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「あけましておめでとうございます! 南雲さん!!」
「ああ、明けましておめでとう。……妙に元気だな、逆神くん」
「南雲さん! お年玉ください!!」
「ええ……。君、私より長く生きているじゃないか。そういうのは家族とか親戚からもらいなさいよ」
「親父には僕が小遣いあげてます! じいちゃんはお餅くれました! 母と祖母は正月なのに帰って来ません!!」
「ごめん! 私が悪かった!! これ、3万円だけど足りるかな!?」
南雲はそののち、チーム莉子のメンバーにもお年玉を配って回った。
そして新年一発目のコーヒーも振る舞う。
「莉子さんや。砂糖取ってくれる? 5個くらい」
「もぉぉ。六駆くんってば、それじゃコーヒーの味変わっちゃうよぉ?」
「だって苦いんだもの! 苦いのは人生だけでお腹いっぱいだよ!」
「逆神くん。ソフトクリーム浮かべるっすか?」
「はいはい! あたしもソフトクリーム欲しいにゃー!!」
「木原さんは普通にブラックコーヒーをお飲みになるのですわね?」
「みみっ。苦いのはおじ様で慣れてるです。あれに比べたらブラックコーヒーはハチミツみたいに甘いです。みっ」
本日は仕事始め。
まだ学生の彼らは冬休みであり、タイミング的にはこの上ない日だった。
「さて、事前に連絡しておいたように、今日はみんなに昇進査定を受けてもらう」
「ふぇぇ。わたしがAランクなんて、他のAランクの人に怒られないかなぁ……」
「莉子ちゃんは平気だと思うにゃー。あたしの方が怒られると思うにゃー」
「芽衣がBランク……。ランクが上がるごとにヤメにくくなっている気がするです」
今回査定を受けるのはこの3人。
莉子とクララはAランク査定を受ける。
芽衣はBランク査定を。
小鳩は既にAランクなのでランクは据え置き。
「逆神さんはお受けにならないんですの? あなたのお排泄物的な強さだったら、Sランクも余裕じゃなくって?」
「嫌ですよー。ランク上がって給料も上がるんなら考えますけど。変に目立つのって得より損の方が多いんですよね。異世界で僕が悪目立ちして助けた国から追放された話、聞きます?」
急に悲しい過去をぶっこんで来る六駆おじさん。
小鳩は「け、結構ですわ」とその申し出をお断りした。
このおじさんの昔語りから得るものが少ないのは、もはや語るまでもない。
コーヒーも飲み終えたところで、全員揃って仮想戦闘空間へと移動。
お忘れの方も多いと思うので事前に昇進査定の仕組みを振り返ろう。。
Bランク査定までは監察官が1人で可否を決定できるが、Aランク査定には原則、2人の監察官が立ち会う事になっている。
「失礼しますよ。どうもチーム莉子の皆さん、あけましておめでとうございます。これ、少ないですけどお年玉です」
楠木秀秋監察官がやって来た。
「あれ!? 楠木さん!? すみません、私は雷門さんにお願いしたんですけど。山根くん、伝達ミスしたな?」
「失礼っすね。南雲さん、いえ、ナグモじゃないんだから、しませんよそんなミス」
上官の古傷を抉っていくスタイルを今年も徹底する山根健斗Aランク探索員。
「いいじゃないですか! 僕は楠木さん好きだな! 何も言わないのにお年玉くれるから!!」
「ヤメなさいよ、逆神くん。私も楠木さんなら望むべくもないが」
楠木監察官は柔和な表情で「雷門くんの代わりで来ました」と言った。
理由は簡単である。
「雷門くんのところの加賀美くん。正式にSランク探索員の昇進が決まってね。今、彼が号泣しているから。落ち着くまでに2時間はかかると思って、手の空いていたボクが来たんですよ」
Sランクへの査定は監察官、もしくはSランク探索員が3人以上立ち会わなければならない。
五楼をはじめ、久坂や和泉Sランク探索員辺りも駆り出されているようである。
「そうか。今日が仕事始めだから査定するところも多いのか。これは私のミスだったな。すみません、楠木さん」
「いえいえ。お気になさらず」
ならば善は急げ。
