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注意事項
※orensメインのrttt
※rttt付き合い済み、同棲済み
※モブ(子供たち)が出てきます
※このお話はグリム童話の「白雪姫」を元にしたシーンがありますが、パブリックドメイン扱いとなっておりますので安心してお読みください。
原作や日本語訳からの引用はございませんが何か問題があれば直ぐに消します。
約1万3000字強あります
全て捏造事実無根
ここから伏字なし
佐伯side
とある何でもない1日。元々はオリエンスでの仕事が入っていたのだが、何故か今日の朝になり突然マナ君だけが本部に呼び出され、僕ら3人は置いてけぼりを食らってしまった。仕方がないのでそれぞれアジトにて時間を潰している。
そしてマナ君が出ていってから2時間ほど経った昼、やっとアジトの扉が開く音がした。
🐝「…ただいま」
🦖「おかえり〜ってヘトヘトじゃんマナ」
🌩「どうしたんだよ。また何か上から言われたのか?」
それぞれが言葉をかける中、僕はマナ君からの言葉を待つことにした。
🐝「…それが、な?新しい任務の依頼っちゅうか…話やったんやけど、…
地域の子供と一緒に劇を披露してくれって言われたんよ」
「「劇…?」」
🌩「え?でも劇ならマナだって好きだろ?俺とテツだって多少は違うけど経験あるし」
🐝「いや〜嫌なんちゃうで?でもな、頼まれた劇「白雪姫」やねん。分かるか?」
🦖「僕らのこと何だと思ってんの?白雪姫は流石に知ってるよ?」
ソファに寝転がりながら火力投下をするウェン君をもう誰も止めなくなった僕らに成長を感じつつ、マナ君は話を続ける。
🐝「いや聞き方が悪かったわ。俺らにな?意地悪な女王様役と本当の事しか言わん鏡役、あと王子様役と……
白雪姫…頼みたいって」
🤝「白雪姫ぇ!?!??」
「お前うるさっ」とリト君に肘打ちされながらも僕は驚きを隠せなかった。嫌われ役の女王様を僕らに頼むのはまだ分かるが、何故主役である白雪姫…?しかも俺ら全員男だぞ…
🌩「マナ聞き間違えたとかない?」
流石に信じられなかったのかリト君が質問をする。が、マナ君も首を横に振り否定した。
🐝「俺も本部で何っ回も聞き直して来たんよ。だけど何回聞いても白雪姫役お願いしたいって言われたわ」
🤝「ウェン君がギャル過ぎてオリエンスには女の子が居ると思われたのかな…」
🐝「いや、この話まだ続きあってな?…」
もうこれ以上驚く事はないと思っていたのに、彼はまた信じられない言葉を口にした。
🐝「…その、依頼してきた地域の方から配役まで指定があったんやけど、…テツに白雪姫…お願い…したいって」
🤝「…は?」
リト君とウェン君が後ろで必死に笑いを堪えた挙句、「コッコッコッw」「ハーァ⤴︎w」と吹き出しているのが分かる。さっきまで申し訳なさそうにしていたマナ君でさえちょっと笑いそうになっているのがムカつく。
🌩「っふwww頑張れよw」
🦖「ヤニカス姫じゃーんww」
🐝「お前…wヤニカス姫って…wwうははww」
こうして僕は素敵なヒーローとしてヒロインを演じる事になったのだった。
(完)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
で終わる訳もなく、今僕は地域のガキ達と共に熱血演劇指導を受けている。
🌩「おいテツ!!もっと姫の自覚持て!!」
「そうだぞー!テツー!!」
「もっとお姫様みたいにかわいく!!」
🤝「くっ…ガキ共…」
🦖「ガキじゃなくて小人さんでしょー!お姫様お口悪いよー!」
「「そーだー!ー」」
7人のガ…小人とウェン君に煽られながら、どうにかこうにか劇の内容を覚えていく。
元は地域活性化を目的とした催し物で、子供達だけで白雪姫を行う予定だったらしいが、単純に人が足りなかったり、主役や悪役で揉め事が起こり劇そのものを諦めかけていた所、地域密着東のヒーローに白羽の矢が立ったという事らしい。
なんで白雪姫役が俺なのかと言うのを大人の皆様に聞いた所、
「いや〜イッテツ君だったら面白いって子供たちが言うもんですから〜」
とまさかの子供たちからの推薦だった事を知った。
ちなみに他の配役はと言うと、
女王様役 ウェン君
正直な鏡役 マナ君
王子様役 リト君
という配置になった。この劇で唯一楽しみな事と言ったらまぁリト君が王子様という所だけだ。でも…こんな劇で彼が王子様役なんてやったらママさん方からモテモテになってしまう気もして怖い。あと単純にウェン君の演じる意地悪な女王様に何されるか分からなくて怖い。
あとは元気な7人の小人とほぼ毎回即興で会話を交わして且つ自認姫で居なければいけないのが想像以上に大変だ。え…?何?リト君と居る時お前はどちらかと言うと姫なんだから楽だろって?それ以上喋ると君に明日は来ないよ?
