな道を歩むのかは分からない
だけど俺はもう道を踏み外さないだろう
なぜならば涼ちゃんがいるから
END
今回はモニタリングを考察して🍏様を登場人物にして物語を書いてみました
私たちは物事を都合のいいように捻じ曲げてみてしまうことがあるって怖いですよね
よければコメントと♡よろしくお願いします