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頭に響いてくる声の感じだけで、カンゾーなんて名前をダンジョンに付けてしまった。
これは俺の身体に元々備わっている言語翻訳機能がそのように判断してしまうからだ。
だってもう、『忍法ムササビ』と言って空を飛んでるハ○トリくんと、『にょにょ~ん』とちくわを銜えた獅子丸が頭から離れないのだからしかたがない。
ダンジョン・カンゾーの管理者権限を取得した俺は、一旦神社へ戻ることにした。
「カンゾーとはこれからいろいろと打ち合わせをしないとな。話すだけなら上の神社に居てもできるよな。ていうか情報交換をしないとまだ何もわからないだろう? とにかく帰ったら上から念話を送ってみるからその時はよろしく!」
[了解したでござる主殿。また、いつでもお出でくだされ]
少しだけカンゾーと話をして俺たちはダンジョンから外にでた。
雨がパラパラと降りだしていたが転移で帰れるのでどうということはない。
シロが開けてくれた穴には、念のため認識阻害の結界をはっておく。
(これで良し!)
俺たちは本殿の裏へ転移してから歩いて家に入った。
穴掘りをがんばってくれた泥んこシロちゃんには、玄関先で浄化をかけさせキレイにしてから家にあがらせる。
「ただいまー!」
「やぁおかえりー。おや、何か見つかったようだね?」
「えっ、ええ、まあ収穫はありましたよ」
おおっ茂さん、なかなかに鋭い!
何しにいったのか分かってるような口ぶりだ。
「着てる服が前見せてくれた冒険者装備になってるからねぇ」
ニカッと笑いながら指摘してくれた。
俺は自分の姿を見て……。
「ハハハ! そうか、これではバレバレですよね~」
ていうか、『どちらのコスプレイヤーさん?』と言われそうな恰好ですよね。
だけど、ダンジョンといえばコレなんだよなぁ。
――モンハンばりの革鎧。
あまりにも着慣れていて、自分ではまったく違和がないのだから困る。
俺は装備をインベントリーに収納すると、いつものポロシャツとジーンズ姿で座布団に腰を下ろした。
「ありましたよダンジョン! しっかり入り口も確認してきました」
「えっ、本当かい。そこの雑木林の中にかい?」
「はい、そうです。ここから歩いていける距離ですね」
「えっ、なんだって! じゃあ、ここは危なくなるのかい? 大丈夫かな~?」
にわかに慌てだした茂さん。 俺は落ち着いた表情で、
「ここのダンジョンに関しては、そこまで警戒しなくても大丈夫だとおもいます」
「そっ、そんなこと言ったって、あのダンジョンなんだろう? 今の地震も凄いけど、そのうちモンスターが中からうじゃうじゃと……」
……まあまあ、どうどう。
茂さんが落ち着くまで、しばらく時間を要した。
以前ダンジョンの話をした際、油断することがないように誇して伝えていたのがいけなかった。
だけど油断していると、本当に死んじゃうからね。
「これからは地震のある日は予め分かるようになると思いますし、ここのダンジョンにおいてはモンスターが外に出てくるような事態にはなりませんから。……たぶん」
「それはどうしてだい?」
「理由は時がきたら必ずお話ししますから」
と、この場は濁しておく。
俺としても管理者になりはしたが、カンゾーと情報交換をしながらじっくり検討してみないと、今の段階だと何とも言いようがないのだ。
何ができて何ができないか、ある程度は把握しないとな。
余計な混乱を避けるためにも、ダンジョンの管理ができることは今言うべきではないだろう。
ダンジョン・カンゾーは俺の管理下に入ったので、なんとか制御はできるとおもう。
伊達に10年、3つのダンジョンを管理してきたわけではないのだ。
ただ、地球 (日本) に合わせての微調整は必要になってくるだろう。
サブカルに慣れ親しんだ国民が無茶をやらかさないとも限らないし、宝箱の中味だって皆が喜ぶものに変えていかないとな。
今ミスリルを出したところで、まだ研究もされていないのだから。
ミスリルやオリハルコンなどを現代兵器に使ったら、とんでもない物が出来あがりそうだよなぁ。
……できることなら、平和的に使ってほしいけどね。
今回覚醒するダンジョンは日本にある3基だけとなっているが、地球全体では実際何基ぐらいのダンジョンが眠っているのだろうか。
ダンジョンで採掘できる資源を上手く研究し活用できれば、この国は世界に向けてイニシアチブを取ることも可能だろうけど……。
あっ、そうだった。
ダンジョン・カンゾーに連絡を入れないとな。
(カンゾー聞こえるか?)
