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【四日目】
今日はモルは動かなかった。まぁ蛹だから仕方ないか。そういえばあのでかい針、どこに置いたんだっけなぁ。確か台所の戸棚の奥にしまったはずなんだけど。
そうやって探していると『めぎゅっ゜』という何とも言えない、表現のしようがない音が聞こえた。そちらを見るとモルが床に落ちていた。
どうやら粘液によって針が抜けてしまったらしくだらんと床に倒れていた。
でもここから動かすのも面倒臭いのでこのまま放置することにした。どうせそろそろ還るだろうし。
【五日目】
今日は朝起きると粘液が半透明ではなく完全に不透明な物体と化していた。。触ってみるとそれはぷにぷにして柔らかく、まるでゼリーみたいだ。
ちょっと食べてみたくなったけど、勿体無い…そう思っていると突然そこからモルが出てきた。
モルは怯えているような目でこちらをじーっと見たと思ったらずりずりと羽を引きずりながら窓の辺りに座り込んだ。
かりかりと音を立てながら柔らかそうな爪で窓を引っ搔いている、勿論爪がふにふにとして跡なんてつかない。
どうやら羽を乾かしたいようで太陽が微かに見える窓のそばにいるそうだ。俺の部屋は2階だけど、どうやらこいつは飛べないらしい。
羽ばたきの練習を始めたようだがまだうまくいかないようだ。
そんな練習を見ているうちに俺はあることを思いついた。こいつの羽に針を通してやろう。
ちょうど昨日針を探した時に出てきた裁縫用の小さな針があったはず。感覚があるのかどうかも知りたいし。俺は早速準備に取り掛かった。
針は小さいけど穴は貫通できるくらいの大きさはあるはずだ。針に糸を通し、針先を消毒してから針の穴に通す。針はあっさりと通った。
モルは羽に針が刺さったことも知らずにまだ頑張って羽を動かそうと顔をしかめている。可愛いなぁ。
【六日目】
今日は朝から雨だった。モルは昨日と同じ位置にいた。針は昨日刺しっぱなしなので羽には針の跡がついている。
針は羽に刺したままにしておくことにした。だって針を抜き取るとモルが痛がるかもしれないし。モルは俺のことを気にかけるようなことは無い。
ただ俺は気になるわけで頬を触ったり尻を観察したり勝手にしている。そういえばモルの羽が少し大きくなっている気がする。もうすぐ飛ぶのかなぁ。
【七日目】
モルがついに飛んだ。といっても床からほんの数センチ浮いていただけなのだけれど。
それでもモルにとっては大きな一歩だと思う。モルは疲れたのかそのまま俺の方へやってきた。
座り込んだまま腕を使ってじりじりと近づく姿はアザラシに近い者がある。
間抜けめ、俺はお前と同種ではないぞ。そう思いながらも必死にやってくるモルを撫でたりしながら今もこうして綴っている。
モルは俺に懐いてくれたのか俺の後についてくる。可愛い奴だ。