…まぁ茶番はこんな所にして、僕は今までに直面したことのない苦労を背負う事になってしまった訳だ。小人達に色々と不満はあれど、ヒーローとして受けた任務を適当にこなす訳にはいかない。それに形は違えど演技を嗜む物として子供相手だとしても手を抜く事はしたくない。
僕は普段の任務の合間を縫って、自認白雪姫の練習をする日々をこなしていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
🤝「…んー。」
本番の日が近くなり、何となくの流れは頭に入った。だが、白雪姫が何度騙されても意地悪な女王様を(まぁお婆さんに変装しているとはいえ)信じて毒リンゴを食べてしまうその従順さがイマイチよく分からない。またその結果倒れてしまった後、目覚めて最初に見た王子様をそう簡単に好きになるのかとも思ってしまう。生まれたての鳥じゃないんだから。
そんな風にアジトのソファで悩んでいると、見回りから帰ってきたウェン君とリト君に絡まれた。
🌩「なーに悩んでんの?…それ白雪姫の台本じゃん」
🦖「熱心だね〜!それともまだ覚えられてない的な?」
🌩「まぁ主人公だしセリフ多いもんな」
🤝「子供との掛け合いがメインだからほとんどアドリブなんだけどね…」
煮え切らない僕の態度を不思議に思ってか、彼らはテーブルを挟んで向かいに座って雑談し始める。多分彼らなりの「話聞いてやるぞ」っていう優しさ。そして奥で歌ってみたの編集をしてたマナ君も騒がしくなったこちらに気づいて、みんな分の飲み物を持って僕の横に座ってくれた。
🐝「いつの間に帰ってきとったん?お疲れ様〜」
🌩「さっきだよ。コーヒーありがと」
🦖「さっすがマナ〜!ねぇちょっと悩める白雪姫のお話聞いてあげてよ〜」
🐝「ん?テツ午前中からずっとそこおるけどどしたん?」
🤝「すご。「どしたん話聞こか」のやつじゃん」
「「wwww」」
いつも通りの全然シリアスにならない雰囲気の中、僕は先程から共感できない箇所を彼らに相談してみた。昼下がりののんびりとした時間。それぞれ任務やら動画作りで疲れているはずなのに、あくび一つもせず僕に時間を使ってくれている。こういう小さな思いやりを感じる度に彼らと同期で、友達で居られて本当に幸せだなぁと感じさせられる。
しかし返ってきたのは彼らからの微笑だった。
🌩「…ん?w共感できないってそれ、本気で言ってんのか?」
🤝「え…?何だよ…僕の共感力が足りないって責めるのか」
🌩「いや違ぇけど、…なぁウェンもマナもそう思わね?」
🐝「んー…w確かになぁ、俺はそういう所含めてテツにピッタリな役やと思っとったからなぁ」
🦖「ねー!自覚ないのかよ〜」
🤝「は…?え?どういう事…?」
困惑する僕をよそに3人は顔を見合せクスクス笑っている。さっきまで3人と同期である有難みに浸っていた反動か、はたまたオリエンス恒例の3対1の構図のせいか、恐らくはその2つが作用しあって今リト君達への信頼度は地に落ちかけている。
するとウェン君はおもむろにソファから立ち上がり、アジト内のカウンターの方へ行ってしまった。
🌩「まぁ鈍感だしな、お前」
🤝「そろそろ僕本当に不機嫌になるよ?リト君達が言ってること全然分からないんだけど。説明ぐらいしてよ」
🦖「まぁまぁテツ落ち着きなって〜ほら麦茶どうぞ」
🤝「あぁありがと…っぶふぉっ!?」
差し出された麦茶を飲んだ瞬間、思い描いていた味とはかけ離れた刺激が喉を襲い吹き出してしまった。強烈なアルコールの味。鼻が詰まっていたせいで全然気が付かなかった。
🤝「…ウェン君!?!これウイスキーだよね!!?!」
🦖「あバレた?」
🤝「バレたって…な、何で急にこんな事…」
🦖「ごめんごめん出来心でさ〜はい水」
🤝「随分困る出来心だこと……っがはっ!?」
口直しになる筈だった水の正体は焼酎だった。これまた混乱した脳によって口から吐き出すよう僕の体は指示を出す。マナ君がビシャビシャになった机周りを「あ〜あ…ウェンも程々にせんかい」と呆れながら拭いてくれている。今の所僕の信頼を取り戻したのはマナ君だけのようだ。リト君は僕を見てニワトリになってるし。
