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一蓮托生 共に行く

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一蓮托生 共に行く

1 - 一蓮托生 共に行く

♥

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2024年07月01日

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注意事項

・この作品はwrwrd様の二次創作です。

・本人様とは関係ありません。

・検索避けに協力してください。

・タヒネタ、いじめ、軍パロが含まれます。

ワンクッション


























────────────

ギィィ。

古びたフェンスに体重をかけた。

時間が夜なこともあり、遠く遠くの地面は何も見えない。

それが、飛び降りることに対する不安を落ち着かせた。

俺は、火の着いていない煙草を口に咥えたまま、夜空を見上げた。

星は月に負けじと光っている。

小さいくせに。暗闇に飲み込まれてしまうくせに。

星は、月よりも精一杯に光っていた。

煙草に火が着かないかと確認をするが、やはり着いていない。

少し肌寒いので、フェンスに乗せた腕の中へと頭を押し込む。

俺は、いつここを去るのだろうかと考える。

何年も何年も続く嫌がらせ。

嫉妬に過ぎないが、それでも度を超えている。

人に気持ちを伝えることが苦手な俺は、助けを求めることも出来なかった。

視界に広がる紫色は、くすんでしまっている。


ふっ、と顔を上げて下を見下ろす。

何も見えない。

暗闇が続いている。

今なら、飛び降りることもできる気がしたんだ。

俺はぼーっ、とそんなことを考えながら夜空を眺めていた。


「shp、こんばんわっ。」


突然輝く明るい声が耳元を通り、振り返る。

1つ後輩の、ciがにこにこと笑いながらこちらに近寄ってきた。

俺と同じようにフェンスに体重をかける。


「shp、今度どこ行く??」

「…どこ行く、って?」


ciは頬をむす、と膨らませてこちらを見た。

俺の肩にゴツン!と頭をぶつけて、ぐりぐりと押し付けて唇を尖らせる。


「バイクで旅行!!去年から行ってくれないんやもん。」

「ああ…。」


去年から、嫌がらせがヒートアップしたんだったか。

肩から伝わる温かさは、冷えきった俺の身体に熱を流し込んだ。


「shpはどこが好きなんやったっけ。」

「別にどこでも。」

「…じゃあ!今度は俺が日程決めるから!!」


胸を張って嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。

髪の毛がふわふわと動くのをぼーっと見ていると、肩を掴まれ左右に揺らされる。

視界に映る前髪も、同じように動いていた。


「shp忙しそうやん!だから、俺が決めとく!!それまでに、準備しといて!!あ、その日に疲れて寝るとか無しやぞ!!ちゃんと休憩もせぇよ!」

「はーい。」

「俺からtnにもお願いしとくわ!!shpの休暇!!明日からでええ?」

「…えっ、明日から??」

「うん。疲れとるやろ、毎日あんな動いたら。」


ciはフェンスに背を向けて夜空を見上げる。

俺と釣られて上を向いた。

先程まで光っていた星は、雲で隠れてしまったのか、はたまた月に食べられてしまったのか、消えていた。

そんなことを考えていると、口になんとなく咥えていた煙草を取られた。

カチ、と音がして火が着けられる。

気がつくと、ciの口にも煙草が咥えられていた。


「ん。」

「…ありがとさん。」

「火の着いてない煙草、似合っとらんぞ。」

「…似合うとかあんの。」

「さあ?」


星の光が、煙草へ映ったように、また目の前が明るくなった。























───────────────

あれから、俺への嫌がらせが無くなった。

何があったのかは知らない。

アイツらが自白したのか。

…いや、そんなことする訳ないか。

俺は火の着いた煙草を吸いながら、喫煙所で暇を潰していた。

今は書類と簡単な運動だけをしている。

今まで大型訓練があったのだが、俺の体調を気にしたciのおかげで予定変更となった。


ガチャ、と扉が開き既に煙草を咥えているutが入ってきた。

俺に気がつくと、嬉しそうに片手を上げて、よっ!と声をかけた。


「ちょーしはどうや??」

「ぼちぼちっすね。書類やってると、肩が痛くて。」

「あはは、今はそっち系やってんねや。」

「そうっすねー。」

「まあそれももう終わるやろ。明日からやったか?旅行。」

「ああ、そうやった。」


utはぷはー、と息を吐きながら羨ましいと目を輝かせた。

正直、旅行は好きだ。

旅行…というか、ciと行くのが好きなのかもしれない。

もちろん、仲間と行くのも好きだけれど。

ciといると、体の力が抜けるというか。

安心するというか。

明日が待ち遠しいなあ。


「てかさ、ciもあいつよう頑張っとるなあ。」

「そーなんすか??書類?」

「んや、訓練や。大型訓練のために、shpの代わりに指示役とかしてるんやと。」

「えっ、そんなの知りませんけど。」

「shpのためやって、あいつ嬉しそうに言っとったでな。まあ、明日褒めてやれよ。」

「もちろん。」

「まー凄いよなあ。自分の部隊と、shpの部隊、2部隊動かしてんねんもん。成長やなあ。」

「追い抜かれそうっすわ。」


明日、なんか奢ろうか。

俺は自然と上がりそうな口角を抑えて息を吐く。

短くなった煙草を灰皿に押し付けて、扉を開ける。

utが手を振った。


「またなあ。明日楽しめよー。」

「はい。いってきます。」





























──────────────

ゴッッッ!!!!!!

