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「絶対、!わからない、、、よな?」正直クソ不安である。
俺はアメリカ。
なんでこんなに思い悩んでるかって?、、、はは、そうだよな、俺らしくないよな
俺は、金輪際叶わない恋を抱えてしまった。
話すだけで顔が火照って爆発しそうなのだが、誰にも言わないなら言わないでそれはそれで自爆しそうだから言っておく。
、、、大日本帝国が好きだ。
彼奴は、かつて世界を掛けて大暴れした枢軸国の一国。
対して俺は、その枢軸国の暴走を止めた連合国の一国。
わかってる。
叶うわけない。
俺自身も何に惹かれたのかいまだにわからない。
気がついたら彼を目で追うようになり、彼の些細な反応に一喜一憂するようになった。
、、、いや、違うな
彼の性格に惚れたのか、俺は
もちろん、許せない行為をたくさんしてきた。
他国にも残虐な性格だと思われがちだと思う。
でも、彼自身はこうと決まったことは最後まで貫き通す。
芯がしっかりしていて、他人の意見に流されない。
かと言って意固地ではなく、相手のことをよく見ていて、気配りもできる。
話を聞くときも、相手の顔を見ながら、いちいち相槌を打ってくれる。そして反応が面白い。
でも、彼は絶対に弱さを見せない
俺は彼が誰かに愚痴をこぼしているところをいまだかつて見たことがない。
あれ、俺こんなに彼のことを見ていたのか。
そういえば、最近会いに行っていないな
「ストーカーみたいだなぁ、、、」
大きなため息がでた。
キモいな、俺
そして、今俺が何をしようとしているかというと。
彼に手紙を書いていた。
俺は彼に一般面会できない。
手紙の内容は至って普通のもので、「日帝、調子はどうだ」とか「また変なことはするなよ」とか。
自分で書いていても思う、とても上から目線で気持ち悪い。
ただ、俺は連合国。正直手紙の中身を見られてもいいように、工夫をしないといけなかった。
「、、、俺が日帝に向けてラブレターを書いていることを他の奴らが知ったら、、、」
、、、寒気がする。
「どうにかして、、、この気持ちを、、、、」
無責任だ。
あまりにも。
でも、今伝えておかなかったら、気がついたら彼は誰かに取られてしまう。
俺のカンが告げていた。
俺がいるこの世界には、枢軸国も、連合国も、そうでない国々も、どの国にも通じる「共通語」というものが存在する。
便利なものだな、翻訳を使わなくていいのは。
しかしながら、途中で開封されて中身を見られると終わる。
どうしたものか、、、
さんざん悩みに悩んだ挙げ句、文末に中国から教えてもらった百人一首?というものを添えた。
しかも、書き慣れない日本語で。
少し形が崩れたが、まぁ初めてにしては上出来だ。
彼の国の文化はとても面白い。
たった三十一字で、しかも直接的にそのことを言っていなくとも伝わる恋があるというのだから
「難波潟 みじかき芦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや」
◉この首の意味
『難波潟の芦の、その短い節と節の間のような、ほんの僅かな間もあなたに会えないまま、私にこの世を終えてしまえと、あなたは言うのですか。』
《少しも合うことのできない恋への絶望感》
何回も手紙を読み直す。
「変なところは、、、ない、、はず」
途中で開封されて中身を盗み見られたとしても、短歌のところだけは日本語で書いているからわからない、、と思いたい。
丁寧に四つ折りにすると、便箋に入れて、念入りに封をした。
「ま、どうせ開けられると思うけど」
返事なんて返ってこないだろう。
というか俺から、というだけで破り捨てられるかもしれない。
それでもいい。
諦めがつくから。
ぐちゃぐちゃの心を抱え、部下に手紙を手渡した。
「、、、日帝に、よろしく」
あれから数日は経った。
ずっとソワソワしている。
帰ってこないであろう返事を待ち焦がれて。
だめだな、俺、、、頭の中が日帝でいっぱいだ
資料を読み漁る手を止めて席を立ち、ベランダに出た。
風が優しく頬をなでつける。
目を細めて風に身を任せていると、ガラスをノックする音が聞こえた。
後ろを振り返ると、部下が大量の書類と一通の手紙を持って控えていた。
慌てて中に入り受け取ると、
「これ、日帝さんからです」
こそっと教えてくれた。
空いた口が塞がらなかった。
本当に?