🌩「お前…www本当にぃwwコッコッコッwww」
🤝「何ぃ!?なんなんだよ2人とも!!」
🦖「えー!?まだ気づかないの?今のテツ白雪姫まんまだったよ?」
🤝「…え?」
そこまで言われてはっとする。怪しげな老婆から様々な物を貰い、幾度となく命を落としかける白雪姫。老婆の事もっと疑えよ!とか、何回騙されればお前は学ぶんだ!とか、僕はさっきまで白雪姫に思っていた感情を自分に抱いている。…これはそりゃ傍から見たら言い逃れ出来ないほど僕は白雪姫じゃないか。
🐝「ウェンは教え方雑すぎんねん。ほらテツ顔真っ赤やん。大丈夫か?頭痛くなったりしてへん?」
🤝「…んえ?いやいや僕はべつに…まだ白雪姫の全てに共感してないからぁ…な」
🌩「もう話通じてねぇぞマナ。少し寝かせるか」
🐝「そうやなぁ。ごめんなテツ、でも確かに今のは白雪姫過ぎたわ」
🦖「あんな綺麗に引っかかると思わないじゃーんwあそこまで疑われないと罪悪感の方が勝っちゃうってー」
3人が何かをまた話してる中、意図せず飲んでしまったお酒に僕は意識を持っていかれた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
🌩「────!」
🌩「──ツってば」
🌩「おーいテツ!!」
最愛の人の声に目を覚ます。そして僕の眼前には顔のいい彼が心配そうにこちらの顔を覗き込んでいた。
🤝「!?!っびっくりした…」
まだお酒が回ってはっきりはしない視界いっぱいに広がる宇佐美リトという圧倒的な美形。僕の全て。大袈裟だって?回ってない頭に彼って情報を処理させたらこうなるんだよ。
🌩「ほんとお前騙されすぎ。まぁウェンが悪いけどな…でも本当に大丈夫か?吐き気とか、気分悪いとか無いか?」
そう言って頭を優しく撫でてくれるリト君。
…え待って、これ惚れるな。人に騙された挙句死にかけて、目覚めて優しくしてくれる人居たらこれ全然余裕で惚れるぞ。
🤝「……僕、白雪姫なのかも」
🌩「おぉ大丈夫か頭打った?」
🤝「いや…自分で追体験するってやっぱ大事だなって。ウェン君にもお礼言わなきゃ」
🌩「いや酒飲まされてお礼って…どんだけ聖人な訳?」
ありえないものを見る目でこちらを見てくるリト君に適当な笑顔を返して、僕はさっきまで共感できないとなじっていた白雪姫に対して心の中で謝ったのだった。
🌩「まぁでも、そういう真っ直ぐな所とか、自認姫…wな所とか、好きだよ。俺は」
🤝「どぅっ…え?」
🌩「コッコッコッコッwwwどんな反応だよww」
呑気に人の心を弄んでくる他認王子のリト君は僕の呆気にとられた顔を見て尚も笑っている。やっとお酒による火照りが治まってきた所だったのに、不意に好きな人からそんな事を言われてしまったせいで顔がまた熱を持っていく。そして今更すぎるが、ずっと彼にソファで膝枕されているのが嬉し…恥ずかしくなってきて僕は体を起こした。
するといつの間にか出かけていたウェン君とマナ君が帰ってきたようで、玄関の方から慌ただしい音が聞こえてくる。
🦖「あー!テツ起きた!ごめんね〜?wお詫びに今日は夜ご飯唐揚げね!」
🤝「え!!やったぁ!!全然許す許す」
🐝「もうちょっとぐらい怒ってもええんやで…?本当に体調は大丈夫なんか?まだ顔赤いで?」
🤝「ぁあ、あいやこれはその違うから!だ大丈夫!、」
🐝「そうか?ならええんやけど…。今日はウェンこき使うんやで!」
🌩「俺のことも頼れよ?」
🤝「あぁ…言われなくても頼るよ彼氏なんだから」
今度はリト君の方が僕を見つめて頬を赤く染めている。そしてふいっと反対の方を向く彼。そんな僕らを見たマナ君達は
🐝「もーイチャつくんも程々にな」
🦖「マナぁーこいつらの為にご飯作る必要あるー?」
🐝「ウェンはちゃんと反省しぃや」
と呆れ気味に言葉を放ちキッチンへ行ってしまった。
