その夏、僕は大切なものと出会った。
「お母様!虫取りに行って来ます!」
十歳ほどの少年が栗色の髪を
揺らしていた。
「いってらっしゃい、
車には気を付けるのよ、隼人。」
隼人と言われた少年は大きく
手を振って家を出ていった。
「わぁ…!」
隼人は目を光らせていた。
家から十数分歩いたところにある山は
低いわりに木が多くあって虫が沢山いる。
み〜んみ〜ん
「セミがいる…!」
虫網を構えて歩き始めたその時、
何かを踏んだ。
なんだろ…?
僕は一歩引いてしゃがみ込んだ。
しゃがむと目の前は草まみれだった。
草を掻き分けて行くと何かがいた。
ん…?
目の前には黒髪の長髪の少年が
横に倒れている。
黒いコートを纏っている。
30度近くある日には
絶対に着ない方が良いと分かる。
汗がしとしとと流れていて
意識は朦朧としているようだ。
あついのかも…!
隼人は持っていた水筒の水を
黒髪の少年の口に運んだ。
少しだが飲み込んでいる。
「っっ…誰…!?」
鈍色に暗く光る刃物を
僕に突き付けてきた。
もしかしてしんじゃう…?
少年は意識を取り戻したようだ。
だが、今は自分の身の危険が
迫って来ていてそんなのは
どうでも良くなっていた。
少年は周りを確認して刃を下ろした。
「…ごめん…助けてくれてありがとう。」
「あ…はい…」
汗がずっと流れている。
「ちょっと来てください!」
急いで少年を家に連れて行った。
「お風呂入ってきてください!
そんな汗掻いてたら風邪引きます!」
「…え………」
しっかり戸惑っている。
そりゃそうだろう。
「良いから早く!あ!
着替えはこれ着てくださいね」
強引に少年を浴室に押し込んだ。
ゴウン…ゴウン
洗濯機が唸っている。
やっぱりコート洗濯するのは
だめだったかな…?
風呂からあがってきた少年は
少し大きめのシャツを着ていた。
だが、髪を乾かしてさえもいない。
むっ…!
「ちょっとここで待ってて下さい!」
急いで浴室に走り、
ドライヤーとバスタオルを持ってきた。
ふわぁぁあ
「っ…キッシキシじゃないですか!」
はぁ…
「はい!サラサラになりましたよ!」
二十分以上かかってしまった…
「あ!あと貴方なんて名前なんですか?」
少年は少しためらっているようだが
口を開き始めた。
「セラフ…セラフ・ダズルガーデン」
「珍しい名前ですね〜
じゃあ、せらふさん
よろしくお願いします!
僕はかがみはやとです!」
「よ、よろしく…?」
「家は何処ですか?
山で倒れてたんですよ
刃物持ってたし…」
気になることは聞いておけ
お母様の言葉だ。
少し間があったがまた話し始めた。
「家は遠く。詳しくは教えられない。」
なんでだろう…?
「昨日逃げてた…
そこで倒れてしまった…」
「誰から逃げてたんですか?」
また言葉に詰まっているようだ。
「あ、あの…悪い奴ら。」
「いろいろ大変ですねぇ…」
同情したように話していた。
「家には帰れないんですか?」
「帰ってきたらいけないって言われた…」
う〜ん…
あっ!
「じゃあうちにいて良いですよ!」
隼人少年は新しい玩具を
見るかのように話した。
コクリ、セラフは恥ずかしがりながら
頷いた。
朝は僕がせらふさんを起こして、
でもせらふさんウトウトしてるから
もっとおこして。
朝ご飯は僕がたべないであげた
なっとうをせらふさんがたべる。
昼は一緒に遊んでくれる。
カードゲームが得意みたいだ。
出掛けることもある。
虫取りを一緒にしてくれる。
夜は一緒に寝るが
遅くに出掛けることがある。
そんな暮らしが続いた。
せらふさんと一緒に暮らし始めて
二ヶ月程か経った時のことだった。
「はやとくん明日は隣町に行こうか。」
せらふさんが誘ってくる事ははじめてだ。
「はい!」
わくわくして眠りについた。
せらふさんと手を繋いで
駅のホームで待っていた。
あたたかい…
せらふさんの手は温かくて
優しい手だった。
すっ…
急にせらふさんは手を離して
線路に近づいて行った。
電車が遠目に見える。
え…?せらふさん…?
「ありがとぉね。
俺に新しい世界を見せてくれて。」
ガタン…ガタン
電車の音が邪魔をする。
「また合う時はないかもだよ。」
ガタン…ガタン
「俺の近くにいたら
はやとくんが危険だから。」
せらふさんの髪は靡いていた。
『じゃあね、はやとくん』
せらふさんはそのまま後ろに
倒れていった。
ふわぁっ…
周りの人達は騒いでいたけど
静かな世界だった。
静かすぎると思って周りを見てみると
そこは病室だった。
「隼人!心配したのよ!
山で倒れてて…」
はぁ、はぁ…
一気に話そうとして
息切れしてしまったようだ。
「…あのまま見つからなかったら
どうなっていたと思うの!!」
????え…?
あ…
「せらふさんはどうなったんですか?」
「え…?せら…ふさん…?
だぁれ?その子?」
本当に分からない時の顔だ。
その時からあの時のことは幻覚と
思うようになった。
だが、加賀美インダストリアルの
社長になって
にじさんじでライバーとして活動いたとき
彗星の如く現れた4人組の中に彼はいた。
「剣持さん!不破さん!甲斐田!
早く行きますよ!遅刻してます!」
はぁはぁ…
「しゃちょ!なんで僕だけ呼び捨て!?」
「甲斐田は甲斐田やからな」
「甲斐田くんうるさいよ」
「ガキは黙ってろ!」
「誰がガキやねん!一個下なだけやろ!」
「ちがっ…!もちさんに言ってんの!
不破さんじゃないよ!」
「うるせぇなぁ!」
今からろふまおの撮影だというのに
他の三人がコンビニに行っていた。
完全に遅刻なのですが…。
道を曲がると反対側に
VOLTACTIONの四人がいた。
聞こえてきた話は
くだらない話だった。
そんな話にセラフ・ダズルガーデンは
頬を赤めて笑っていた。
ふふ…
かえるばしょができてよかったですね。
せらふさん。
コメント
2件
ああ😭好きです…