テラーノベル
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澪は階段を一段、また一段と降りていく。
足音だけが、静かな空間に響く。
どれくらい歩いただろう。
五分。
十分。
それとも、一時間。
時間の感覚はとうに失われていた。
「……まだ着かないの?」
前を歩く青年は振り返らない。
「ここでは時間も距離も意味を持たない。」
「君が進みたいと思う限り、道は続く。」
その言葉に、澪は眉をひそめた。
「……変なの。」
青年は小さく笑う。
「ここは、そういう場所だから。」
やがて階段は終わった。
目の前に広がっていたのは、夜空だった。
天井なんてない。
どこまでも続く星空の下に、無数の扉が浮かんでいる。
木製の扉。
錆びた鉄の扉。
真っ白な扉。
焼け焦げた黒い扉。
数え切れないほどの扉が、宙に静かに並んでいた。
「……何、これ。」
澪は思わず息をのむ。
「記憶の回廊。」
青年は一つの扉にそっと触れた。
「一枚の扉が、一人の人生。」
「その人が笑った日も、泣いた日も、後悔した日も……すべて、この中に眠っている。」
澪は震える声で尋ねる。
「じゃあ……お兄ちゃんのも?」
青年はゆっくり頷いた。
「ある。」
その一言だけで、澪の胸は強く締めつけられた。
「案内して!」
思わず青年の腕を掴む。
だが、青年は静かに首を横に振った。
「まだだ。」
「どうして!?」
「君は一つ、大きな勘違いをしている。」
澪の表情が固まる。
青年の金色の瞳が、まっすぐ澪を見つめた。
「君は、『兄は死んだ』と思っている。」
「……え?」
「だが、その記憶は本当に君自身のものかな?」
その瞬間。
澪の頭に、鋭い痛みが走った。
「っ……!」
見たことのない景色。
誰かの叫び声。
燃え上がる炎。
そして――
「逃げろ、澪!!」
兄の声。
その隣に立つ、知らない少女。
いや。
知らないはずなのに。
その少女の顔を見た瞬間、澪は思わず自分の口を押さえた。
「……私?」
炎の中にいたのは、幼い頃の自分だった。
しかし、その記憶は――どこにもないはずだった。
青年は静かに目を閉じる。
「さあ。」
「君は、本当に失ったものを思い出せるかな。」
そう言うと、彼は一番奥にある、ひときわ古びた木の扉へ歩き出した。
その扉には、名前が刻まれていなかった。
まるで――
まだ誰の記憶なのか、決まっていないかのように。
#多分みんなからしたらクソどうでもいい事
ギリギリルルル
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コメント
3件
おお、第2話で一気に深い話になってきたな…!「記憶の回廊」って設定、めっちゃ好みだわ。無数の扉がそれぞれ誰かの人生ってのがもうロマンしかない。ラストの「名も無き扉」が誰のものか気になりすぎるし、澪の記憶が本当に自分のものかって問いかけもゾクッとした。続きが待ちきれん🔥