2人でソファに座ったまま取り残された僕ら。リト君の肩にまだぼーっとする頭を預け、ウェン君の唐揚げを待つ間もう少し眠る事にした。寄りかかる僕のせいで身動きが取れなくなったリト君は、ため息とも取れる息を漏らし僕の頭を撫でてきた。
🌩「本当、お前さぁ…」
🤝「何だよちゃんと頼ってるだろ」
🌩「いやそうじゃなくて。…そういう甘え方してくるの本当にずるい」
そう言って僕の手を握り、僕の頭の上から寄りかかってくるリト君。彼の傍に居るだけで十分暖かかった為、手まで握られてしまうと少し暑いぐらいに感じる。
🤝「…君も寝るの?」
🌩「うん。お前と睡眠時間ズレるの嫌だし」
🤝「酔っ払いなんかに合わせないで規則正しい生活を送った方がいいよ?」
🌩「いや夜お前の相手したくても眠くて出来ないなんて事になりたくないから」
🤝「なっ…//どんな誘い文句だよ…」
突然の夜のお誘いに困惑しつつも、ちょっと期待していた自分もいる事に気づきまた体温が上がる。このままでは本当に暑くて眠れない為、リト君の事を傷つけずにどうにか離れる口実はないかと考えを巡らせる。が、暑さよりもリト君がいる安心感が勝ったのか、僕は彼から離れる前に夢の中へと旅立ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
No side
🦖「唐揚げできたよー!って…。ねぇマナ見てよーまーだ公共の場でイチャついてる奴ら居るんですけどー」
🐝「ふっ。ほんと、勘弁して欲しいなぁ。」
口ではそんな事を言いながらも、動画編集の際自分が使っていたブランケットを持って来て、互いに寄りかかり眠っている2人に優しくかけるマナ。
🐝「…ずっと2人で仲良くしてくれ」
🦖「ふん。まぁ幸せになりやがれって事だよね!唐揚げ冷めちゃうからマナ起こしてね〜!」
🐝「えぇっ無理やってこんな幸せ俺壊せへんよ!?!」
幸せそうに眠る2人を前にあたふたするマナを写真に収めたギャルは、楽しそうに食卓を自身の手料理で埋めていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日
午前10時
佐伯side
まだ眠い瞼を擦る。昨日はあれから4人でウェン君の唐揚げを夜ご飯に頂き、リト君と2人で同棲している家に帰ってきた。それぞれお風呂に入り、リト君の宣言通り僕らは夜中激しめに愛し合って今に至る。ちなみに今日は珍しく2人して休みだ。横にいる彼はまだ寝ているようなので、そっと額にキスをして僕は一足先に起き一服させて頂く事にした。
起きたついでにトイレを済ませ、タバコと白雪姫の台本を持ってベランダに出る。もう日が登って数時間が経ち、程よく暖かくなったベランダ。僕が煙で残機猫を出して見れば、案の定猫は温まったベランダの地面に丸まって眠りにつこうとしている。いいなぁ俺ももう一眠りしたい。
そんな事を思っているとリト君が寝室から出てきた。
「…ふぁ。おはよ」
「おはようリト君。外出て来ないでね煙吸っちゃうから」
「へいへい。こっちで大人しくコーヒー飲んどきますよ」
ベランダに立つ僕を眺めながら、キッチンでコーヒーを淹れる僕の彼氏。かっこいい。
「朝ご飯は?パン焼くか?」
「あー、うん。君が食べるなら食べようかな」
「はいよ」
同棲してすぐの時は朝食を摂らない(朝食はタバコなんだけどなぁ)僕に彼が驚いてたっけ。タバコを吸うとお腹が空かないのだが、あんまり彼が心配するから最近は彼に合わせて食べる事が多い。
焼きあがったトーストとコーヒーを持ってリビングのソファに座るリト君。カップを持ち口元に運ぶ姿が本当に絵になる男だ。これが彼氏なんだからほんとニヤけちゃうよね。
ニュース番組がCMに入ったのか、彼も僕の方を見つめてくる。互いに網戸越しに見つめ合うという謎構図の中、リト君が僕の手にある台本に言及してきた。
「…お前ほんと熱心だな。朝イチから練習か?」
「うん。昨日君らのお陰で共感できた所、ちゃんと頭に入れときたくて」
「ふーん〜」
おもむろに立ち上がり、網戸を開けて来る彼。僕も吸殻を灰皿に入れる。
「じゃーあさ、今日は練習しようぜ、2人で」
