注意事項
・この作品はwrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・タヒネタ、いじめ、軍パロが含まれます。
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ギィィ。
古びたフェンスに体重をかけた。
時間が夜なこともあり、遠く遠くの地面は何も見えない。
それが、飛び降りることに対する不安を落ち着かせた。
俺は、火の着いていない煙草を口に咥えたまま、夜空を見上げた。
星は月に負けじと光っている。
小さいくせに。暗闇に飲み込まれてしまうくせに。
星は、月よりも精一杯に光っていた。
煙草に火が着かないかと確認をするが、やはり着いていない。
少し肌寒いので、フェンスに乗せた腕の中へと頭を押し込む。
俺は、いつここを去るのだろうかと考える。
何年も何年も続く嫌がらせ。
嫉妬に過ぎないが、それでも度を超えている。
人に気持ちを伝えることが苦手な俺は、助けを求めることも出来なかった。
視界に広がる紫色は、くすんでしまっている。
ふっ、と顔を上げて下を見下ろす。
何も見えない。
暗闇が続いている。
今なら、飛び降りることもできる気がしたんだ。
俺はぼーっ、とそんなことを考えながら夜空を眺めていた。
「shp、こんばんわっ。」
突然輝く明るい声が耳元を通り、振り返る。
1つ後輩の、ciがにこにこと笑いながらこちらに近寄ってきた。
俺と同じようにフェンスに体重をかける。
「shp、今度どこ行く??」
「…どこ行く、って?」
ciは頬をむす、と膨らませてこちらを見た。
俺の肩にゴツン!と頭をぶつけて、ぐりぐりと押し付けて唇を尖らせる。
「バイクで旅行!!去年から行ってくれないんやもん。」
「ああ…。」
去年から、嫌がらせがヒートアップしたんだったか。
肩から伝わる温かさは、冷えきった俺の身体に熱を流し込んだ。
「shpはどこが好きなんやったっけ。」
「別にどこでも。」
「…じゃあ!今度は俺が日程決めるから!!」
胸を張って嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
髪の毛がふわふわと動くのをぼーっと見ていると、肩を掴まれ左右に揺らされる。
視界に映る前髪も、同じように動いていた。
「shp忙しそうやん!だから、俺が決めとく!!それまでに、準備しといて!!あ、その日に疲れて寝るとか無しやぞ!!ちゃんと休憩もせぇよ!」
「はーい。」
「俺からtnにもお願いしとくわ!!shpの休暇!!明日からでええ?」
「…えっ、明日から??」
「うん。疲れとるやろ、毎日あんな動いたら。」
ciはフェンスに背を向けて夜空を見上げる。
俺と釣られて上を向いた。
先程まで光っていた星は、雲で隠れてしまったのか、はたまた月に食べられてしまったのか、消えていた。
そんなことを考えていると、口になんとなく咥えていた煙草を取られた。
カチ、と音がして火が着けられる。
気がつくと、ciの口にも煙草が咥えられていた。
「ん。」
「…ありがとさん。」
「火の着いてない煙草、似合っとらんぞ。」
「…似合うとかあんの。」
「さあ?」
星の光が、煙草へ映ったように、また目の前が明るくなった。
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あれから、俺への嫌がらせが無くなった。
何があったのかは知らない。
アイツらが自白したのか。
…いや、そんなことする訳ないか。
俺は火の着いた煙草を吸いながら、喫煙所で暇を潰していた。
今は書類と簡単な運動だけをしている。
今まで大型訓練があったのだが、俺の体調を気にしたciのおかげで予定変更となった。
ガチャ、と扉が開き既に煙草を咥えているutが入ってきた。
俺に気がつくと、嬉しそうに片手を上げて、よっ!と声をかけた。
「ちょーしはどうや??」
「ぼちぼちっすね。書類やってると、肩が痛くて。」
「あはは、今はそっち系やってんねや。」
「そうっすねー。」
「まあそれももう終わるやろ。明日からやったか?旅行。」
「ああ、そうやった。」
utはぷはー、と息を吐きながら羨ましいと目を輝かせた。
正直、旅行は好きだ。
旅行…というか、ciと行くのが好きなのかもしれない。
もちろん、仲間と行くのも好きだけれど。
ciといると、体の力が抜けるというか。
安心するというか。
明日が待ち遠しいなあ。
「てかさ、ciもあいつよう頑張っとるなあ。」
「そーなんすか??書類?」
「んや、訓練や。大型訓練のために、shpの代わりに指示役とかしてるんやと。」
「えっ、そんなの知りませんけど。」
「shpのためやって、あいつ嬉しそうに言っとったでな。まあ、明日褒めてやれよ。」
「もちろん。」
「まー凄いよなあ。自分の部隊と、shpの部隊、2部隊動かしてんねんもん。成長やなあ。」
「追い抜かれそうっすわ。」
明日、なんか奢ろうか。
俺は自然と上がりそうな口角を抑えて息を吐く。
短くなった煙草を灰皿に押し付けて、扉を開ける。
utが手を振った。
「またなあ。明日楽しめよー。」
「はい。いってきます。」
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ゴッッッ!!!!!!