楠木の時間を奪うのを良しとしない南雲は、早速芽衣の査定に移った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「みみみみみっ! 『発破紅蓮拳』っ!! みみみみみっ!!」
ドゴンッと音を立てて、イドクロアで作られたサンドバッグが吹き飛んだ。
山根が煌気量や破壊力などを測定して、それはそのまま監察官たちの端末へと出力される。
「おお。木原くん、すごいじゃないか。破壊力だけならAランク上位の数字だ」
「惜しいですね。煌気総量がCランクとBランクの間ですか」
使用できるスキルの数も少なく、一点突破型の芽衣は惜しくもAランクを逃すが、無事にBランクへと昇進。
もちろん、探索員協会において史上最年少のBランク探索員の誕生である。
「では、続いて椎名くん。行ってみようか。ここだけの話、君の場合はスキルの数や煌気操作についてはAランク相当なんだよ。前回の査定時点で。ただ、破壊力と一撃に込められる煌気量が足りない。だから、ここは破壊力に特化してくれ」
当然のことながら、このように査定中の探索員にアドバイスをするのはルール違反である。
が、チーム莉子は特別。
監察官会議で「チーム莉子の昇進」は既に決定事項なのだ。
理由は2つ。
1つは先の対抗戦の成績と、アトミルカ襲撃事件での貢献度がいずれも高い事。
もう1つ。こちらが重要。
午後にも開かれるアトミルカ攻略作戦の部隊編成。
そこにチーム莉子のメンバーを全員入れるために、ランクを出来るだけ上げておきたい目論見があった。
監察官たちが納得しても、他の探索員から異論が出る可能性がある。
そこで威光を発揮するのが探索員ランク。
最も手っ取り早いのが「上位ランクなら仕方ないな」という目に見える実力の数値化なのである。
「椎名さん、準備オッケーっすよ」
「了解ですにゃー。じゃあ、強弓『サジタリウス』に換装!! 破壊力なら属性は無視して!」
銀弓ディアーナをサジタリウスに変換させ、クララは矢に煌気を込める。
彼女の煌気総量は平均的なBランク相当。
だが、このように長く助走を取れば、威力は必然的に跳ね上がる。
「いきますにゃー! 『ヘビーサイクロンアロー』!! うにゃにゃー!!!」
風を切り裂く螺旋の矢が的を撃ち抜く。
遠距離スキルの査定は命中精度も加味されるのだが、クララは煌気コントロールが得意であり、見事ど真ん中を捉えていた。
「さすがですわね、椎名さん! 美しいですわ!!」
「お見事! クララ先輩は初めて会った時から才能がありましたからね! いやー、僕の手で育てたかったなぁ!! 実に残念!!」
小鳩は何となく心が寒くなった。
恐らく、彼女のメインスキルになっている『銀華』の33パーセントが逆神流だからだと思われる。
「データ採取完了っす。送信しまーす。カタカタターン」
南雲と楠木の端末に結果が表示される。
「おおっ! 悪くないじゃないか! 破壊力と命中率がAランクの中位だ! 椎名くん、日頃の努力が現れているぞ!」
「元々の習得スキル数や、彼女の探索員としてのキャリアを加味すれば、これはもう十二分にAランク昇進を認められますね」
椎名クララ、無事にAランクへと昇進が決定する。
「にゃっははー。チーム莉子に入ってから二階級特進ですにゃー! やっぱ、日頃から六駆くんとか莉子ちゃん見てると勉強になるからですぞなー」
謙虚なクララ。
芽衣と小鳩が駆け寄って、彼女を祝福した。
一方、六駆は莉子の元へ。
「さあ、莉子! 君の力を見せつける時がきた!! 本気で行こう!」
「うんっ! 頑張るよぉ!」
南雲の耳は地獄耳。そして彼の動きは速い。
「山根くん! 緊急防御壁を発動させて! 各監察官室に通達! これから小坂くんがスキルを撃ちますって! 急いで!!」
小坂莉子。
彼女の実力は果たして数値化できるのか。
コメント
1件
「昇進査定」っていうドキドキする場面なのに、冒頭のお年玉やコーヒーのやり取りでめっちゃほっこりしました☺️ 特に六駆くんの「苦いのは人生だけでお腹いっぱい」と小鳩さんの「お排泄物的な強さ」発言に思わず笑っちゃいましたw 芽衣ちゃんの最年少BランクもクララちゃんのA昇進も嬉しい! でも最後の莉子ちゃんの査定、南雲さんが緊急防御壁張るって…どんなスキルくるんだろ🥀 次回が待ち遠しいです!