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「あ、安心してくださいね、僕たち怪しい人ではないので」
余程、警戒しているように見えたのか、もう一人の男性が笑いながら弁明した。
「大丈夫ですよ、俺も怪しそうな人にホイホイ付いて行くほど馬鹿じゃないので」
観月くんがそう言うと、お二人は目を合わせながら笑っていた。
「てか、創太、怪しい人ってどういうことだよ」
「えぇー、だって急に話しかけられたら警戒するでしょ、ねぇ?」
『創太』と呼ばれていた男性は僕に目を合わせながら問いかける。
どう答えばいいのか分からず、僕は「あはは」と苦笑いしてしまった。
「ははっ創太、苦笑いされてんじゃん!」
よく分からないが、お二人はとても仲が良さそうだ。友達だけの関係には見えない。
そんなお二人が少し羨ましい。
「お二人、とても仲が良さそうですね」
僕と同じことを思っていたのか観月くんも同じ事を言った。
「うん、そうなんだ」
創太さんはそう言った後、もう一人の男性に何か聞いている。
もう一人の男性がその問いに頷くと創太さんはこちらを向いて話し出した。
「僕たち、実は付き合ってるんだよね」
意外な事を言われた。
でも、驚きはしなかった。
そう言われても納得出来る距離感だったから。
「へぇー、そうなんですね、どこで出会ったとかって聞いてもいいですか?」
「うん、大丈夫だよ、僕たちは高校で出会ったんだ」
創太さんは幸せそうに話す。
同性同士のお付き合い、最近こそは認められているものの、批判する人も少なくは無い。
でもこの二人は嬉しそうに話している。
そんな二人を見ていると僕の悩みなんてちっぽけなものに感じてきた。
「あっ、創太」
「うん?」
「買い物行かなきゃじゃん」
「あっ!そうじゃん!」
「すいません、俺たち買い物に行かなきゃなんで失礼します!」
お二人は手を繋いでこの場を離れて行った。
「仲良しやったね」
「うん、そうだね」
「どうした?」
僕の様子に気付いたのか観月くんは顔を近付けて聞いてきた。
観月くんと目を合わせることが出来ない。
「さっき、趣味、聞いてきたじゃん」
「うん、寝ることが好きなんやろ?」
「それもそうなんだけど、実は他にもあって、」
嘘の趣味を信じてくれている観月くんに対してとても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
この発言に対して観月くんはなんと言うのだろうか。もし、聞いてくれそうなら、言ってみてもいいのではないだろうか。
「お!そうなんや、聞かせてくれるか?」
観月くんの反応は思っていた倍以上いいものだった。
きっと観月くんなら肯定してくれると思い、僕は重い口を開けた。
「実はダンスが好きなんだ」
「お、ええやん、かっこええな」
観月くんは僕の頭をニコニコしながら撫でる。
「なんのジャンルで踊っとるん?」
そう、僕が苦手な質問はこれ。
でも、観月くんなら肯定してくれるって信じてるから。
「Girlsっていうのなんだけど……」
「あ、Girlsなんや、知っとるよ」
観月くんの反応は僕が予想しているものとは全く違った。変に肯定する訳でもなく、そのままを受け止めてくれているような、
「ひ、引かないの⋯?」
「うーん、別に引いたりはしんな、それよりもかっこええなと思うよ」
僕が思い切って聞いても変わらぬ様子で答えていた。
それにら今まで一度も言われたことのない『かっこいい』という言葉までくれた。
Girlsというジャンルは胸やヒップを使った女性らしい動きが多いジャンルだ。
だからこそ、誤解されやすい。
『男なのにそういう動きをするの?』とか『気持ち悪い』とか、
中学の時にはそれが原因でいじめが起きてしまい、不登校になったこともある。
だから、観月くんの反応がとても嬉しかった。
このジャンルを肯定してくれて、尊重してくれているような、
僕は涙目になり、鼻がツンと痛む。
そんな僕の様子に気付いた観月くんは僕の事をそっと抱き締めた。
「よう頑張ったな」
観月くんの優しい声が涙を誘う。
頬には涙が伝った。
一度出た涙は止まることなく、とめどなく出てくる。
その間、観月くんは優しく抱き締めてくれていた。
その感覚が妙に心地よく、初めて感じる感覚に陥った。
「落ち着いた?」
「⋯⋯うん、ありがとう」
「ふふっ、よかった」
観月くんは僕の顔に手を添え、目尻に溜まった涙を親指で拭った。
「なぁ、なんで公園に来たかわかる?」
「⋯いや、わかんない」
「よいしょ⋯」
観月くんはそう言いながら、リュックを開け出した。
「じゃーん!弁当を食べるためや!」
観月くんは大きなお弁当箱を取り出し、自慢げに僕に見せてきた。
お弁当箱は大きいし、観月くんは満面の笑みだしで、僕は耐えきれず「あははっ」と笑い出す。
「そんなおもろいか?」
観月くんは笑いながら僕な聞く。
「⋯うん⋯おもしろい⋯よ」
「ふぅん、まあええや、奏がわろうてくれてんなら」
それから僕たちはお昼に食べそびれたお弁当を食べ始めた。
観月くんがダンス動画を見たいと言うから、先週のイベントの動画を見せたり、
観月くんの地元の話を聞いたり、
一緒に最近流行ってる曲を踊ったり、
母からの連絡が来るまで、ずっと話続けていた。
その時間、僕はとてもリラックスしていた。
友達と話していてこんなにリラックスしたのは初めてだった。ましてや今日、初めて会った人だ。
観月くんと一緒にいると幸せな気分になれる。
僕は初めての感覚に疑問を感じていた。
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