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momo
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っだぁ
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午前七時。我々国軍中央基地の食堂は、今日も騒がしかった。
「エーミールは今日こっち座るからな!」
「いやいや、エミさんはこっちやろ。昨日一緒に訓練したし話したいことあんねん!」
「昨日一緒やったなら今日は譲れや、シャオロン」
「なんでやねん!」
「朝っぱらから元気やな、お前ら……」
トントンは二人を前に、深いため息をついた。
食堂の中央には、すでにグルッペン、ゾム、鬱先生、コネシマ、シャオロン、ロボロ、ショッピ、チーノ、そしてほかの隊員たちが集まっている。
その全員が、入口のほうをちらちら見ていた。
「お前ら、そんなに入口見て何になるん?」
トントンが尋ねる。
「別に?」
ゾムが即答した。
「エミさん待ってるだけやけど?」
「先飯食ってろや!冷めるやろ」
「トントン、声が大きいぞ」
グルッペンが紅茶を飲みながら口を挟む。
「グルさんは黙っといてください。昨日、エーミールの休暇申請だけ即決で通したん、俺は忘れてませんからね」
「優秀な人材の休養は軍全体の利益だ」
「はいはい」
「あと、今日は俺がアイツと朝食を取る予定だった」
「そんな予定あらんやろ」
ロボロの冷静なツッコミに、食堂が笑いに包まれた。
「お前ら、ほんま仲ええなあ」
鬱先生が笑う。
「まあ、エミさんがおらんときはこんなもんやろ」
コネシマが肩をすくめた。
「おったらめっちゃひどいもんな!!」
「誰のせいやと思っとんねん!」
シャオロンが叫ぶ。
そのとき、食堂の扉が開いた。
「おはようございます。皆さん、今日はずいぶん賑やかですね」
エーミールだった。
一瞬で、全員の表情が変わった。
「エミさん、おはよ!」
「おはようございます、エーミールさん」
「おはよう。ちゃんと寝たか?」
「こっち座り!」
「いや、まず俺の隣やろ!」
「お前ら、いっぺんに喋るな!」
エーミールは目を丸くしたあと、ふわりと笑った。
「ありがとうございます。皆さん、私のことを気にかけてくださるんですね」
――違う。
全員が、心の中で同じことを思った。
気にかけているだけじゃない。
もっと近くにいたい。
自分だけを見てほしい。
誰よりも頼ってほしい。
けれど、そんな本音を言える者は、まだ誰もいなかった。
「エーミール、今日は俺の隣な」
トントンが空いている椅子を引いた。
「えっ、トントンさんの隣ですか?」
「そう。昨日、夜遅くまで資料読んでたやろ。朝飯くらいちゃんと食べてるところ見いひんと心配やわ」
「昨日見てたんですか?」
「廊下ですれ違ったからな」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
エーミールが椅子に座る。
トントンは、いつもより少しだけ丁寧に皿を置いた。
温かいスープ。
焼きたてのパン。
エーミールが好きだと言っていた卵料理。
「わあ、おいしそうですね!」
「そらよかった」
「トントンさんのお料理、いつもおいしいです」
トントンの手が止まった。
「……そ、そうか」
「はい!」
「……なら、よかったわ」
耳が熱い。
たったそれだけの言葉で、こんなに嬉しくなるなんて。
「トントン、顔赤いで?」
ゾムが向かいから覗き込んだ。
「赤ないわ!」
「いや、赤いやろ」
「お前は黙って食え!」
「ええ〜、俺もエミさんに褒められたいんやけど」
「ゾムさんも、いつも訓練で助けてくださってありがとうございます」
「……っ」
ゾムが固まった。
「ほら、ゾムも赤なった」
「うるさいわコネシマ!」
今度は食堂全体が笑った。
エーミールも楽しそうに笑っている。
その笑顔を見て、トントンはふと思った。
この時間が好きだ。
みんなが集まって、くだらないことで騒いで。
エーミールが笑っている。
それだけで、朝から頑張った甲斐があったと思える。
――でも。
「エーミール、今日の昼は俺と訓練せえへん?」
シャオロンが身を乗り出した。
「午後なら空いていますよ」
「よっしゃ!」
「待て、午後は俺が資料の確認を頼んでる」
ロボロが即座に言った。
「えっ、聞いてへん!」
「今言った」
「ずるいやろ!」
「二人とも、エミさんの予定を勝手に埋めんといてください」
ショッピが淡々と口を挟む。
「それなら午後は俺が――」
「ショッピ、お前もや!」
チーノが笑いながら指をさした。
「みんな必死すぎません?」
「チーノ、お前も昨日エーミールさんにお菓子渡してたやろ」
「差し入れですう!」
「俺も見たで。二人で楽しそうに喋っとったなあ?」
鬱先生がにやにやする。
「鬱先生だって、昨日エーミールと一緒に資料室おったやん」
「え、なんで知ってんの?」
「俺が見たからや!」
「全員、見とるやん……」
ロボロが呆れたように呟いた。
グルッペンは紅茶を置き、満足そうに頷いた。
「うむ。実に結束力がある」
「グルさん、これを結束力って呼ぶんか?」
トントンが尋ねる。
「仲間の動向を把握し、互いに競い合っている。素晴らしいことではないか」
「絶対違うやろ……」
また笑い声が上がる。
その中心で、エーミールは不思議そうに首を傾げた。
「皆さん、本当に仲がいいですね」
ぴたり、と全員の動きが止まった。
そして、ほとんど同時に答えた。
「「「まあな!」」」
顔を見合わせ、吹き出す。
仲はいい。
誰よりも信頼している。
同じ任務で命を預けられるし、背中を守ることに迷いはない。
だからこそ、誰がエーミールの隣にいるかで張り合っても、最後には笑い合える。
――ただし。
「じゃあエミさん、今日の昼は俺と!」
「いや、俺やろ!」
「その前に資料確認や!」
「午後の訓練はどうなったん!?」
「……お前ら、朝飯くらい静かに食わせたれや!」
トントンの怒鳴り声が食堂に響いた。
エーミールは、くすくすと笑いながらスープを口に運ぶ。
「ふふ。毎日楽しそうですね」
その言葉に、トントンは少しだけ目を細めた。
ああ。
この笑顔を守りたい。
みんなと一緒に、いつまでも。
けれど同時に、ほんの少しだけ思ってしまう。
今日くらいは、自分だけを頼ってくれたらいいのに。
トントンは、エーミールの皿にそっと卵料理を一切れ追加した。
「ほら、もっと食べ。今日は俺が作ったんやから」
「ありがとうございます、トントンさん!」
その笑顔を見て、トントンは満足そうに笑った。
向かい側では、ゾムがじっと二人を見ている。
隣では、シャオロンが次の約束を取りつけようと身を乗り出している。
ロボロはすでに午後の予定を考え直し、ショッピは何も言わずエーミールの空いた水差しを満たしていた。
グルッペンは、全員の様子を見て楽しそうに笑う。
誰もが仲間で、誰もがライバル。
そして、誰もがまだ知らない。
この何気ない朝食の時間が、これから始まる恋の取り合いの、ほんの序章にすぎないことを。