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バキッドカッゴキッ
鈍い音が耳に強く響く。
音が1つまた1つ増える度に体の痛みが増し、視界は薄くなる。
どうしてこんな目に合ってしまったのだろうか。
最後の日がこんなのだなんて最悪だ。
-数分前-
私は男性恐怖症だ。
同居していた2つ年上の彼氏、、いや別れを切り出したし、了承ももらってるから、、元カレか。にDVを受けていたところを逃げ出してきた。
男性恐怖症になったのも元カレのせいだ。
まぁ別れるためには多少の暴力も受けたが、、。
両親だって事故で死んだ。
もうどうでもいい。
私は今日死ぬ。この世界から逃げ出す。
私に生きている価値などない。
日々辛くてしていたリスカで傷だらけの腕も今日でさよなら。
そう決めている。
電車でどこか遠い所まで行って1人静かに死にたい。
何時だろうと時計を確認する。
18:35
まだ電車には間に合うな。
逃げ出してきたここは、都会なもんで人混みに呑まれそうになる。
辺りは若い男性や女性で群がっていて、通り行く男性や、チャラい雰囲気に頭が痛くなる。
○○「人の少ない道を通りたい、。」
人混みの中をくぐりやっと人気のない道へと出る。
○○「路地裏、か、、、。まぁ人が多いよりはいいか。」
そう思い足を前へと進める。
人気のない路地裏に私の足音が響く。
しばらく歩くと前から人影がちらりと見えた。
○○(この道を通るだなんて、やっぱみんな考えることは一緒なの
かなぁ)
だが前へ進むと見えてきたのはいかにもチャラい見た目をした数人の男性だった。
怖いなぁと思いつつも前へとさっきよりも重く感じる足を進める。
何も気にしないようにと恐怖の感情を押し殺し、下を向き歩く。
だが、それが間違いだと気づくのは数秒後だった。
男1「おねーさん!今暇?」
男2「俺達と飲まない?」
話しかけられてしまった。今すぐ逃げ出したい。
さっきすぐにでも逃げればよかったと後悔する。
○○「いや、、向かう場所があるので、、」
男3「じゃあちょっとだけ付き合ってよ!」
○○「い、いや、、大丈夫です、、」
怖い。早く帰らせてほしい。
男2「なぁなぁ、聞いてるー?」
こんなこと自分に起きるだなんて思ってもいなかった。
○○「うっ、ゲホッゴホッ」
私はあまりの気持ち悪さと恐怖に駆られ、吐き気に襲われた。
男1「なに?俺らのこと嫌いなの?チッ」
さっき喋りかけてきたときよりも低くなった声で男性はそう言い、舌打ちをする。
○○「す、すみませっ、、、。」
男3「じゃあ俺らと飲んでよ。」
あ、これやばい。そう思った。
○○「いや、でも、、」
男2「めんどくせーなぁ!とっとと着いてこりゃいーんだよ!」
ガシッ
腕を捕まれる。
元カレにつけられた痣とリスカの傷が痛む。
咄嗟に抵抗する。
○○「い゛っ、、いやっ、、!やめてください、!!!」
パシッと腕をはらう。
男2「あ゛?なにすんだよ!」
あぁこれ終わった。
そう思った次の瞬間
ガンッ
○○「あ゛っ゛、、」
一人の男が私を蹴る。
じんじんと痛む場所に声を上げていると、もう二人の男達も便乗してきた。
男1「なになにwおもしろそーじゃんw俺もやるーw」
男3「うっわお前ないわーwま、俺もやるけどw」
ガンッドンバコッ
そして今に至る。数分間ぶっ続けで殴られているため、流石に私の身体も限界だ。
グワン
視界が一瞬真っ白になり、暗い闇へと落とされた。
そのまま気を失っていれば、楽だった。
男2「なにへばってんだよwまだまだだぞーw」
ガンッバキッバシッドカ
さっきよりも強く殴られ目が覚める。
○○「あがっ、、もうやめてくださ、ポロポロポロ」
恐怖と痛みから滲む涙は止めれそうにない。
これだから男性は嫌いだ。
都合のいい時だけ女を利用し、気に入らない時は力で対抗。
路地裏だから助けだなんて来ない。
無理にでも人混みの中帰ればよかった。
そう思っていた時だった。
??「なにやってんだてめぇら。」
誰だろうと思いわずかに目を開く。
ぼやけてはっきりへ見えなかった。
分かったことは金髪の方ということ。
そして男性だということ。
ガンッドカッバコッ
男2「カハッ、、、」
男1「うがっ、ゲホッ」
男3「う゛、、ケホッゴホッ」
鈍い音が響いたあと男性の呻き声が耳に入る。
??「とっとと散れや」
ダッダッダッダ
人が駆けていく音とともに、視界はだんだんとはっきり見えるようになる。
辺りを見渡した時、さっきの男性達はいなかった。
だが倒れている私の前に一人の男性。
??「君、大丈夫?」
優しい声だった。
だが、差し伸ばされる手は私にとって恐怖に感じた。
○○「やっ、、ごめんなさ、、ポロポロ」
??「わ、、ごめんね。大丈夫?家まで送ろうか?」
○○「だ、大丈夫で、す。あ、りがとございまっ、」
涙で突っ掛かってうまく話せない。
傷だらけの身体はまだ痛むばかりだ。
グワン
また、さっきと同じだ。視界が真っ白になって、、、
【??視点】
今日は友達と買い物をしていた。
早く家に帰りたかったため、近道である路地裏へと足を運ぶ。
女性の泣くような声と荒げた男の声、そして蹴るような音が聞こえたのはしばらく歩いてからだった。
