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翔太郎の過去
最初は普通だったんだ。
ごく普通の、幸せな家庭だった。
けれど父親が浮気して、挙句の果てに浮気相手の女と駆け落ちした。
母親はそのショックで鬱状態になり、部屋に引きこもるようになった。
でも、ある日を堺に母親が元気を取り戻した。
普通なら、喜ぶべきなのだろう。
でも俺は、素直に喜べなかった。
確かに母親は元気になった。
けどその姿は、何か別のものに支配されているかのようだった。
それに、母親の外出の頻度も多くなっていた。
おかしい。
俺の中での違和感が、日に日に膨らんでいった。
だから、その日もまた出かけていった母親のあとをつけてみることにした。
どうやら母親は、何かの悪徳宗教にはまっているようだった。
最近家の物がなくなるのでなにかと思っていたが、そういうことだったのか。
母親はそれらを売って得た金を宗教団体に貢いでいるようだった。
その時にはもう、俺は諦めていた。
だから、母親のことは放おっておくことにした。
…………その時の判断が、間違っていたのだ。
ある日、帰ってきた母親の様子がおかしかった。
俺は少し変に思っていたが、特に気にしていなかった。
しかし、いつもならすぐに自分の部屋へ引っ込んでいくはずの母親が、不意に俺に近づいてきた。
『ふふっ……感謝しなさい。あなたはこれから、神様の元へ行けるのよ…!』
そう言って、母親は包丁を手にこちらに向かってきた。
最初は何かの冗談かと思ったが、母親の不気味な笑みと暗く虚ろな目を見て、本気だと悟った。
俺は、そこから死ぬ気で逃げ出した。
その後の記憶は曖昧だ。
気づいたら、何処かもわからない場所を彷徨い歩いていた。
あの時、母親を止めていれば。
そんな後悔ばかりが、頭の中を渦巻いていた。
……今更後悔したところで、現実は変わらない。
しばらくして、雨が降り出した。
もう全部、どうでもいい。
自暴自棄になりかけた時、颯に声をかけられた。
翔「そして今に至るって感じだな。」
翔「俺の話は以上だ。」
来「じゃあ、最後は俺ですね。」
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来羅の過去
俺も翔太郎と同じ、普通の家庭だった。
自分で言うのもあれだが、俺は小さい頃から頭がいい方だった。
学校のテストもほとんど常に100点で、調子が悪くても95点以上をキープしていた。
だから、両親もいつも期待していた。
塾や習い事がどんどん増えていった。
毎日毎日、夜遅くまでずっと。
無意識に、自分の中でストレスを溜め込んでいたのだろう。
ある日突然、スランプに陥ってしまった。
それからはもう、塾も習い事もうまくいかず、テストの点も落ちてしまった。
でも俺はそれでもいいと思った。
うまくいかないことなんてしょっちゅうあるし、テストだって、点数が落ちたとはいえ80点代だってすごくいい点数だ。
……………ただ、両親はそうはいかなかった。
期待し過ぎていた両親は、その日から人が変わったように怒鳴りつけてくるようになった。
なぜこんなこともできないんだ。
もっと真面目にやれ。
日々罵倒されながらも、俺なりに努力していた。
でも、スランプからは抜け出せなくて。
両親も疲れてしまったのだろうか。
薬に手を出すようになってしまった。
ああいうものは、1度手を出すとやめられなくなる。
両親はどんどん騙されていき、ついには俺にまですすめてくるようになった。
『来羅、これは頭が良くなる薬だよ…』
俺と顔を合わせるたびに、そう言ってすすめてくる。
俺はそれをなんとかかわしながら日々を過ごしていた。
ある日、両親が突然部屋に押し入ってきて、俺を無理やり押さえつけた。
『お前が言うことを聞かないから悪いんだ。』
そう言って、両親は俺に無理やり薬を飲ませた。
それも結構な量だ。
ここまできてやっと危機感を感じた俺は、出せる限りの全力を使ってその場から逃げ出した。
逃げている途中で薬の影響と拒絶反応が出て倒れてしまったところを颯に助けられた。
あとから聞いた話だが、あと一歩遅ければ命はなかったらしい。
来「今はその後遺症で体が弱くなってしまって。
それでも、颯には感謝してるんです。なにせ
命の恩人ですからね。」
来「俺の話はこれでおしまいです。」