「おっと奇遇だね。僕の方から誘おうと思ってた所だよ」
彼から差し出される手をとってベランダから部屋に戻る僕。練習って、別に今日ずっとお姫様扱いされる訳じゃないよなと思いながらも、僕は彼の隣に座って少し冷めたトーストを頬張った。
〜〜〜〜〜〜〜〜
それから僕らは練習に打ち込む為、先にお昼ご飯の調達に出かけた。その買い物中も何だかやたら丁寧に扱われているような気がしたが、僕の自認が順調に姫化してきているんだと言い聞かせリト君に惚れすぎないように耐えた。家までの道でレンタルビデオ屋を見つけ、どうせなら映像化された白雪姫も見てみようという話になり、数年ぶりにアニメを借りた。レンタル屋の黒い袋を手に下げながら、もう片方の手は彼と繋いで、何だかただただ幸せなお散歩の時間だったなぁと思い帰路に着く。この穏やかな思考回路すら白雪姫化しているような気もして、自分の役への没入力に感心した。
「ただいま〜。…じゃあ練習!ったって、俺最後の方まで出番ねぇんだよな」
「あはっ、そうだね。じゃあまぁミュージカル経験者としてさ、僕の演技にいちゃもんでもつけといてよ」
「それでいいのかよw」
絶対的信頼を置いている彼に指導をお願いして、僕はとりあえず頭から演技をしていく。自認姫のまま、それでいて人を疑う事をしない純粋無垢な少女の仮面を被る。真実を話すとされる鏡にこの世で1番美しいと評された白雪姫。雪のように白い肌、真っ赤なりんごを彷彿とさせる血色の良い頬をもつ彼女は自らの美貌を鼻にかける事もなく、最後まで人を信じ命を落とした…。
「んーちょっとストップ」
そこまで一気に通した所でリト君に止められる。
「ふぅ。ごめんリト君、なんかおかしかった?」
思いのほか集中してしまい、彼に止められたのを利用して休憩させてもらう。
「いや?白雪姫としては完璧だよ。流石だな」
素直に褒められたのが嬉しくて顔に自然な笑顔が戻る。演技中も笑顔は絶やしていないが、やっぱりどこまで行っても演技なせいで顔が固まるような感覚がする。
頬をもみもみとしながらリト君の顔を覗き込むと何だかパッとしない表情を浮かべているので、僕の方から先を促した。
「何か言いたげだね?いいよ僕君からのダメ出しなら何だって聞くけど」
「あーいやダメ出しっていうか…。俺の感じた違和感?みたいなもんかな…。
この白雪姫ってさ、テツらしさは出しちゃいけないの?」
「僕…らしさ?」
「うん。さっきも言ったんだけど、白雪姫らしい特徴は完璧に演じきれてんのよ。ただ本番は7人の小人と、ギャルの女王様との会話が主になる訳じゃん。そう考えるともうちょっとテツの無邪気さを役に入れてもいいのかなって」
「ほう…」
僕らしさ。リト君が白雪姫のロールプレイは完璧だと言ってくれた為、そこに僕らしさを足すならそこまで難しくないと思い、実際に頭からもう一度演じてみた。
「お婆さん、それ…本当に食べていい物なの…、か?…わたし、は…いや俺はそんなの食べたくないんだけど…。んー君が言うならー…じゃなくて、お婆さんがそう言うなら私も食べてみようかしら…?」
「はいストップ」
「だぁぁあー!!??!何だこれっ!?激ムズ過ぎるんだが!!?!」
「いやごめん変なアドバイスして…wお前急にwwめっちゃ下手になるじゃんwコッコッコッwww」
爆笑してくるリト君。劇的に演技が出来なくなった自覚はある為別に笑われた所で傷つきはしないが、リト君からのアドバイスは的確だったのに上手く実践出来なかった自分に少し落ち込む。
「いやー…何でだろ…。共感できる所も沢山ある役のはずなのに…」
「んーテツは役と自分を普段完全に切り離してんじゃね?正直お前が最初に言ってた「白雪姫の分からないポイント」に共感できてなかったとしても、お前は上手く白雪姫を演じられてたと思うよ」
「そうなのかな」
彼に言われてその通りだとまでは思えないものの、まぁそうかもしれない程度に彼の分析を聞く。
「じゃあリト君は普段自分とリンクさせて演じてるって事?」
台本を読みながら首を傾げていたリト君が僕の言葉に顔を上げる。