ザワザワ。


外がうるさくて、目が覚めた。

俺はベッドの近くに置いてある時計を確認するが、まだ朝の3時ほどだ。

なぜこんな早朝に人が騒いでいるんだろう。

のそ、とベッドから出てジャージを羽織る。

部屋のライトを付けて、カーテンを開ける。

外には人が沢山集まっていた。

その中に、utやtnの姿もある。

なんか予定があったっけ。

俺は仕方なく部屋を出る。

ciが起きているかを確認しに、部屋へ向かうが、部屋には誰もいなかった。

ci、俺を起こしてくれなかったのか。

俺は唇を尖らせながら階段を降りる。

というか、明日から旅行なんだが。

こんな早起きしてたら寝るぞ。


階段を降り着ると、knが駆け寄ってきた。


「はッ…、ぁ、はっ、!!!shpっ、!!」

「わっ…なんすか、こんな朝から。」

「は、はやくッ…来るんや、!!!!!」


knに腕を捕まれ連れて行かれる。

ぐいぐいと、あまりに力強く掴まれる物だから手が痛い。

すると、すぐ横をsnが走っていって、人集りの中へと入っていった。

後ろからsn部隊の子達が担架などを持って走っていく。


そこで、胸騒ぎがした。

この匂いを俺は知っている。

戦場で嫌というほど匂う。


血の匂いだ。














「…ci、?」


顔に白い布を無抵抗にかけられたci。

腕は落ちた衝撃のせいか、ぐにゃりと曲がっていて、地面には赤色が広がっていた。


「…shp、なぁ。ciに何があったん、」


utが震えて傍に寄ってきた。

俺には何も分からない。

なんでこうなったのか。

なにが起きたのか。

これが現実なのかも。


ただ、一つだけ。

心当たりがある。


「…実は、俺。」



































───────────────

「おい!クソオタク!!!早く消えろよ!」

「ぎゃははっ、こいつほんと怒んねぇよな!」

「…。」


「…shp、?」


ciは個室の中から聞こえる怒鳴り声に耳をすませた。

誰かがイジメを受けている。

その誰かが最初は分からなかったが、聞いているとshpの声が聞こえた。

苦しそうに、うるさい。と抵抗する声が。

ciは、怖くて動くことが出来ずにいた。

最近、shpの体調が良くないのはこれが原因かと、気づいた。

ciは、shpとの旅行が大好きだった。

それを邪魔されたのがなによりも悔しかった。


その夜。shpが屋上を向かうのが見えた。

ciは嫌な予感がして、すぐさま追いかけた。

彼になんと声をかけるべきなのか。

分からなかった。考える時間もなかった。

ただ、彼の悲しむ姿を見たくないという気持ちは、確かに手の中に握られていた。


「shp、こんばんわっ。」


彼の手を引っ張り、自分を突き飛ばすだけの話。







「今日から、shp部隊はshp隊長から変わり、ciが代行を行う。」


と、ciが舞台にあがり話す。

ci部隊は静かに頷いていたが、問題はshp部隊だった。

副隊長とその仲間たちが、イラついたようにこちらを睨んでいるのだ。

ciはその睨みを無視しながら説明をする。

すっ、とその副隊長が手を挙げた。


「…なんだ、副隊長xx。」

「ci隊長と大切な話があるんすけど。」

「…今話さねばならないか。」

「はいー。ちょっと席外しませんか?」

「…。」


周りを見て、ゆっくりと舞台をおりる。

副隊長の後を着いていく。

ci部隊はのんびり屋が多いため、談笑が始まった。

shp舞台の数人が、歩き出したのにも、気付かぬまま。





「…なんだ。」

「アンタなんなんすか。アンタ情報屋っすよね、なにイキってんの?」

「…悪いか??この世界イキってなんぼやろ。そんなのに気にしてたら、お前生きていくの大変やで。」

「…ほんまなんなの。アンタ。」


足音がして振り返る。

shp部隊の数人がいて、一斉にciに襲いかかった。

ciは拘束されて、静かに副隊長を見つめる。


「なぁ。shpに金輪際触れんでくれ。」

「今の状況で頼める立場だと思ってんの?…んんー、まあ。ええよ?ただ、条件付き。」

「なんや。俺を代わりにするって?そんなん全然やれよ。」

「…ふ、なんでも?」

「なんでも。」


副隊長は、しゃがんでciをにんまりと見る。

ゆっくりと開いた口から舌が自慢げに動く。


「幹部を1人消せ。そしたらshpサンには触れない。」

「…は、?」

「俺、幹部になりたいんよねえ。なあ、いいよね?幹部のciサンっ!」


ciは、ごくん、と息を飲む。





























──────────────

「…。」

遠くから銃声が鳴り響く。

zmとrbが暴れているのだと、すぐに察した。

銃声の数は、shpに嫌がらせをした主犯格達の数。