ザワザワ。
外がうるさくて、目が覚めた。
俺はベッドの近くに置いてある時計を確認するが、まだ朝の3時ほどだ。
なぜこんな早朝に人が騒いでいるんだろう。
のそ、とベッドから出てジャージを羽織る。
部屋のライトを付けて、カーテンを開ける。
外には人が沢山集まっていた。
その中に、utやtnの姿もある。
なんか予定があったっけ。
俺は仕方なく部屋を出る。
ciが起きているかを確認しに、部屋へ向かうが、部屋には誰もいなかった。
ci、俺を起こしてくれなかったのか。
俺は唇を尖らせながら階段を降りる。
というか、明日から旅行なんだが。
こんな早起きしてたら寝るぞ。
階段を降り着ると、knが駆け寄ってきた。
「はッ…、ぁ、はっ、!!!shpっ、!!」
「わっ…なんすか、こんな朝から。」
「は、はやくッ…来るんや、!!!!!」
knに腕を捕まれ連れて行かれる。
ぐいぐいと、あまりに力強く掴まれる物だから手が痛い。
すると、すぐ横をsnが走っていって、人集りの中へと入っていった。
後ろからsn部隊の子達が担架などを持って走っていく。
そこで、胸騒ぎがした。
この匂いを俺は知っている。
戦場で嫌というほど匂う。
血の匂いだ。
「…ci、?」
顔に白い布を無抵抗にかけられたci。
腕は落ちた衝撃のせいか、ぐにゃりと曲がっていて、地面には赤色が広がっていた。
「…shp、なぁ。ciに何があったん、」
utが震えて傍に寄ってきた。
俺には何も分からない。
なんでこうなったのか。
なにが起きたのか。
これが現実なのかも。
ただ、一つだけ。
心当たりがある。
「…実は、俺。」
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「おい!クソオタク!!!早く消えろよ!」
「ぎゃははっ、こいつほんと怒んねぇよな!」
「…。」
「…shp、?」
ciは個室の中から聞こえる怒鳴り声に耳をすませた。
誰かがイジメを受けている。
その誰かが最初は分からなかったが、聞いているとshpの声が聞こえた。
苦しそうに、うるさい。と抵抗する声が。
ciは、怖くて動くことが出来ずにいた。
最近、shpの体調が良くないのはこれが原因かと、気づいた。
ciは、shpとの旅行が大好きだった。
それを邪魔されたのがなによりも悔しかった。
その夜。shpが屋上を向かうのが見えた。
ciは嫌な予感がして、すぐさま追いかけた。
彼になんと声をかけるべきなのか。
分からなかった。考える時間もなかった。
ただ、彼の悲しむ姿を見たくないという気持ちは、確かに手の中に握られていた。
「shp、こんばんわっ。」
彼の手を引っ張り、自分を突き飛ばすだけの話。
「今日から、shp部隊はshp隊長から変わり、ciが代行を行う。」
と、ciが舞台にあがり話す。
ci部隊は静かに頷いていたが、問題はshp部隊だった。
副隊長とその仲間たちが、イラついたようにこちらを睨んでいるのだ。
ciはその睨みを無視しながら説明をする。
すっ、とその副隊長が手を挙げた。
「…なんだ、副隊長xx。」
「ci隊長と大切な話があるんすけど。」
「…今話さねばならないか。」
「はいー。ちょっと席外しませんか?」
「…。」
周りを見て、ゆっくりと舞台をおりる。
副隊長の後を着いていく。
ci部隊はのんびり屋が多いため、談笑が始まった。
shp舞台の数人が、歩き出したのにも、気付かぬまま。
「…なんだ。」
「アンタなんなんすか。アンタ情報屋っすよね、なにイキってんの?」
「…悪いか??この世界イキってなんぼやろ。そんなのに気にしてたら、お前生きていくの大変やで。」
「…ほんまなんなの。アンタ。」
足音がして振り返る。
shp部隊の数人がいて、一斉にciに襲いかかった。
ciは拘束されて、静かに副隊長を見つめる。
「なぁ。shpに金輪際触れんでくれ。」
「今の状況で頼める立場だと思ってんの?…んんー、まあ。ええよ?ただ、条件付き。」
「なんや。俺を代わりにするって?そんなん全然やれよ。」
「…ふ、なんでも?」
「なんでも。」
副隊長は、しゃがんでciをにんまりと見る。
ゆっくりと開いた口から舌が自慢げに動く。
「幹部を1人消せ。そしたらshpサンには触れない。」
「…は、?」
「俺、幹部になりたいんよねえ。なあ、いいよね?幹部のciサンっ!」
ciは、ごくん、と息を飲む。
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「…。」
遠くから銃声が鳴り響く。
zmとrbが暴れているのだと、すぐに察した。
