⚠誤字、脱字
「よし!そんでもちさん、悩み、教えて?」
流石ホストだな。お店についた瞬間に聞いてくる。不破くんは笑顔だがなぜだかそこから圧を感じる。
『、、聞いても引かないでくださいね?』
「当たり前じゃないすか!大丈夫っすよ」
「そうですよ!なんでも受け入れる準備はできてますから!」
「あまり大人を舐めないでくださいね」
こういう所で彼らの“大人”の部分を感じる。十分僕以外は大人なのでは?と思ってしまう。
僕は薄く呼吸をしてまた彼らの目を見る。
『実はですね、ーー』
そして僕は伝えた。伏見ガクの事が好きということ。最近はその思いが深すぎて少し辛いこと。最後に、がっくんがなんだか違う優しさを僕に向けてくれてる気がする事を言った。
『ーーーということなんですよ』
「、、、はぁ〜〜良かったぁ。思い詰めた顔してたから心配してたけどそういう事かぁ」
ん?どういう事だ?
「なんですか、そんな事ですか。たったそれだけの事でここまで悩むもんなんですね」
「いや逆になんで今まで気づいてなかったなのぉ?」
『は?どういう事ですか。ちゃんと説明して下さいよ』
「ん〜?いやぁ俺らから見たらそのもちさんの心配は大丈夫だと思うんやけどなぁ」
『と、言うと?』
「そのもちさんが言う“違う優しさ”も案外間違えじゃないかもしれませんよ」
「いや、あんまり私達が詳しく言い過ぎるのも良くないので一つだけ言いますよ?」
『はい』
「剣持さんが伏見さんにその想いを伝えても大丈夫ですよ」
社長が言った言葉を何回も頭の中で繰り返す。
僕がこの想いをがっくんに伝えても大丈夫ということは両思いということか?いやでも僕が振られたあと3人で慰めてくれるということか?そういうことだろう。そうだ、両思い、なんて、、。そう考えてももしかしたら両思い、という都合のいい解釈ばかりしてしまって顔が熱くなるのを感じる。
そうやってぐるぐる考えていたら目の前の3人がにやにやしているのに気付いた。
『、、な、なんですか、』
「いや?その顔、恋してるって感じやな〜って」
「やっぱりアニキも!?めっちゃガクさんに見せたい、、」
「こらこら、彼は真剣なんです。やめてあげなさい」
「そういう社長も顔が面白がってますけど?」
「あれ?そうですか?」
『ふ、ふざけんなぁ!!こちとら真剣なんだぞ!』
「落ち着いて!もちさん!!」
そうしてしばらく騒いでいたがそういえば時間、と思ってスマホを見る。
『あっ!やばっ!』
「ん?どうしたんすかもちさん」
画面には伏見からのLINEがいくつかきていた。
〈そろそろ終わった?〉
〈大丈夫?そっち行こうか?〉
〈なぁ、連絡してくれよ〉
しまった、つい話をしすぎて伝えるのを忘れてしまった。すでに最後のLINEからは数十分が経っておりすぐに返信をする。
〈すみません!話をしていたらうっかり忘れてて、、〉
するとすぐに既読がついた。
〈大丈夫だぜ!今から迎えに行くから場所教えてもらってもいいか?〉
〈場所はーーーという所です〉
〈了解!帰る準備しといてくれよな!〉
〈ありがとうございます〉
その連絡を最後にして早急に帰りの支度を済ませる。
「あれ、もちさんもう帰るんですか?」
『はい、あなた達のせいで僕はがっくんに心配をさせてしまいました』
「え、一緒に帰るつもりやったんすか?」
『?えぇだって今泊まってるし、、』
「なんでそこまでいってなにもないんですか、、!」
「まじで社長分かります、、」
「まぁ初めてやからね。気持ちがごちゃごちゃしてるんやろね」
なんだこの言いようは。なんだか子供みたいと言われているようでイライラしたから何か言い返そうとした時。
「、刀也さん!」
『あ、がっくん!』
声がしたから見るとかなり急いで来てくれたのであろう。少し焦った様子が見た目から分かった。
『ごめんね、ちゃんと連絡しないで』
「いやいいっすよ。話が盛り上がって忘れちゃってたんでしょ?ならその分楽しめたってことじゃないすか!」