暴力を受けているのではないかと走って向かうとそこには、案の定倒れている女性を殴る男達がいた。
助けようと言葉が出た。
??「なにやってんだてめぇら。」
驚いたようにこっちを見る男と、怯えるような泣いた顔で俯く女性を見て今何をしてあげるべきかはすぐ頭に浮かぶ。
ガンッドカッバコッ
男達を殴り
??「とっとと散れや」
と圧力をかけるように言葉を告げる。
逃げた男達を見た後何をすべきか。もちろん女性の心配。
??「君、大丈夫?」
声をかけ立ち上がれるようにと手を差し伸ばす。
だが、その俺の手を見て女性は怯えるように俺に謝った。
あれだけ酷いことをされていたら怯えるのも無理はないか、。
??「わ、、ごめんね。大丈夫?家まで送ろうか?」
「大丈夫です」と涙で突っ掛かりなりながらも、お礼を言う彼女を見てどう見ても大丈夫じゃないだろと思う。
次の瞬間だった。
一瞬ふらついた彼女が倒れたのは
??「わっ!」
??「あっぶな、、セーフ。」
彼女を受け止めたはいいもののどうするべきかがわからない。
浮かんできたのは俺の家へ連れて帰るということ。
というかそれしかない。
彼女をお姫様抱っこの状態にしながら家に帰る。
痩せている方だなぁとは思っていたけれど、あまりの軽さにびっくりした。
??「早くベッドで寝かせてあげよう。」
【○○視点】
目が覚めると私はベッドにいた。
咄嗟に起き上がり辺りを見渡す。
??「あ、起きたんだね。」
さっき助けてくれた男性が声をかけてくれた。
でも、浮かぶのはやはり恐怖だった。
○○「あ、の、、ここは、ど、こで、ポロ」
今日の出来事もあって更に男性への恐怖心が高まり、自然と涙がこぼれる。
??「ここは俺の家だよ。あの後君が倒れてどうしようか考えたんだけど方法がこれしかなくて、、、。ごめんね。怖かったよね。」
助けてくれたのに謝る姿を見て申し訳なく思う。
○○「だ、大、丈夫です、。あの、お、お名前、は、。」
??「あぁ、まだ言ってなかったね。俺の名前は 乾 青宗」
○○「乾さん、何か、ら何まで、す、みません、。グスッ」
青宗「イヌピーでいいよ。みんなからはそう呼ばれてるし(笑)君は?」
○○「私、は柏木○○、です。」
青宗「素敵な名前だね。」
優しい笑顔で微笑む彼への恐怖心は、助けてくれたご恩もあって少しずつなくなっていった。
○○「イヌピーさん、可愛いあだ名ですね(笑)」
青宗「でしょ?ありがとう(笑)」
青宗「それでなんだけど、聞かせてほしいな。なにがあったのか。無理にとは言わない。話せるところまで。」
そう言われて私はどこまでを話せばいいのかを考える。
嫌われてしまうような話はしたくない。
けれど、この苦しさを誰かに聞いてほしい。
色んな感情が入り混じってまた涙がこぼれる。
○○「え、っと、、ポロポロ」
青宗「大丈夫。俺は味方だよ。なにがあっても。約束するよ。」
○○「っ、、!ポロポロポロ」
その一言で救われた気がした。
この人になら話しても、そう思えた。
そして私は、
自分が男性恐怖症であること。元カレからDVを受けていたこと。両親は死んで居ないこと。リスカをしていること。死のうと思っていたこと。その時に殴られたこと。
ありのままの自分を全て話した。
話している途中イヌピーさんのすすり泣く声が所々聞こえた。
話し終わった後
青宗「少し、ごめんね。」
そう言われハグをされた。
少しだけ恐怖心はあった。
でも、それよりも。
傷が痛まないように優しくしてくれるハグと
青宗「辛かったね。よく頑張ったよ。○○は強いよ。偉いよ。」
暖かいその気持ちに私はただただ涙が溢れた。
泣き止んだ私はそろそろ帰ろうと思った。迷惑になるし。
○○「あの、私そろそろ帰ります。ありがとうございました。」
イヌピーさんといれた時間は男性相手なのに安心する時間だった。
この場所を離れるのも寂しいと思っていたとき
青宗「帰る場所、あるの?」
○○「え?」
そうだ。同居していた元カレの場所には帰れない。実家だってない。
○○「えっ、と、ホテルに泊まります!」
そう言う私にイヌピーさんは
青宗「じゃあ泊まっていきなよ。」
そう言った。
青宗「俺も1人だと寂しいしさ。今日だけだなんて言わずここに住んで欲しいだなんて言ったら嫌、かな、?」
○○「えっと、、、、よろしくお願いしますっ、、!」
青宗「やった(笑)」
青宗「部屋、一つ空いてるから、そこ使っていいよ。ベッドは今日は俺のやつ使って。俺はソファで寝るからさ。」
優しすぎるくらい良くしてくれる彼に恐怖心なんてもうなかった。
ただただ涙がこぼれるだけ。
○○「ありがとう、ございますっ、、」
それからしばらくして私とイヌピーは付き合った。
向けてくれる優しさ、微笑む笑顔、声、仕草、全てに惹かれた。
ベッドも別だったのに一緒に眠れるようにまでなった。
男性恐怖症だった私がまさか男性と付き合う日が来るだなんて思ってもいなかった。
今でも元カレのこと、路地裏での出来事は忘れていない。
時々思い出して辛くなって、リスカをすることだってあるし、眠れない日もある。
でも、そんな時彼は私を責めずに寄り添ってくれる。
彼となら、きっと。
大丈夫な気がする。
私の人生に光を点けてくれてありがとう。青宗___。