shpはその事実に押し潰され、唇を噛み締めた。

腕の中で隠すようにciを抱く。

熱を失い、光を手放した彼を。


「shp…。」

「…ut、せんせい。」


utは横に座り、ciの頭に手を乗せた。

こうなっても尚、ふわふわと元気よく飛び跳ねる髪の毛が指をくすぐる。

utはshpの頭も撫でて、それからciの手を握る。


「よお頑張った。えらいなお前は…。」

「…。」

「…っ、褒めるのが、こうなってしまうんは、くやしいわ、」


utはciに言葉を投げかけ続けた。

shpは、黙ってばかりだった。

なんて声をかければ良いのかが、分からずにいた。


「shp。」

「…tn、さん、?」


tnが傍に寄ってきて、しゃがんだ。

それからひとつの封筒を取り出した。

shpはそれを受け取り、中身を見る。

手紙が入っていた。


「ciからや。」

「…ci、から、。」


ひとつの大きな折りたたまれた紙を慎重に開く。



中には、お金と写真と、1行だけの文字が入っていた。


「…《結局行きたい場所はなかった。shpが笑える場所はどこだろうって考えても。》」


写真はshpとciの今までの旅行へ行ったツーショットもあれば、shpの笑っている所を隠し撮りした写真。

どれも、shpが今までで出せた笑顔の写真であった。

大きな紙に、小さな文字がへにょへにょと乗せられていた。

1行だけ。たったのそれだけ。

裏側を見ると、隅に沢山書かれてあった。

「《どこかへ行くのもいいけど、やっぱりw国で笑い合うshpが好き。昔の、当たり前の日常が戻ってくることを願ってるよ。そこに、俺はきっといないだろうね。》」


少しの間だったけど、ありがとう。

少しの間だけなんかじゃないのに。

いや、そうだとしても思い出はそれ以上にある。友情はなによりも大きい。

ci、という存在がshpの中では人生よりも大きな塊であった。

まるで、前世も共にしたように。

どこからか分からないほど、それは大きく強かった。


「…ci、それなら山とか、どうや。ええ場所、知ってんねん。」

返事が返ってくることを。

「ここから遠いけど、俺の故郷の場所やねんけどな。」

この手に体温が戻ることを。

「その山に、花畑があって。」

いつものように笑い合えることを。

「いつか、絶対ciに見せたいって、思ってたんよ。」

バイクの背に乗ってくれることを。

「くだらない事で悩んで、忘れてたくらいの、ほんましょぼいことやけど。」

寄り添ってくれることを。

「やっぱりciがおると、しょぼいことも大切だと思ってしまうんや。」

頷いてくれることを。


「…、なんで、どうして。おまえは、」

願っても祈っても、そこに彼はいない。

叶うはずのない、しょぼい想い。

それは、彼がいないことで、大切な想いへ変わることの無い想い。


「…、なぁ、ci、?」

彼が思う以上に。




「…しょぼい死に方やなぁ。おれも、おまえも。」


彼と手を繋いだまま。

仲間の声が届かないまま。


銀色に光るそれを、胸へと突き刺すだけ。




































──────────────

目を開く。

自分に色が無くなっていて、ぷかぷかと空を浮いていた。

目の前には花畑が広がっている。

正しく、shpの故郷であった。


そして、その花畑の中に1人の人影がある。

見間違えるはずがない。


「ci。」

「あ、shp。今回は俺が先やったなぁ。」


来世も共にする2人の人影が、花々に包まれて、消えてゆく。




















オチやばいですよね!?!?😭

こんなつもりじゃ!!!!!😭😭

・励ましてた側が急に崩れる という話を書きたかったんですけど、やっぱり他のテーマ?が悪かったですかね、

旅行の話とか。故郷の話とか。

そこで生まれ、そこへ戻っていく、みたいな風にしたら繋がるかなとかも思って。

いやでも、最後のshpくんの終わり方、もっとデーン!!!って出来なかったかな😭

改善点ですね


ちなみに、来世に行くというのは、記憶があるまま行くのではなく、記憶をなくして…です

一蓮托生、ということわざの意味から捉えてくれててば良いのですが、

行動や運命を共にする。

つまり、来世がどうであっても、今世の生まれがどうであっても、必ず結ばれる縁、みたいな!

…かんじですかね。。。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

11

ユーザー

最高すぎるまじで。久々に泣けた、まじでありがとうございます

ユーザー
ユーザー

何でこの人が書く小説はどれも神作なんや。それ見るために生きてられるわ。

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