同時に喜びが押し寄せてきて、紐で丁寧に結ばれてある口を解くと、中にはいっていた手紙を取り出した。
手紙には一言、見事な書体でこう書かれていた。
「人はいざ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」
◉この首の意味
『あなたはどうだろう。人の気持ちは私にはわからない。昔の土地では梅の花だけが昔と同じ香りで臭うだけだった。』
《変わらぬ自然と対照的な人の心の移り変わりの激しさ》
、、、つまり、「お前の気持ちが本心がしれない。」ってことか。
拒絶の部類に入るのかな、これは、、
まぁそうだよなぁ、、、
なんとなく予想はしていたけど、現実となって現れるとしんどくなって。
『でも、、!俺は諦めたくないっ!!』っていう思いも湧いてくる。
なんてことがあって一週間。
俺は、日帝に恋文を送り続けていた。
どれも「あなたに会いたい」とか「叶わないとはわかっているけど」みたいな、叶いもしない願いを書き綴った首ばかりを載せて。
もちろん返事は、どれもつれないものだったが。
中国からもらった百人一首の本を一首一首丁寧に読み解きながら。
今の俺にあった歌はないのか、と必死に探した。
そして手紙を送り続けて七日目。
(今日で終わりにしよう)
そう決心して、本を開いた。
俺が最後に選んだ歌は。
『筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる』
◉『筑波の峰から流れ落ちてくる男女川が次第に水量を増して深い淵を形作るように、私のあなたへの恋心も積もりに積もって縁のように深くなってしまった。』
《時が立つにつれてどんどん深まっていくあなたへの行き場のない恋心》
、、、いつもより強気に出てみた。
まぁいいか、最後なんだし。
この首を見て、日帝は私に愛想が尽きるだろう。
なにせ一週間掛けて俺を断ろうとしているのに、俺はまだ懲りていないんだから。
大して深く考えもせずに封をすると、部下に手渡して俺は仕事に戻った。
まいった。
顔から炎が出ている気分だ。
あの手紙を部下に手渡し、3日あまり間が空いた。
俺は、完全に日帝が俺に愛想が尽きたもんだと思って片付けていた。
なのに。
俺が今握りしめている手紙には、相変わらず麗しい書体で
『陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに』
◉『陸奥のしのぶもじずりの乱れ模様のように、他の誰せいで乱れ始めたのだろう、私の心は。、、、他ならぬお前のせいだよ』
《恋してはならぬことはわかっていながら芽生えてしまった恋心に乱れる心》
ヒュッ
呼吸が浅くなった。
、、、肯定、、?
日帝が、俺に、、傾き始めてるって、こ、とでいいのか、、?
今の俺は、トマトのように顔が赤いのかもしれない。
夢にまで見た状況。
夢でしか起こりようもない状況。
自分の頬をつねる。
痛かった。
スーパー◯リオのようにジャンプしたのは言うまでもなかった。
しばらくまともに喋れなくなり、世界が虹色に見えるほど。
恋い焦がれたあなたが、俺に興味を持ち始めてくれているという事実だけでも嬉しくて。
甘ったるい想いが、俺を内側から焼け焦がしていった。
終わりです。
百人一首が本格的に始まりまして、、、これに合わせて何か書けないものかと執筆してみました。
ただ単に「愛してる」って送るのもアメさんらしくていいですが、回りくどく「あなたから離れられない」って伝えるのもいいかなぁと。
ちょっと高貴なやり取りになっちゃった気がします。反省。
、、、、この二人が結ばれるのはいつになるのやら。