『ううん、でもがっくんに心配かけちゃった。次からはしっかりと連絡するね』
「あーとぉ、刀也さん!でも俺怒ってないからね?その気持ちだけで充分俺は嬉しいよ」
がっくんは大丈夫って言ってくれたけど、絶対かなりの心配をかけてしまったはずだ。僕だって長年一緒に居たんだから表情の変化には気付きやすいんだからな。
「えっと、二人の会話を止めるようで悪いんですけどもちさん帰るんですよね?」
『まぁそうですね。がっくんが来てくれたし』
「もちさん、いつまでもそのまんまじゃ何も変わらないからね。、、もちろんがっくんも」
「え、」
『??なんでがっくんもなんですか?』
「いやぁ?それはなんでやろねぇ」
「、刀也さんそれじゃ帰ろっか」
『?はい、それじゃあ皆さんまた』
「おつかれ〜」
「またね〜!もちさん、ガクさん!」
「おつかれさまでした」
そのまま僕達は店を後にした。車に乗るまでがっくんの顔がよく見えなかったけどどこか気分が悪かったのだろうか。少し心配だ。
車に乗っているとなんだか胸の中がすっきりした感じがした。改めてあの3人には感謝しきれないな、と思う。それと不破くんが言った何も変わらない、という言葉がずっと僕の中でぐるぐると渦巻いていた。
「刀也さん楽しかった?久しぶりの打ち上げは」
『うん、流石大人だなって思うところが見つかっていい打ち上げだなとは思ったよ』
「そっか!それなら良かったんだねぇ」
会話をしていたらがっくんの顔はいつも通りになっていて、さっきのは僕の考えすぎだったのだろうか。
「ほい、着いた〜」
『今回も残機を減らさずに済んだな』
「まだ言ってんすか?もう認めろよ!俺の運転が安全って!」
そうして僕達は会話をしながら降りる。
『何言ってんだ僕は騙されねぇからな!お前の運転で人が轢かれる姿を、、、』
「すぅぅぅ、、あれは、まだ警察が来てなかったんでノーカンっす」
『うわぁ、、駄目なやつだ』
「いいじゃねぇか!実際人を乗せた中では事故なんてないんだから、、」
『、、、人を乗せた中では??』
「やべ」
『よし、僕は一生伏見の運転で安心できなくなった』
「勘弁してくれよ〜」
『んふ、冗談だよ。全然成長してると思う』
「刀也さん、、!っぱ剣持刀也なんだよな〜!」
『あははw』
やっぱりがっくんとの会話は心地良い。考えなくても次の言葉が浮かんできて会話が途切れることなんてない。なにもなかったら一生話せるんじゃないか?なんて思ってしまうほどに。
僕とがっくんはお互いお風呂も済ませていて今はくつろぐ時間だ。
僕はベッドの上で横になっていつものエゴサ、がっくんはこの時間にレポートをしている。そしたらがっくんが話しかけてきた。
「、、そういえば刀也さん明日って何も予定ないんだよな?」
『うん特に無いけど、、どうしたの?』
「ん〜、、どこか二人で出掛けたいな〜って思って」
話しかけてきたと思ったら遊びの誘いだった。僕は最初からそうするつもりだったし今さら確認することでもないと思った。
『全然別にいいけど、ていうか最初からそのつもりなんだけど?』
「っあぁ、まぁそうだな。できればドライブでと思って」
『へぇ〜遠くに行く予定なんだ。いいね、楽しみにしてる』
「そんな期待するものでもないけど、、まぁ楽しみにしといて」
そう言ってまた作業に戻った。なんで予定の確認なんてしてきたのかは分からないが明日は遠出するらしいからなんとなく楽しみだ。
「刀也さん、そろそろ寝る?」
『ん、寝る。昨日はベッド使っちゃったし布団にする』
「俺は別にベッド使ってもらっても構わないんだけどなぁ」
『いやそういう訳にはいかないよ。あくまでも僕お客さんだから』
「刀也さんのそういうところ偉いな〜って思う」
『急に何?当たり前じゃない?』
「そうか〜?遠慮しすぎだと思うけど、、」
『もういいでしょ、眠い』
「そうだな、それじゃおやすみ」
『おやすみ、、』