「まぁそうだな。1つでも2つでも共感できる所を探して、そっから役に入り込んでくみたいな?」
「なるほど…。確かに僕とは違うかも。入り込むっていうか別の人格をインストールするみたいな感じだし」
そう自分で説明しながら普段そんな風に演じてたのかと認識を改める。確かに僕は役にあまり自分の要素を入れるタイプではない事に初めて気がつき、尚更今回の白雪姫にどう僕らしさを落とし込んでいくかが大きな課題なのだと理解する。
「うーん…このままだとやばいな…。この役を自分の物にするまでの時間が足りないや」
「もういっそさ、白雪姫を演じるんじゃなくて佐伯イッテツを演じてみれば?」
「…へ?」
常軌を逸した提案に僕の頭はついていけないようでNow Loading…の文字が脳裏に浮かぶ。
「いや、白雪姫みたいな行動をとる佐伯イッテツを演じるんだよ。そしたら別の人格をインストール?するみたいな感覚のまま演じられるんじゃね?」
「あー…「プリンセスの世界線に白雪姫として迷い込んだ佐伯イッテツ、嘘と真実の先にある愛の物語が今始まる…」みたいな?」
「うーん多分そう」
適当なリアクションをするリト君。僕の分かりやすい例えが彼には刺さらなかったようだ。
「まぁ、一旦それでやってみるよ。せっかく君から貰ったアドバイスだからね。演じられるようになってみたいじゃない」
「無理そうなら全力白雪姫でいいからな。ほんと完璧だったし」
「うん。ありがとう。君の姫になってあげるから首洗って待っててくれよ」
「姫になるヤツのセリフかよwww」
そんなこんなで僕らのレッスンは終了した。結局リト君の演技は見られなかったが、本番前に見てそのカッコ良さに心臓が止まっても困るのでお楽しみはとっておく事にした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ついに本番を迎えた今日。地域の公民館はお年を召した方々から小人達の保護者やその兄弟などでそこそこ埋まっていた。さっきから緊張しているのを小人達にからかわれ、それにツッコむ形で緊張を解していたのに、主人公は小人と反対側から登場するという事で離れ離れになってしまった。より一層うるさくなった心臓の音が僕を襲う。大丈夫、いつもの任務よりもずっと安全で楽な…
「テツ」
「うわぁっ!?!!?」
いきなり声をかけられ雄叫びをあげてしまう。観客席の方から笑い声が聞こえる。
「おい静かにしろよww」
「君が急に話しかけてくるのが悪いんでしょ?!」
「いや語尾ww姫じゃんw俺は励ましに来たんだよwテツのままでいいからなっていう激励の言葉をかけに来たの!あと子供たちとの会話楽しめよ!
…俺の白雪姫♡」
そう言って自分の待機場所へ戻っていくリト君。僕の心臓は緊張からではない、別の理由でドクドクと激しく脈拍を刻んでいる。
「「俺の白雪姫」」
彼からの言葉が頭から離れない。そんな中開幕を告げるブザーが鳴る。火照る顔を押さえ、深呼吸をし、僕の王子様に出会う為、舞台上へと足を踏み出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜
🤝「っ…!?ここは、森の中…か?」
『今まで王様の奥様である女王様が一番美しいとされていたこの国で、白雪姫は唯一、その女王様より美しいと真実の鏡に認められた存在でした。ですがその事実は、一番美しくありたかった女王様の逆鱗に触れ、とうとう白雪姫は女王様に命を狙われてしまいます。
どうにか逃げた白雪姫。その先は深い森で、今まで見た事もなかった木々が広がる中、1軒のお家が建っていました。』
🤝「…。僕はもう都会へ帰ることも出来ないし、仕方がないからこのお家に住まわせて貰うことにしよう」
『白雪姫はお家の中へ入り、少し驚きました。ベットから食器、ありとあらゆる物が7人分用意されているのです。それも白雪姫のサイズには合わない、どれも小さい物ばかりなのです。』
🤝「えっ!?何だこれ?集合住宅だったのか!?