[はっ、感明良好でござる主殿]
(お、おう。今のところここが俺の拠点になる)
[了、登録したでござる]
(それでカンゾー、覚醒の状況どうなんだ)
[某の起動覚醒は現在94%。モンスターの配置も16階層まで進んでいるでござる]
(では、今までの地震はどういった経緯から来てるんだ?)
[はっ、各部への伝達確でござる]
(それにしたって回数が多くないか?)
[某の存在と力を知らしめる為の……、いわゆる ”デモンストレーション” でござるな]
(ハッ、そうだったの?)
[さようでござる]
(伝達確認の方は仕方ないけど、デモンストレーションの方はもう少し控えめにしてくれると助かる。地震エネルギーもこの前の7割程で頼む。それで十分に伝わるだろうから)
[少々やり過ぎでござったか。7割も了!]
(じゃあ、また何かあったら連絡するし、異常があるときはそちらからも呼びかけてくれ)
[はっ、承知したでござる]
まあ、デモンストレーションに関しては中止してもよかったのだが、ダンジョンも生き物なのだ。押さえつけられれば、いつか爆発するかもしれないしな。
ていうか、パワーをもらっている存在を自ら減らしてしまうのはどうよ。って感じではある。
女神さまも言ってたけど、共存していくことが大事なんだよ。
昼になったので何を食べようかと迷っている。
えっ、さっき食べた牛丼? あれはおやつだいから気にしなくてOK!
すると茂さんが俺に、
「ゲンさんは寿司とかでも大丈夫?」
「寿司ですか? はい、俺もシロも問題ないですよ」
「それは良かった。じゃあ10分ほどここの留守番頼めるかい?」
茂さんはそう言い残すとスマホをポチポチしながら出ていった。
「…………」
テレビを見ながらシロと待っていると、茂さんは袋を手にぶら下げて帰ってきた。
おいおい、ほんとに10分で帰ってきたよ。
そして袋からテーブルに出されたものは、寿司の折り詰めが二つと、あとは海鮮ばらちらしだ。
おぉ――――っ!
俺とシロが感動している間に、茂さんはお茶とお吸い物をトレイに乗せて居間に運んでいる。
「さあ、、いただこうよ!」
お茶とお吸い物を受けとって小皿に刺身醤油をさす。
シロには海鮮ばらちらし。
お座りしているシロの目の前に容器の蓋をはずし置いてあげる。
揃ったところで、
「「いただきます!」」
まずはイカからパクッ!
うま――――っ! 旨いよスシ○ー。
ツンと鼻にぬけるわさびが、また良き。
シロも尻尾を振りながらハグハグ食べている。喜んでいるようだ。
いやー、旨かった。
それはそうと、あんな短い時間でまさかお寿司だとは……。
――参りました。
それで、どういう仕掛けなのか聞いてみたが、
「これだよ!」
茂さんはスマホを見せてくる。
スマホで店に注文を入れておけば、取りにいった時には出来ているそうだ。
「…………!」
ああ――――っ! これ知ってる!
見たことあるある、吉牛で。
カレー屋とかほか弁屋でもやってるサービスなんだとか。
ほほーぅ、スマホっていろいろと便利なんだねぇ。
俺とシロの二人分だから、結構なお値段になったはず。
食べ終わったあとに料金を払おうとしたのだが……、茂さんはおごりだからといって受け取らない。
(う~ん仕方ないか)
「今回はご馳走になりました」
「うんうん、お粗末さまでした」
まあ、そのうちに何かのかたちで返せばいいだろう。
ここはそう思うことにして、俺は次の話をはじめた。
「茂さんはどんな得物がいいですかね?」
「え、えもの? 猪とかの?」
――なるほど通じない。
まあ、平和な日本だからね。
「いえいえ武器のことですよ。ダンジョンとかで戦う際に何を使うかです。銃はダメでしょうから」
「ははは、そっちか。私も戦えた方がいいのかい」
「もちろんです。特にこの場所はダンジョンのすぐ側です。魔獣が出没することも頭に入れておくべきでしょう」
俺がそうキッパリ答えると、茂さんは また悩みだした。
これだけ人間が密集しているのだ。
ダンジョンから排出される魔素の量も半端じゃないだろう。
魔素が濃くなれば、かならず魔獣が出てくるようになる。
最初の魔獣が出現するまでに、そう時間はかからないだろう。