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なんかこんな話ばっか書いてんなあ…と。こういう質感の🐙🌟×💡が好きなんです。全人類書いてください。
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inm視点
夜の部屋は静かだった。カーテンの隙間から、街灯の淡い光が細く伸びて、床に横たわっている。エアコンの低い音と、遠くを走る車の気配だけが、世界がまだ続いていることを教えてくれた。
ベッドの上で、天井を見つめていた。さっきまで必死に抑えていたものが、胸の奥でじわじわと膨らんでいる。隣には星導がいる。同じ布団の中、同じ夜。それだけで安心できるはずなのに、今日は、だめだった。
「……星導」
「ん?」
低くて落ち着いた声。それが返ってくるだけで、喉がきゅっと詰まった。
「……オレさ」
「うん」
「頑張ってる、つもりなんだけど」
星導は何も言わず、続きを待つ。急かさない沈黙だった。
「空回り、ばっかで……」
言葉にした瞬間、視界が滲む。
「……情けなくて」
一滴、頬を伝う感覚。慌てて瞬きをしたけれど、もう止まらなかった。
「……ごめ、ちょっと……」
泣いているところを見せたくなくて、顔を横に向けるが、その前に、星導の手がオレの袖をつかんだ。
「ライ」
強くはなく、逃げられない程度のやさしい力。こういうところなんだろうな、と思う。
「顔、背けなくていいよ」
「……でも」
「泣いていい」
その一言で、涙腺が耐えられなかったらしい。認めてくれる、彼がいるなら。
「……っ、う……」
声を殺そうとしても、息が詰まる。涙が次々にこぼれて、シーツに落ちる。
「……オレ、こんなことで……」
「こんなことじゃない」
星導は、静かに、でもはっきり言った。
「ライにとっては、大きいことでしょ?」
「……ちゃんと、やりたいだけなのに」
「うん」
「迷惑、かけたくないだけなのに…」
「うん」
否定せず、遮らず、ただそこにいる。そんな星導は少し体を寄せて、自分のこめかみが触れる距離まで近づいた。
「……ねえ、ライ」
「……なに」
「迷惑ってさ、嫌な時に使う言葉だよね」
「……」
「俺はね、今、全然嫌じゃない」
ショウの声が、心の中まで染み渡っていく感覚がする。
「ライが弱ってるの、頼ってくれてるの、全部」
「……重く、ない?」
星導は少し考えてから、答えた。
「重いよ」
心臓がどくっと鳴った。
「でもね」
星導がゆっくりと口を開く。
「重いってことは、それだけ大事ってこと」
星導は、オレを抱き寄せた。ぎゅっと強くはしない。逃げられる余地を残した、包むような腕。
「俺は、ライの気持ちは軽くできないかも」
「……」
「だけどさ、一緒に持つくらい、したっていいでしょ?」
甘く、優しい口調と、彼のニッコリとした笑顔がオレを包み込んだ。
「……ほしるべっ……」
胸に顔を埋める。星導の服から、洗剤の匂いと、少しだけ体温の匂いがした。
「……オレ、弱くて……」
「知ってる」
即答だった。
「でも、それだけじゃないじゃん」
星導の手が、ゆっくりと背中を撫でる。一定のリズムで、何度も。
「弱いところも、強がるところも、全部見てるよ」
「……それでも、好き?」
「当たり前じゃん」
短くて、真っ直ぐな言葉に、涙が少しずつ落ち着いていく。しゃくりあげる呼吸が、ゆっくりになっていった。
窓の外を見ると、夜の色がほんの少しだけ薄くなっていた。星は見えないけれど、空は確実に朝へ向かっている。
「……ほしるべ」
「ん?」
「……そば、いて」
「いいよ」
小さく、笑ってしまった。まだ目は腫れているけれど、不思議と胸は軽い。
「面倒…とか思わないの?」
「なにを?」
「オレのこと」
「な訳ないじゃん。むしろ約得」
「ほんとに?」
「ほんと。こんなにライの弱ってるとこ見れるのは彼氏の特権じゃない?」
「ふふ」
目の前には、星導の優しい笑顔がぼんやりと浮かんでいる。
「……泣いたら眠くなってきた」
「いい傾向」
星導は布団を整え、オレを包み込む。
「今日は、よく泣けた」
「……褒められてる?」
「褒めてる」
ありがとう、と一言伝えて目を閉じた。
「……起きたら、まだ一緒?」
「起きても一緒」
「……朝ごはん」
「作る」
「……無理しないで」
「それ、俺のセリフ」
「んふ」
小さく笑い合う。星導の腕の中で、意識はゆっくりと沈んでいった。