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ーこれは、私が傑と過ごしたあの夏の物語ー
始まりは、この一言だった。
傑「千姫、私は昨日人を殺したんだ。」
千姫「え、、、?」
君はそう言っていた。
梅雨時返り血でずぶ濡れのまんま、
部屋の前で泣いていた。
夏が始まったばかりだというのに、
君はひどく震えていた。
ーそんな話で始まる、あの夏の日の記憶だ。ー
傑「殺したのは任務先の呪術師の女の子を虐めてた村の猿共(非呪術師)だ。
あんな猿共のために呪霊を祓って、取り込むのはもう嫌になって、呪霊に喰わせたんだ。
ここ(呪術高専)には居られないと思うし、
どっか遠いとこで死んでくるよ。」
そんな君に私は言った。
千姫「それじゃ私も連れてって。」
傑「はは、、、良いよ。」
千姫「よし!じゃあ、
財布を持って、呪具を持って、
携帯ゲームもカバンに詰めて、
いらないものは全部壊していこう。
あの写真も、あの日記も、
今となっちゃもういらないさ。
人殺しとダメ人間の傑と私の旅だ。」
そして私達は逃げ出した。
この狭い狭い世界から。
家族も同級生(親友)も先輩も後輩も夜蛾先生も何もかも全部捨てて傑と二人で。
遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。
もうこの世界に価値などないよ。
人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか。
君は何も悪くないよ。君は何も悪くないよ。
結局私達こんな世界に必要とされてなかった。
そんな嫌な共通点で私たちは簡単に信じ合ってきた。
君の手を握った時、微かな震えも既に無くなってた。
誰にも縛られないで二人線路の上を歩いた。
金を盗んで、二人で逃げて、
どこにも行ける気がしたんだ。
今更怖いものは私達にはなかったんだ。
額の汗も、落ちたグラサンも、
傑「今となっちゃどうでもいいさ。
あぶれ者の小さな逃避行の旅だ。
いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら、汚くなった私たち目見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな?」
千姫「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見てよ。
シアワセの四文字なんてなかった、
今までの人生で思い知ったじゃないか。
自分はなたさにも悪くねぇと誰もがきっと思ってる。」
当てもなく彷徨う蝉の群れに、
水もなくなり揺れ出す視界に、
迫り来る追手達の怒号に、
バカみたいにはしゃぎあい
ふと傑は呪具を取った。
傑「千姫が今まで傍にいたからここまでこれたんだ。
だからもういいよ。もういいよ。
死ぬのは私一人でいいよ。
私のことは忘れて幸せになってね。」
そして傑は首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンみたいだ。
気づけば私は捕まって。
君がどこにも見つからなくて。
君だけがどこにもいなくって。
ーーー10年後ーーー
そして時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
家族も同級生も先輩も後輩も、
私は教鞭を取って生徒さえいるのに
なぜか君はどこにもいない。
あの夏の日を思い出す。
私は今も今でも歌ってる。
君に言いたいことがあるんだ。
九月の終わりにくしゃみして
六月の匂いを繰り返す。
君の笑顔は
君の無邪気さは
頭の中を飽和している。
千姫「君は何も悪くないよ。
君は何も悪くないから
もういいよ。
投げ出してしまおう。
そう言って欲しかったのだろう?ねぇ?」
傑「そうだよ。愛してるよ、千姫。
ありがとう。
私のことは忘れて幸せになって。
さようなら。」
千姫「傑!?
な訳、、、ないか、、、。
我が命 全けむ限り 忘れめや
いや日に異には 想い増せども。」