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翌朝、教室に入る足取りはいつもより重かった。えとが俺の秘密を知っている。その事実が、鉛のように胃のあたりに沈んでいる。それでも、俺はいつもの陰キャのふりをして、自分の席に座った。
「ゆあんくん、おはよー!」
明るい声が聞こえて、思わず顔を上げる。そこに立っていたのは、やっぱりえとだった。いつものように満面の笑みを浮かべていて、俺の秘密を知っているそぶりは微塵もない。
「……おはよ」
俺は精一杯、平静を装って答える。
昼休み、俺は勇気を出して、えとに声をかけた。
「えと。今日の放課後、ちょっと屋上に来てくれないか? 誰もいないところで、二人で話したいことがある」
俺の言葉に、えとは一瞬、目を見開いた。普段、俺が自分から誰かを誘うことなど皆無だし、ましてや屋上という場所に呼ぶことなど、あり得ない。だが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「うん、いいよ! ゆあんくんから誘ってくれるなんて、なんか嬉しい!」
そう言って、えとは俺の返事を待たずに席に戻っていった。俺は、えとの明るさに少しだけ救われた気がした。
放課後。俺は指定された屋上へ向かった。屋上への扉を開けると、そこにはすでにえとが立っていた。風がえとの長い髪を揺らしている。
「あ、きたきた 話って?」
心臓の鼓動が激しくなる
「えとにも、俺たちのYouTubeに参加してほしいんだ」
えとは、俺の提案に一瞬、目を丸くした。予想外の言葉だったのだろう。だが、次の瞬間、彼女の顔には満面の笑みが広がった。
「えっ!? 私が、ゆあんくんと一緒にYouTube!?」
えとの声が、興奮で少し上擦っている。
「うん。えとは明るい。俺たちには、えとみたいな存在が必要なんだ。もちろん、顔出しなしで、声だけの参加とかでもいい。無理強いはしない。でも、もし、少しでも興味があるなら……」
俺は、精一杯の誠意を込めて言葉を紡いだ。こんなにも真剣な顔を、学校の誰にも見せたことはないだろう。
えとは、少しだけ考え込むような素振りを見せた。そして、ゆっくりと俺に視線を戻す。
「……うん、やる! やらせてほしい!」
えとは、まるで子どものように、ピョンと跳ね上がった。その笑顔は、これまでのどんな笑顔よりも眩しくて、俺の心を大きく揺さぶった。
「本当に!? 無理してないか?」
「無理なんかじゃないよ! むしろ、嬉しい! 私、ゆあんくんたちの動画、本当に大好きだから。それに、ゆあんくんと、もっと色々なこと、してみたいんだ!」
その言葉に、俺の胸に温かいものが込み上げてきた。えとが差し出してくれた手。それは、俺の閉ざされた世界を、新しい光で照らしてくれるかもしれない。
こうして、俺の秘密を知ったえとは、俺の、そしてじゃぱぱたちの「仲間」になることになった。この選択が、俺たちの未来を、どう変えていくのか。俺は、これからの展開に、不安よりも、期待の方が大きくなっているのを感じていた。