テラーノベル
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毎日おいしいものを食べて、毎日綺麗なベッドで眠る。
幸せだ、すごく。
「明日は何をしようかな」
考えれば考えるほどわくわくする。
ハッシュドポテトでも作ろうかな、お散歩しようかな。
あ、お買い物もいいかも。楽しみだな、楽しみ。
「連絡返すの遅かったね、どうしたの?」
あの子がすき。たくさん尽くしてあげたい。
「なんでもないよ」
どうして隠すの?少し不安になる。
「そっか」
もっと問い詰めたいけど、嫌われたくないから言わない。
あの子が好きだけど、あの子といるとちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ辛いな。
「○○って人は、恋人とたくさんデートして、友達にも恵まれてる…羨ましいな」
インターネットに映される情報はいつも幸せに満たされていた。
(それに比べて僕たちは、どうなんだろう?)
あの子が好きだけど、あの子は僕を好きなのかな?
「愛が欲しいな」
たったそれだけなのに。
「あの子のことはもう忘れよう、友達と遊ぼう」
あの子と別れてから、僕は友達とよく遊ぶようになった。
「ごめんね、○○と先に予定できちゃって」
「そっか、わかった」
僕とは少しだけ遊んで、あとはほかの友達に時間を費やすの?
そっか、僕は特別じゃないのか。そりゃそうだよね、あの子と付き合ってた時は友達と全然遊ばなかったもん。
「さびしい」
あの子が居なくなったから生きがいがない。友達ももう連絡を取らなくなったし。
ゲームだって飽きた、ぜんぶが面倒。
「僕、貴方と過ごした時間が1番幸せだったのに。」
不純なことだって、貴方が初めてだったんだよ。
(きもちわるい)
なんであんなことをしたんだろう。
僕は汚い。汚らわしい。
「愛されたい」
綺麗で優しい太陽のような子に、愛されたい。
僕の穢れを綺麗に消してくれるような子に。
手首を切ったら、みんなに嫌われた。なんでそんなことをするのって、気持ち悪いって。
(なんでかなんて、僕も分からないよ)
モヤモヤした、ぐちゃぐちゃな感情を忘れたいから?ううん、そんなのただの言い訳。ただ憧れてしただけ。
「辛いな」
出した声は小さく震えていた。
「一緒に死んでくれる?」
「うん、死ねるよ」
新しい恋人の子は、僕を愛してくれた。
ちょっと重いけど、別にいい。そのぐらいがちょうどいい。
やっと望んだ恋人を手に入れられたよ、幸せになるよね?
(でも、これから結婚するとして…僕たちはずっとこんな感じでいいの?)
共依存のまま死ぬの?2人だけで?
それはちょっと怖い。この人とも上手く行きそうにない。
(上手く行きたくないのかも)
僕は何を望んでるの?
「大丈夫?」
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、■■■■■だった。
運命。
貴方を見た瞬間、確信したよ。
僕たちは運命の相手なんだ。
「付き合おう」
すぐ仲良くなって交際を始めた。
貴方の笑顔が好き。永遠に一緒にいたいな。
「ハンバーガー好きなの?」
「うん!」
「奢ってあげる、沢山食べてね」
「ほんと?ありがとう!」
ああ、貴方は僕の天使だよ。
太陽みたいに暖かくて優しい。
僕の愛。僕だけの愛…。
貴方がそばにいる間は、嫌なことも辛いことも全部忘れられる気がしたんだ。
貴方だけは絶対に汚さない、綺麗なままでいてね。ずっと、永遠に。
ショートケーキみたいなものだよ、白くて綺麗で、いちごの赤が似合う。
君はいつも黒い服を着ているけど、赤が似合うのはショートケーキと一緒だね。
でも、ショートケーキはいつもフォークに刺されて、形を崩されながら食べられていく。
(そのフォークが、僕なんだよね?)
彼の全てを守るのも、壊すのも全部僕であってほしい。
(ああ…どうして)
綺麗であって欲しいのに。心のどこかでは壊してしまいたい気持ちがある。
「なんで?」
貴方は僕から姿を消した。
僕を見捨てた?もう終わりなの?
「僕を置いて行かないで、幸せにならないで…お願いだから…」
永遠に苦しんで、僕だけを救いにして。
フォークがなければ、ショートケーキはただ腐っていくだけだよ。
誰もあなたを見ない、愛さない。
(そんなの我慢できないでしょ、貴方は繊細だから)
僕は理解できるよ、貴方のこと。
「戻ってきてね、絶対に」
固く握った両手は少しだけアザができていた。
帰ってこない。ずっと待ってるのに。
何度この景色を見た?何度同じことをした?
僕は彼に会いたい。
(彼は僕が嫌い?)
どうして?そんなのダメだよ。
「愛されたいのに」
どうして愛されないの?どうして上手くいかないの?
頭を抱えてしゃがみこむと、そばにいたみんなが駆け寄ってくれた。
心配の声が聞こえる。ありがとう、それだけでも心が軽くなる。
(早く戻ってきて、僕はこんなに苦しんでるんだから)
僕の愛は僕の手で終わらせなきゃ。
最初から最後まで、僕の愛であってほしいから。
「■■■■■…?」
変わり果てた君に、僕はどんな顔をしただろうか?
疲労で感覚がない顔はきっと笑っていた。
僕の愛が、戻ってきたのだから!
ああ…神様。僕を救ってくださりありがとうございます!
僕はもう二度と間違えない。
「大好きだよ…■■■■■…」
愛おしい君を抱きしめる。
大きくなった身体、角やしっぽの生えた容姿。
「それでも愛してる…ふふ、君の全てを受け入れられるのは僕だけなんだよ〜…」
ああそうだ…僕たちは運命で繋がれている。
運命の糸なんていう脆いものじゃない、運命の鎖で硬く繋がれている。
離れられない、離れたくない。そうだよね?
この傷も想いも汚れも誓いも、全て君と僕だけの存在。
二人で歩けば、道が自然とバージンロードへと変化していく。
明るい空と鐘の音で彩られる世界に、君はどう思うかな?
結婚なんてまだ生ぬるいものだ、もっと深く深く繋がれるようなものが欲しい。
でも贅沢なんてしちゃダメだよね。君が満足するなら、僕はこのままでいいよ。
ヴェールに包まれた君と僕は見つめ合う。
これが幻覚だってわかっていても、それでも幸せを感じてしまう。
やっと手に入った真実の愛、これ以上ないほどの幸福!!
花の香りが纏う君に、僕は最期の誓いを交わした。
コメント
2件
明るい系かと思ったら見事に騙されました!!ショートケーキの表現すごい好き…