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これは、君との短い物語。
3ヵ月前のこと。
僕は星空の下、海辺を歩いていた。
独りで海に映った星を眺めていた。
そんな時、足音が近ずいてきた。
いつもは誰も来ない静かな場所なのに。
僕は怖く、不思議に思い、振り返ってみた。
そこには、白いワンピースを着た、儚い雰囲気の女の子がこちらを見ていた。
「君は、誰?」
僕はその女の子に問いかけてみた。
女の子は微笑み、こう答えた。
「私はね、つきって言うの。」
「つき?」
「そう。つき。君はなんて言うの?」
つきという女の子は優しい笑顔で問いかけてきた。
「僕はなおって言う。」
「なお。いい名前だね。」
「ありがとう。」
つきは終始笑顔で僕に話しかけてくれた。
「私、そろそろ帰らないと怒られちゃうから帰るね。」
「あっ、うん。気をつけて帰ってね。」
「うん。またね。」
「またね。」
つきは背を向け、街の方向に歩いていった。
僕はつきの姿が見えなくなるまで、見届けた。
そしてまた、独りで海を見始めた。
次の日。
僕はいつものように、海辺を歩いていた。
今日も独り、海に映る星を眺めていた。
歩くのが疲れたので、木に座り、また海を眺めた。
星空の下で波の音を聞き、海を眺め、時間だけが過ぎていった。
家の灯りも消え、星の灯りだけが僕のことを照らしていた。
そして、今日はつきが現れなかった。
1週間後。
僕はいつものように、海辺を歩いていた。
独りで雨が降る中、海を眺めていた。
今日は星がない。
辺りに灯りもない。
真っ暗の中、独りポツンと立っていた。
そんな時、雨の音の中に、足音が混じっているのに気づいた。
振り向いて見ると、白い傘をさしたつきがいた。
つきはあの時と同じ笑顔で話しかけてきた。
「また会ったね。」
「そうだね。久しぶり。」
「いつも歩いてるの?」
「うん。いつもここに来て、海を見てる。」
「そっか。今日みたいな日も?」
「雨が降ってても、吹雪いてても、いつも来てる。」
そう言うと、つきは笑ってこう言った。
「さすがにやめた方がいいと思うよ?風邪ひいちゃう。」
「引かないから大丈夫だよ。つきも天気悪い日は来ない方がいいよ?」
「なおくんに言われてもなー。説得力無さすぎるでしょ?」
つきは笑いながらそう言った。
つきの笑顔はこの暗闇の中の唯一の灯りみたいに、辺りを照らしてくれる。
僕はそんなつきの笑顔を好きになった。
少し2人で海辺を歩い後、つきは言った。
「そろそろ帰るね?」
「うん。気をつけてね。」
「ありがとう。なおくんも早めに帰るんだよ」
「わかった。またね。」
「うん。またね。」
つきは街の方向に歩いて行った。
僕はまた、つきの姿が見えなくなるまで見届けた。
5日後。
僕はいつものように、海辺を歩いていた。
今日も独り、海に映る満月の月を眺めていた。
また、足音が聞こえてきた。
これが習慣化してきて、僕はこの時を楽しみにいつも過ごしていた。
そして、僕は振り返った。
そこには、初めて会った時と同じ白いワンピースを着た、つきが立っていた。
けれどいつもとは違い、つきは悲しい顔をしていた。
僕は不思議に思い、つきに聞いてみた。
「いつもと違う気がするけど、どうした?大丈夫?」
つきは俯いた。
けれど、少し経ったら意を決したように前を向き、僕の質問に答えた。
「私実は、宇宙にある月から来たの。」
僕は理解が追いつかなかった。
「月って、あの月?」
僕は空にある満月の月を指し、聞いた。
つきは頷いた。
「ある時、目が覚めたらこの世界に来ていたの。どうしてここに来たのかは分からないけど、親から地球に行ってしまったら、満月の夜にはここに戻って来れるって教えてもらっていたの。」
そう、つきは説明した。
「そう、だったんだ。」
「うん。だから今日、月に戻ると思う。」
「そっか。だから今日ここに来たの?」
「そう。最後になおくんに会っときたいなと思って。」
つきは今にも泣きそうな顔をしていた。
「ありがとう。僕も。」
僕も泣きそうになった。
はじめてこんなにも好きになったのに。
もう会えなくなってしまうの?
「なおくん。」
「、なに?」
「はじめてここに来た時、はじめてなおくんに会った時、なおくんを好きになった。はじめて会った私に優しく話してくれて、とっても嬉しかった。ありがとう。」
つきは泣きながらも笑顔で僕に伝えてくれた。
僕も伝えなければ。
「こちらこそありがとう。僕もつきに会った時、つきの優しい笑顔に惹かれて、好きになった。」
「ほんと?」
「うん。好きだよ。」
「ありがとう。私も好きだよ。」
お互いとても泣いていた。
けれど、とても幸せで笑顔だった。
そんな時、つきは光に包まれた。
「あっ、もう月に戻らなきゃいけないみたい。」
「えっ?」
僕はいきなりのことで戸惑った。
「ごめんね。なおくんに出会えてよかった。なおくんを好きになれてよかった。短い間だったけど、ありがとう。月に戻っても忘れないよ。大好きだよ。」
「僕もつきに出会えてよかった。この場所でつきに出会えて、好きになれてよかった。短い間だったけど、ありがとう。僕も絶対忘れないよ。大好き。」
光が強くなってきた。
「なおくん!大好きだよ!またね!」
「うん、!つき大好き!また会おうね!」
更に光が強くなった。
少ししたら、光が消えた。
そして、つきの姿も消えた。
これは、僕とつきの短い恋物語。