テラーノベル
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「ダグラス君、きちんと手当してもらった?」
サキはダグラスを叱るように話した。
「こんな見た目で街とか歩いてごらん?皆怖がってしまうわよ?」
「そんな事までしっかり考えていなかった。」
「バカ。」
サキは冗談半分でひっぱたいた。
「でも偶然、私がいてよかったでしょ?幼馴染じゃなかったら、今頃どうなってたか分かる?」
「…」
「もぉ!きちんと答えてってば!」
「答えは知らない。」
「ったく。」
そうして二人には何とも言えない時間が流れていった。一人、リバート族の少年は病院の待合室をキョロキョロ眺めていた。
「そういえば…貴方のお名前、聞いていなかったわね。」
サキは優しい声で少年に話しかけた。
「お名前は何?」
少年はしばらく黙っていた。
「僕………ナンバー373―いや、ぼくはリチードだ。」
「リチード君って、言うんだね。」
「…」
ダグラスは考え込んだ。No.211と同じく、彼にもナンバリングがされている…また、COMAの仕業だろうか。しかし、リチードとNo.211の番号は酷くかけ離れている。本当にCOMAがあの少年にナンバーをつけたのだろうか―
「ナンバーって…?」
ダグラスは口を滑らせてしまった。
「それは違う…ぼくはこんなんじゃない。」
リチードはすぐに否定した。
「ぼくはリチードなんだ。」
もう一度名乗り、さらに彼は強調した。
「よろしく。」
ダグラスはリチードから目をそらした。サキは不満そうにダグラスを見ていた。
そして3人は病院から出た。すっかり太陽が雲の隙間からのぞくようになっていた。
「なんだか、晴れてきたみたい。」
「夏になったからだろう。」
「そういうのを通り雨、って言いなさい。」
「通り雨…?」
リチードはサキに尋ねる。
「あれ、リチード君…もしかして知らないの?」
「ううん…」
リチードはうつむく。
「それはね……えっと。一瞬だけ激しく雨がふるけれども、すぐに晴れちゃう雨のことよ。」
サキはそう答えた。
「まるでさっきの天気が嘘だったみたいね。」
ダグラスは黙ったまま歩き続けた。
「ねぇ、何か反応しないの?ダグラス君?」
「特にない。」
「昔と比べて…ずいぶん冷たくなったわね。」
サキは不満を口にした。
「そういえば、サキ。」
「えっ?」
「この少年を彼のふるさとに送ると言っていたが、どうやって行くつもりか。」
サキはしばらく考え込んだ。リチードはサキを見つめる。
「ぼく、ふるさとを知らないんだ。」
そして、そうつぶやいた。
「知らない…の?でも、きっとリチード君のお父さんとお母さん…きっといるんじゃない?」
「それが分からないんだ…!」
リチードの声は震えていた。彼は握っていた手を放す。
「リチード君のふるさとも、ご両親も分からないのね。」
サキは悲しい声で話す。
「ぼくは逃げ出したんだ。ぼくのふるさとがあるって、聞いたんだ。でも、どんな場所にあるのか、どんな感じなのか、全く分からない…」
「逃げ出した?」
ダグラスは真剣な目つきで、リチードに尋ねる。
「……忘れて。」
「何があったのかを聞きたい。」
「だから、忘れてって!!」
「漠然としててもいい。」
「忘れろ……っ!!!」
「ぼくは逃げ出したんじゃない!ただ一人ぼっちなだけなんだっ!」
リチードは叫んだ。
「……」
ダグラスの表情は変わらなかった。
「ねぇ、ダグラス君…」
サキは不安そうに尋ねる。
「…どうした?」
「きっと、リチード君の記憶が…あいまいになっていると思うんだ。だから、違う事を話しているのかもしれない…子供相手にそこまで本気にならないでよ。」
「……申し訳ない。」
「ねぇ…」
リチードは険しい顔でダグラスをにらんだ。また太陽が厚い雲に覆われていく。
須古星 れい
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コメント
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リチードが「ナンバー373」と口にしかけて「ぼくはリチードだ」と言い直す場面、すごく心に残りました。名前と番号の間で揺れるアイデンティティ……「ただ一人ぼっちなだけなんだ」の叫びにグッときます。通り雨の比喩も、記憶があいまいな彼の心と重なって切なかった。ナンバー211との番号の隔たりも気になる。COMAの仕業なのか、それとも別の何かなのか……次が気になります。