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「少し街を歩きたいから待っていてくれる?」
サイラスは御者にそう告げ、歩き出す。
大規模なマーケットが無事に終わったこの街――『エイソン』の大通りは、数多く並んでいた露店も押し合うような人混みもなくなり、いつもの日常に戻っていた。
(ここに来るのも、ずいぶん久しぶりに感じるなぁ)
窮屈な思いをすることなく、陽の光を受けるレンガ道をのんびり歩きながら、サイラスは懐かしく思う。
(ベロニカちゃんに会いに行くのも……)
ベロニカと二人になりたいがために、ローズとアダムを巻き込んで出かけたマーケット。
あの日は思いがけない偶然とアクシデントにより、アスター領のガラス職人たちが作った『ガラスの楽器』のお披露目演奏会に演者として参加することになった。
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