…ん?何やらいい匂いがするな」
『そこにはお家の住人が作ったと思われるシチューが出来上がっていました。命を追われて必死に逃げてきた白雪姫はその匂いにお腹が空いてしまい、少しだけ頂くことにしました。』
🤝「っスゥー。ちょっとだけ、ちょっとね!頂きますよっ。
…ん〜美味ぁ!!!ちょっとここの住人天才じゃない!?」
『夢中になり結構な量を食べてしまった白雪姫。次第にお腹が満たされた事で眠くなってきました。』
🤝「ん…もう食えん…。ちょっとここのベッドを2つほど拝借して、っと。…いやー良い寝床だなぁーダンボールよりはるかに寝心地いいよ」
『ふかふかのベッドで重たいまぶたを閉じる白雪姫。命からがら逃げてきた疲れが取れていきます。
…そして次に目覚めた時、周りには7人の小人が白雪姫を囲んでいました』
「おれらのご飯を食べたのはお前か!!」
「あれは僕ら7人のお昼ご飯だったんだぞ!」
🤝「どぅえっ!?!?小人!?ちょっ…え?もしかしてここの住人?」
「そうだ!!僕らのご飯もベッドも奪って許さないぞ!」
🤝「っ本当にごめんなさい!!俺ぇ…命狙われてて…」
『そこで白雪姫は小人達に女王様に命を狙われている事を話し、どうにかここに匿って欲しいとお願いしました。小人達も白雪姫の事を可哀想に思い、一緒に働く事を条件に住まわせてくれることになりました。』
「仕方ないから住んでいいよー!」
🤝「ありがてぇ…っ!!俺働くよ…!!」
『そんなこんなで白雪姫は、小人と一緒に暮らしていく事になりました。穏やかな日々を過ごす白雪姫とは反対に、女王様は白雪姫が死んだという報告が無い事に苛立ちを隠せずにいました』
🦖「もー!!何!?!白雪姫やっちゃってーって部下にお願いしたのに全然だめじゃーん!ちょっと鏡よ鏡ぃ⤴︎?この世で一番美しいのは誰か教えてぇ⤴︎?」
🐝「女王様もお美しいですが、この世で一番美しいのは深い森にいる白雪姫です」
🦖「やっぱ生きてるじゃん!ちょっともー仕方ないからうちが魔女に変装して直接白雪姫やっちゃうからー!」
『そう言って女王様は毒入りの林檎を作って、不気味な魔女に変装し深い森に向かいました。』
🦖「もう今日こそはやっちゃうかんな!許さないかんな!はし」
『じ、女王様は、深い森の中で1軒の家を見つけます。中を覗くと、白雪姫が一人で部屋の掃除をしている所でした。女王様は玄関をとんとんと叩いて白雪姫を呼び出しました。』
🤝「…?はい」
🦖「ちょっと開けてくださるー⤴︎?とってもお得な商品のご紹介があるんですけどぉー!」
🤝「あっうちセールスお断りなんで…」
🦖「ちょっとまってー!!タダだから!!ほら見てよこの真っ赤な林檎!!美味しそうじゃなぁい?」
🤝「いや美味しそうだけど…」
🦖「じゃ、あーん!」
🤝「はっ…!?むごっ…!?!」
『白雪姫は女王様の作った毒林檎を食べてしまい、玄関先で倒れてしまいました。』
🤝「…!?っぐはぁ……これ、ど、毒が…ぁ」
🦖「やーい引っかかってやんの!じゃーね白雪姫!これでいっちばん可愛いの僕だからぁ!」
『去っていく魔女を眺め、とうとう意識を失った白雪姫。その数時間後に探鉱から戻ってきた小人達が倒れている白雪姫を見つけました。』
「白雪姫ー!?!」
「たいへんだ!!息をしていないぞ!」
「きっと女王様にやられたんだわ」
「そんな…可哀想な白雪姫…」
「せめて豪華な棺に入れて弔ってあげよう」
『白雪姫の死を悲しむ小人達。せめて最後は寂しくないようにと、棺にそれぞれの大切にしていた物を詰め、送り出す事にしました。7人の小人は白雪姫の入った棺を持ち上げ、綺麗な花々の咲く所へ埋めようと運びます。
…そんな時、森で部下と戦いの練習をしていた隣国の王子様が小人達と出会いました。』
🌩「…ん?そこの小人達、運んでいるそれは何だ?」
「あ、王子様!」
「実は…」
『小人達は白雪というこの世で一番美しい姫が、女王様によって殺されてしまった事を話しました。事情を知った王子様は、白雪姫の事を哀れみ、小人達にお願いして埋葬を手伝わせて欲しいとお願いしました。小人達の苦労を鑑みて、自分の乗っていた馬に白雪姫の入った棺を乗せ運ぶ王子様。そして暫く行った所で目的地の花畑に着きました。』
「ここです!」
🌩「いい所だ。…まだ若いだろうに、命を落としてしまうとは惜しい…」
『棺を埋める前に、王子様は白雪姫を棺から起こしました。初めて見る白雪姫は、まるで亡くなっているとは思えない程に美しい容姿をしていました。王子様は亡くなっている事が信じられず、寂しさから最後にお別れのハグをしました。』
🌩「……?ん…まだ息をしている…のか?」