銃声の数は、shpに嫌がらせをした主犯格達の数。
shpはその事実に押し潰され、唇を噛み締めた。
腕の中で隠すようにciを抱く。
熱を失い、光を手放した彼を。
「shp…。」
「…ut、せんせい。」
utは横に座り、ciの頭に手を乗せた。
こうなっても尚、ふわふわと元気よく飛び跳ねる髪の毛が指をくすぐる。
utはshpの頭も撫でて、それからciの手を握る。
「よお頑張った。えらいなお前は…。」
「…。」
「…っ、褒めるのが、こうなってしまうんは、くやしいわ、」
utはciに言葉を投げかけ続けた。
shpは、黙ってばかりだった。
なんて声をかければ良いのかが、分からずにいた。
「shp。」
「…tn、さん、?」
tnが傍に寄ってきて、しゃがんだ。
それからひとつの封筒を取り出した。
shpはそれを受け取り、中身を見る。
手紙が入っていた。
「ciからや。」
「…ci、から、。」
ひとつの大きな折りたたまれた紙を慎重に開く。
中には、お金と写真と、1行だけの文字が入っていた。
「…《結局行きたい場所はなかった。shpが笑える場所はどこだろうって考えても。》」
写真はshpとciの今までの旅行へ行ったツーショットもあれば、shpの笑っている所を隠し撮りした写真。
どれも、shpが今までで出せた笑顔の写真であった。
大きな紙に、小さな文字がへにょへにょと乗せられていた。
1行だけ。たったのそれだけ。
裏側を見ると、隅に沢山書かれてあった。
「《どこかへ行くのもいいけど、やっぱりw国で笑い合うshpが好き。昔の、当たり前の日常が戻ってくることを願ってるよ。そこに、俺はきっといないだろうね。》」
少しの間だったけど、ありがとう。
少しの間だけなんかじゃないのに。
いや、そうだとしても思い出はそれ以上にある。友情はなによりも大きい。
ci、という存在がshpの中では人生よりも大きな塊であった。
まるで、前世も共にしたように。
どこからか分からないほど、それは大きく強かった。
「…ci、それなら山とか、どうや。ええ場所、知ってんねん。」
返事が返ってくることを。
「ここから遠いけど、俺の故郷の場所やねんけどな。」
この手に体温が戻ることを。
「その山に、花畑があって。」
いつものように笑い合えることを。
「いつか、絶対ciに見せたいって、思ってたんよ。」
バイクの背に乗ってくれることを。
「くだらない事で悩んで、忘れてたくらいの、ほんましょぼいことやけど。」
寄り添ってくれることを。
「やっぱりciがおると、しょぼいことも大切だと思ってしまうんや。」
頷いてくれることを。
「…、なんで、どうして。おまえは、」
願っても祈っても、そこに彼はいない。
叶うはずのない、しょぼい想い。
それは、彼がいないことで、大切な想いへ変わることの無い想い。
「…、なぁ、ci、?」
彼が思う以上に。
「…しょぼい死に方やなぁ。おれも、おまえも。」
彼と手を繋いだまま。
仲間の声が届かないまま。
銀色に光るそれを、胸へと突き刺すだけ。
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目を開く。
自分に色が無くなっていて、ぷかぷかと空を浮いていた。
目の前には花畑が広がっている。
正しく、shpの故郷であった。
そして、その花畑の中に1人の人影がある。
見間違えるはずがない。
「ci。」
「あ、shp。今回は俺が先やったなぁ。」
来世も共にする2人の人影が、花々に包まれて、消えてゆく。
オチやばいですよね!?!?😭
こんなつもりじゃ!!!!!😭😭
・励ましてた側が急に崩れる という話を書きたかったんですけど、やっぱり他のテーマ?が悪かったですかね、
旅行の話とか。故郷の話とか。
そこで生まれ、そこへ戻っていく、みたいな風にしたら繋がるかなとかも思って。
いやでも、最後のshpくんの終わり方、もっとデーン!!!って出来なかったかな😭
改善点ですね
ちなみに、来世に行くというのは、記憶があるまま行くのではなく、記憶をなくして…です
一蓮托生、ということわざの意味から捉えてくれててば良いのですが、
行動や運命を共にする。
つまり、来世がどうであっても、今世の生まれがどうであっても、必ず結ばれる縁、みたいな!
…かんじですかね。。。
コメント
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最高すぎるまじで。久々に泣けた、まじでありがとうございます
何でこの人が書く小説はどれも神作なんや。それ見るために生きてられるわ。