テラーノベル
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俺はムダ先が好きだ。
いつからって言われれば明確にはわかんねぇけど、最強なとこも、不器用でめっちゃ優しいとこも、最高にカッケェ
でも、ムダ先は俺をどうとも思って無いだろうし今は。今だけは生徒と教師という関係のまま、1番近くて遠いこの場所で見つめていられるならそれで良い。
ムダ先の隣を歩くとか、後ろを守るとか100を望みはしない。だからせめて見つめていても許される1だけは許してほしい。
どうせ男どうし、鬼神の子とは言え俺は残念ながら弱い。釣り合うどころか天秤に乗せる前から結果なんか見えている。
でも、でも!
こんなのはあんまりじゃないのか
四季の目に映るのは無陀野と綺麗な女性、2人が仲良さそうに話し合っている姿。無陀野の同期の花魁坂や練馬の淀川に見せるような僅かな安心と慣れを含んだ顔じゃない、表情は何一つ動いてはいないけれど女性を見つめる瞳には愛おしさが滲んでいる。
そんな顔など四季は一度も見たことなんか無い。壊れるのを恐れるかのように髪に触れる指先の体温なんか知らない。僅か、ほんの僅かに緩められた眉なんか見れたことなんか無い。
呼吸を顰めて、廊下の角に立ち尽くす。曲がった先には2人がいる。バレているとか、いないとかは今はどうでも良い。今はただこの場合から逃げ出したい。けれども足は言うことを聞いてはくれないし、何も考えられないのに、グルグルと頭は回ってしまう。
誰かに助けを求めたい。壁に背を付けながら息を殺す。何もできない。
誰。逃げる。ムダ先。俺。動け。恋人。好き。走れ。邪魔。幸せ。なぜ。女。助けて。逃げる。誰。生徒。隊員。最強。逃げろ。先生。走れ。男。誰。聞くな。ムダ先。付き合ってる。指輪。年齢。未成年。
「無人さん」
バラバラに散っていた意識が女性も柔らかい声で引き戻された。
それ以上、俺はその場所に居られなかった。気付けば廊下を思い切り走って居た、あそこから逃げる時に音を立てたのか、気配を消せて居たのかなんて覚えてもいないし考えたくも無い。
ただただひたすらに、がむしゃらに俺は走った。
いつも鍛えてもらっている筈なのに息が上がってしょうがない。上手く息が吸えない肺に空気が入らない。それでも止まるわけには行かなかった。
教室でも自室でも無い最上階の1番端の空き部屋、以前暇つぶしに歩いていた時に見つけた部屋。入り組んでいてわかりにくいし扉も歪んでいるのか開きづらい、中は大凡数年は使っていないと思えるほどに埃が積もっていた。
その部屋なら、きっと大丈夫だと駆け込んだ。
内側から鍵を閉めて壁にもたれ掛かりながらしゃがみ込んだ。
「ッ…ぅぁ、…〜っ…」
声を出さないようにしながら涙を溢す、さっきからずっと鼻頭がツンと痛かった、自分がんよくここに来るまで泣かなかったことを褒めてやりたい。
細く息を吸う喉は刃物で切り裂かれたかのように痛みを訴え、目からは止めどなく涙がこぼれ落ちる。それらは羅刹の制服に濃くシミを作り、まるで溶けたガラスみたいになってしまい乾く事はなかった。
コメント
6件
ほわ最高っ(( この後同期組のだれかに慰められてくれ!!!
悲しいけどめっちゃ尊くて最高でした!
はい最高です 四季くん失恋すんの可哀想だけど いいと思っちゃうんだよな……