『ハグをした時に、白雪姫がかろうじて細い息をしている事に気がついた王子様。見ると何かが喉に詰まっているようで、王子様は急いで白雪姫の背中を叩き介抱します。』
🌩「白雪姫っ…!?大丈夫か!?」
🤝「……っぐふ…ごほっ…」
『すると白雪姫は、喉に詰まらせていた毒林檎を吐き出し、王子様に寄りかかって目を覚ましました。』
🤝「…あれ?ここは…」
「白雪姫ーっ!!」
「良かったぁ生きてて…っ」
「大丈夫?王子様が助けてくれたんだよ!!」
🤝「王子って…」
『目の前にいる、心配そうな顔をした王子様。体を支えてくれている命の恩人に白雪姫は赤面してしまいました。』
🤝「あ…/ありがとうございます…」
🌩「いえ、無事で良かった。大丈夫ですか?」
🤝「…っうぇ、だ大丈夫です」
🌩「まだお気分優れないようでしたら、私の城で休息を取られては?」
🤝「えっ、えっと…はい。」
『その後、王子様と仲良くなった白雪姫は共に暮らしていく事になり、隣国のお城で暮らす白雪姫は女王様に命を狙われる心配も無くなりました。女王様も人の命を奪うのではなく、自分磨きを極めようと正直な鏡を相棒に努力しているようです。』
🦖「よーし!今日もパックして乳液と化粧水と色々ばっちり!いつか白雪姫よりうんと可愛くなっちゃうんだからねー!」
🐝「女王様はいつでもお美しいですよ」
🦖「でしょー!やっぱ鏡ぃ⤴︎最高なんですけどー!」
🤝「王子様?一緒にあの森へ散歩に行きませんか?」
🌩「えぇ、小人達にお土産でも持っていきましょう」
🤝「はいっ!」
『みんながそれぞれの幸せを見つけ、前よりもずっとずっと楽しい毎日になりましたとさ。
おわり。』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
赤い緞帳(どんちょう)が下がり、僕ら演者と観客が切り離される。完全に幕が降りても尚、大きな拍手が僕ら演者の耳に届き続けていた。
🤝「……っはぁ…はぁ…死ぬ…」
🌩「コッコッコッwwwおい生き返ったんじゃねぇのかよw」
🐝「テツ〜!!完璧やったやんかぁ!」
🦖「ちゃんと白雪っぽかったよ〜!ねぇー小人さん!」
「うんっ!」
「楽しかったぁ!」
「テツ死ぬの上手かったねー!」
🤝「その言い方はちょっと違うんじゃないかい?」
「でも元気なお姫様で面白かったー!」
🤝「君らも最高の小人さん達だったよ。シチュー食べちゃってごめんね?」
「今度は一緒に食べようねーテツ!!」
「食べよー!」
🤝「おう!約束だ!」
小人達と握手を交わす。それを遠巻きに見つめてくるリト君達。何とかオリエンスとしての任務…白雪姫編は成功したようだ。見に来てくださった地域の方とも言葉を交わし、様々な感謝の言葉を頂きながら、日が落ちる頃になってやっと帰路に着いた。
🌩「流石に疲れたな…」
🐝「リトが言い出すなんて珍しいなぁ」
🦖「ねー!何?今日は彼氏さんの素敵な所いっぱい見られて幸せだったんじゃないのー?」
🤝「ちょっ…とウェン君からかわないでよ!//」
🌩「確かに最高だった。流石俺の姫だな」
🤝「…っ〜//君って奴は本当に…」
🐝「ふっwこの任務受けて良かったなぁ。熱々のお2人はそりゃ楽しかったと思うけど、オリエンスで劇なんてやる機会ないやん?俺は本当に楽しかったで」
🦖「まーたマナはそうやって恥ずかしくなる事言って…」
🤝「えー?ウェン君は楽しくなかったの?」
🦖「…はぁ⤴︎??別にそんな事ひと言も言ってないじゃん!」
🌩「で?楽しかった?」
🦖「…//楽しいって言えばいいんだろぉ鈍感なメンズ共がよぉ…」
🐝「うははっwwウェン顔赤いで?」
🦖「うるせー!!!毒林檎お見舞いするよぉ!?」
わちゃわちゃと動き回るマナ君とウェン君。僕も本当に楽しかったなぁなんて思いながらリト君の方を見る。
🌩「…ん?どした?」
🤝「んーん。ふっw…」
🌩「何だよw」
🤝「えー…。」
リト君の耳元に寄って、劇以外じゃ言うのも憚られるような事を囁く。
🤝「僕の王子様っ♡」
🌩「っぁ…//」
顔を逸らしてしまうリト君。彼が照れているのが珍しくて嬉しくて、そっと手を繋ぐ。
🤝「んふふ。いいなぁこれ、たまに言おう」
🌩「いやちょっと勘弁して欲しいかも…」
照れながらも優しく手を握り返してくれるリト君が可愛くて、わざと頭を彼の肩にぶつける。「何だよ…w」なんて言いながら僕の頭を撫でてくれる僕の王子様。
こんなにも大好きな人にとっての、たった一人の姫になれて本当に良かったと強く思うのだった。
オリエンス3周年本当におめでとうございます!!!
煽り煽られながらも信頼し合う彼らが、ずっと仲良く活動していけますように!!!
今後とも壁になりますよ〜!