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「あの夏が飽禾ロする」のrdo視点です
本編をお読みになってから読むことをお勧めします。
・勝手な解釈で話を進めています。
・もはや元の曲ではありません。
・見方によっては、曲の個人的な解釈になります。
・突然始まって突然終わります。
・本編ではカットされていたセリフもあります。
・“自死”の描写が含まれています。絶対に真似しないでください。
・長いです。
・通報もやめてください。
以上のことに注意してお読みください。
櫂(かい)=オール。舟を動かす道具のこと。
「なあ、お前さ、自分が強いとでも思ってるわけ?」
「え」
「いやだからさぁ、うざいんだよ、お前」
そんな言葉から始まった嫌がらせは、どんどんとエスカレートしていった。
「これ買ってこい」
「おれのサンドバッグになれよ」
「手柄だけよこせ」
「役立たず」
「きっも、死ねばいいのに」
「こんなやつと仲良くする奴らみんなクズだな」
やっぱり許せなかった。
感情に任せて突き出した腕は、いつの間にか殺人犯の腕になった。
憎いアイツが頭から血を流しているのを見て、ここには居られないと思った。
転げるようにそこを離れて、警察署を出た。
雨が降るのもお構いなしに走って、走って、途中で仮面も脱ぎ捨てた。泣きながら走っても、思い浮かぶのはみんなの笑顔だった。
おれを呼ぶ声が聞こえた気がした。実際には誰もいないけれど。
もう、戻れない。
遠くに行かないと、
逃げないと、
街の住民たちに合わなかったのは幸いだった。普段は真夜中でも混沌としているはずなのに、この日は雨の音がするばかりだった。
誰も居ない街を歩いた。
涙も枯れるほど泣いて、ようやく周りが明るくなってきていることに気づいた。
まだ雲が垂れ込めているが、雨も小降りになった。雲がぼんやりと明るくなっているところが太陽だとすると、今は朝の6時と言ったところだろうか。
そんな時、目の前にふらりと人影が現れた。
wesk-だった。
思わず口から言葉が溢れて、止まらなくなった。
おれがこの人に何を求めているのかもわからずに。
いや、期待していたのかもしれない。
「昨日人を殺したんだ」
おれと同じようにやつれて見える貴方は、目を見開いて話を聞いていた。
「ーどっか遠いとこで死んでくるよ」
そう締めくくったら、貴方は言った。
「じゃあ、私も連れてって」
また後で落ち合う場所を決めて、荷物をまとめるために貴方とは一旦別行動をする。
と言ってもおれには準備をするものがないので、仕方なくみんなに手紙を書くことにしよう。
近くの店で適当に便箋とペンを選んで買い、カフェに入る。
カフェのトイレでびしょびしょになってしまった服を手持ちの着替えバッグで着替えてから、手紙を書き始めた。
拝啓、みんなへ
今までありがとう
おれは殺人犯になっちゃって、もうここにはいられないから、
探さないで
rdo
なんだか変な文章になってしまったが、まあ良いだろう。
どうせおれにはもう関係ないことだ。
警察署宛に住所を書いて、ポストに投函する。
そろそろ時間だ、待ち合わせの場所に向かった。
おれが待ち合わせ場所についてすぐ、リュックを担いだ貴方も到着した。
2人並んで歩き出し、貴方が話す。
「rdoくん、暑くない?体調は悪くない?
ねえ、どこに行きたい?」
貴方がおれを気にかけてくれることがとても嬉しかった。
「大丈夫だよ、wesっさん
…おれね、海に行きたい」
「うん、行こう。逃げよう、この狭い世界から、全部全部捨てて」
「…ありがとう」
貴方に肯定してもらって、ようやくあの夜から抜け出せそうだ。
これから、貴方とたった2人きりの逃避行が、
地獄への旅が、始まる。
おれが海に行きたいといったから、貴方は海岸に連れてきてくれた。
昨日の夜とは打って変わって、空は雲ひとつない快晴だ。
「海の遠い遠い先、この街も、おれが駆け廻ってたこの空さえも、見えないところに行きたい」
「もちろんいいよ、じゃあまずは舟を見つけないと、だな」
「うん…どっかにあると思う?」
「なかったら作ればいいよ」
「え、wesっさん作れるの?」
「…なんとかなる」
しばらく海岸を歩くと、なんとか古い小舟を見つけることができた。
本当に乗れるんだろうか、と見ていると貴方はその舟を海に押し出して乗った。
「大丈夫?沈まない?」
「んーちょっと待って」
そういうと、突然貴方はジャンプし始めた。
舟の強度を調べているのだろうが、こちらからすればただはしゃいでいるように見えるから、笑ってしまう。
そういえば、貴方はなぜおれに連いてきたのだろう。
他愛のない会話を交わしつつ考える。
貴方は面白いし、たくさんの人に慕われているはず。
手を支えられて舟に乗ったあと、櫂を動かす貴方にストレートに聞いてみる。
「wesっさん、なんでおれについてきたんですか?」
「ん?」
「あ、えっと、ついてきてほしくなかったわけじゃなくて、その、気になっただけなんで…言いたくなかったら言わなくてもいいので、」
