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港と紗理奈は、薄暗い診察室の灯りの下で、これからのことを話し合っていた。
樹人の記憶に潜む影が、ただの“幻”ではないことは明白だった。
「まじないの起源を探らなければ、この影は消えない……」
港は決意を固める。
「でも、一体どこに?」
紗理奈はカメラバッグから古びた写真とメモを取り出した。
「南さんが言っていた村――“封印された村”には、まだ誰も知らない“古文書”があるらしい。
呪術の起源に関わる秘密が隠されているはずよ」
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翌日、二人は車に乗り込み、封印された村へ向かった。
霧が立ち込める山道を進むと、かつての人々の生活がゆっくりと崩れ去った廃村が現れた。
「ここで、何があったのか……」
紗理奈がカメラを構え、辺りを記録しながら言った。
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村の廃屋の中、薄暗い書斎にたどり着く。
埃にまみれた古文書の束が棚に積まれていた。
紗理奈が一冊を手に取り、慎重にページをめくる。
「これは……“トカゲの儀式”について書かれている……」
文章は難解で、古代文字も混じっていたが、港はその中に見覚えのある言葉を見つけた。
「“ホントニナーレ”……これが、呪文の正体か……」
「どうやら、これは呪いを形に変えるための言葉だったみたい」
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文書にはこう書かれていた。
“この呪文は、失われた者を現世に呼び戻すための契約である。
だが、その代償は“偽りの影”を生むこと。
影は呼び主の深層心理に巣食い、最終的に本体を侵食する。
真の魂を救うには、影を認め、契約を解くしかない。”
紗理奈が呟いた。
「つまり……この“偽りの影”は、南さんや樹人くんに取り憑いている“もう一人の存在”ってことね」
港は拳を握りしめた。
「この契約を解かない限り、家族は戻らない……」
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ふと、窓の外から何者かの視線を感じた。
振り返ると、霧の中にうっすらと人影が立っている。
「……誰だ?」
紗理奈が叫んだ。
だが、その姿は消え、村は深い静寂に包まれた。