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第一話:帰ってきたモーティ
14歳のロッツ・スミスは、いつものように自室の机で物理の宿題と格闘していた。時間は午後6時半。外では小雨が降りはじめ、曇った窓ガラスにはぼんやりとした街灯の明かりが滲んでいた。
彼は父親を知らない。母親であるサマーからは、「モーティは大事な任務で宇宙を救いに行った」とだけ聞かされて育った。それ以上の話をしようとすると、サマーはいつも視線をそらし、話題を変えた。
ロッツはどこかで、その「任務」とやらがただの逃げ口上だと疑っていた。
その日も、彼はいつものように思考の海に沈んでいた。だが突然、部屋の中央に青白い光が集まり、電気的なバチバチという音が鳴り響いた。
「な、なんだよこれ!?」ロッツが後ずさると、空間に亀裂が走り、淡く光るゲートが出現した。
そこから現れたのは、一人の青年だった。白髪交じりのボサボサ頭に、特徴的な水色の上着、ヨレた茶色のズボン。見慣れないが、どこかで見たような顔立ち。
「よぉ、ロッツ……元気か?オレはモーティ。君の父親だ……けど、過去から来たモーティって言ったほうが正確かな」
「……え?」
ロッツの脳が理解を拒否する中、青年――モーティは勝手に部屋に上がり込んできた。埃を払いながら机の上の教科書を手に取り、「へぇ、ちゃんと勉強してんじゃん。リックなら鼻で笑ってただろうな」と呟く。
「待って、どういうこと? なんで今の父さんが若いまま?なんでゲートから?ていうか……なんで今更!?」
モーティは少し寂しそうに微笑んだ。「君に会うのが……怖かったんだよ。でも、どうしても頼みたいことがある。君と一緒に“アーカイヴ・ゼロ”を探したい」
「アーカイヴ・ゼロ?なにそれ?」
「説明すると長いんだけど……ひとことで言えば、リックが最期に隠した宇宙の最終鍵さ。あれがないと……未来がやばい」
ロッツは混乱と怒りの狭間で揺れていた。父親という存在を知らずに育った彼にとって、突然「冒険に出よう」と言われても、即答できるわけがない。
「ふざけないでよ!……なんで今さら戻ってきて、そんなSFみたいな話でオレを巻き込もうとしてるの!」
「ごめん。でも、これは君じゃなきゃダメなんだ」
言葉では拒絶していたが、ロッツの中で何かが動いていた。いつも感じていた「欠落」、知識だけでは埋められない虚無。それが、このゲートと共に、形を得た気がした。
「……行かないよ」
「なら、強制送還だな!」
「え?」
パシッとモーティが手元のリモコンを押すと、床の下から転送装置が作動し、ロッツの体が宙に浮いた。まるで漫画のように、彼は無理やりゲートの中に吸い込まれていった。
***
ゲートの先は、どこかの荒廃した未来都市の廃墟だった。空は紫がかり、空気は乾いている。目の前には、奇妙な機械生命体がうごめいていた。
「ようこそ、ロッツ。これから君は、俺の相棒になるんだ。じゃないと、マジで全宇宙が終わる」
「……なんで僕が……」
「それはね……キミのDNAが、最後のリックの鍵になってるからさ」
「はああああああああ!?」
こうして、ロッツと“過去のモーティ”の奇妙な冒険が始まった。リックのいない宇宙、残された遺産、そして失われた父と子の時間。そのすべてを巻き込んで。