「ふふ、それはわかってるよ
…うーん、私が最低な人だったから、かな」
「そ、うなんですか…」
「あはは、だいじょーぶ私にはもう君がいるから。早く沖に行こう」
「!そうですね」
貴方はあまり多くを語ってくれなかった。
でも貴方が何かで思い悩んでいることはよくわかった。
もしあの時、貴方に会えてなかったら、きっとおれは暗い部屋の中で首を吊っていたんじゃないかと思う。
誰にも見つけてもらえないと思ってた。
貴方が人殺しになったおれを見つけて、助けてくれた。
そのおかげで、おれは今ここにいる。
貴方にとっても同じだといいな、と思う。
一緒に遠くへ行きたい。
でも、やっぱり貴方には、生き、
そこまで考えたところで、おれのスマホのニュースアプリが通知を届けた。
「警察官、階段にて事故死か」
〇月〇日、警察署内の階段で、警察官の遺体が見つかった。署は事故と見て対応を進めており、階段の安全性の更なる改善が…
このニュースの話をすると、貴方はこう言った。
「………rdoくん、今なら、帰れるよ。事故のままなら、警察に戻れる」
貴方も、おれに生きていてほしいなんて思ってるのかな。
「ううん、いいんだ。おれ、手紙も残してきちゃったし。そのうちバレる」
「そうか」
なにがなんでも、おれの意思は変わらない。
そう、たとえ貴方が止めても。
おれのスマホが着信音を鳴らし始めた。
nrsだった。
通話を切るのと同時にtburからも電話が来る。
ふと前を見ると、貴方も同じ状況になったらしく、櫂を動かす手を止め、スマホを触っている。
「ね、それ海に捨てちゃおうよ」
「いいね」
「「せーの」」
おれたちとみんなとの、唯一の連絡手段は弧を描いて海に吸い込まれていった。
再び貴方は櫂を握る。
「あ、いいよ今度はおれがする」
「だーめ、私がしたいの。rdoくんはゆっくりしてて」
「いやいや悪いよ」
「やぁだー私がするのー!」
「ねぇおれより年上の人が駄々こねないでよ」
舟の上に二人分の笑い声が浮かんで、消えていく。
幸せだと、感じた。
海鳥がふわりと隣を掠めて飛び去っていく。
「私も鳥になれたらなぁ」
貴方は寂しそうに呟いて、その姿を見送った。
街を出てから8日経った。
貴方とたくさんの他愛もない話をした。
楽しかった。
今やあの街は全く見えない。
思い出すこともしない。
食料が尽きて、やや霞んだ視界の中、街があった方向の空にぽつんと黒い点が浮かぶのを見た。
警察のへリ…か?
やがて予想は確信に変わった。
どうやら最後の時が来たようだ。
近づいてくる黒い点を指差し、貴方に声をかけた。
貴方も背後を振り向いて確認する。
おれは立ち上がった。
ずっと前から決めていたことだ。
貴方は生きていて欲しいから。
おれが動いた気配を感じ取ったのだろう、貴方がこちらに視線を戻した。
おれは話し始める。
「wesっさん、貴方がいたから、おれはここまで来れた、本当にありがとう」
「だから、だからね」
「もういいよ」
「死ぬのは、おれだけでいい」
意外にも貴方はなにも言わなかった。
言えなかった、のほうが正しいのだろうか。
ゆっくりとした動作でカバンからナイフを取り出す。
サングラスをかけていないから、貴方の表情が歪んでいく様子がよくわかった。
眉間に皺を寄せ、目を細めて、歯を食いしばっている。
苦しそうな表情だ。
手の中の刃物を首に当て動かすと、眼下に鮮やかに赤が広がった。
意外と簡単だな。
ごめんね。愛してる。
言葉にできなかった想いを心の中でだけ呟く。
空を仰ぎ見ると、どこまでも青が広がっていた。
おれの色だ。
頭から海に落ちる。
もう、冷たいとか痛いとかの感触はなかった。
おれの口から出た泡や舟や波が織りなす、光と影を見る。
美しい、と思った。
ぐわんと視界が揺れたのを最後に、おれは意識を手放した。
これは番外編みたいな物なので、あとがきはここに。
まずは、お疲れ様でした。約3500文字です。
私の妄想を言語化した物です。
こんなお話に付き合ってくださり、ありがとうございました。
今もなお、
続きで、rdyがrdoになりすます話とかもいいなぁとか考えています。
妄想は、無限です。
かなり勝手に設定を加えてしまって、申し訳ないと思っています。(後悔はしてない)
ニュースに事故死のことなんて書かれないだろ、とか思っても、気にしないでください。
ちなみに、最後に視界が揺れたのは、強い潮の流れに流されてしまったからです。
なので警察たちがいくら探しても見つからなかった、というわけです。
こういう細かい設定も文章中に盛り込みたかったのですが、私の文章力が未熟でして…
今後も、小説の別視点を上げるかもしれません。
別視点集は、普段の土曜日投稿とは別で、不定期に投稿します。
よろしくお願いします。
別視点以外も稀に混ざってることがあるかもしれません。
とにかく、不定期です。
タイトルの数字は元々の話と対応しています。(最初に言うべき説明でしたね、すみません、、)
では、また