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…偶然と呼ぶには白々しいのかもしれない。
いつも寝起きが悪いフィンランドだけど、今日は一段と起きるのが遅い気がして、勝手にフィンランドがいる部屋へ入り込んでしまった。「人の部屋に何勝手に入ってんだ」と怒られるかと思ったが、部屋に入ると、未だ椅子に腰掛けて眠っているフィンランドの姿が目に映った。
いつも無言で気難しい普段のフィンランドじゃまず見せてくれない、「白い死神」と呼ばれ恐れられた男とは思えないほどの、無防備で愛おしい寝顔。後で怒られてもいい。今はこの愛おしい彼の姿を存分に堪能したかった。なんて彼は可愛いのだろう!ぐっすりと死んだように眠っている。
まるで氷のような冷たい彼の視線に、アクアマリンのような青くて綺麗な瞳。どこかこちらを突き放すような彼の瞳に苦手意識を持つ者もいるらしいが、俺は違う。
一般の畜生下等国家には到底分からないだろうが、真っ白な雪景色に包まれながら青い瞳を揺らす彼の目はこの世で最も愛おしい瞳。世界で最も愛するべき瞳なのだ。
こんな間近で見ているのに、目を閉じているせいで彼の瞳が見れないことはとても悲しいことだ。こんなに可愛い寝顔を浮かべる彼を、なぜ「白い死神」と恐ろしい例えをするのだろうか。
確かにこちらへ反抗的な目線を向けたりすることはある。百発百中で体の一部のように自由に銃を操ってみせるその姿は些か恐ろしさを感じるところは否めない。
手を繋ごうとするといつも弾かれ、睨まれ、抱きしめようとすると頭を叩かれたり蹴られたりすることもある。
だが、それも全て『好きの裏返し』というやつなのだろう。そうだろ?フィンランド!
彼の不器用さが邪魔して俺に素直になれないだけ。目線、顔つきなどで彼を「白い死神」と恐れるだなんて虫唾が走る。
そんな先天性的な変えようのないもので彼を測るだなんて…知ったような口で虚像のフィンランドを語らないで欲しいものだ。
フィンランドの手に触れてみると、氷を触っているかのように冷たかった。可愛らしく俯きながら眠る彼の姿に、心の中でとある感情が湧き出る。なんて可愛いのだろう。好きという感情が脳内を独占する。
俺は周囲に誰もいないことを確認したあと、そのフィンランドの氷のような手にキスを落とした。
…こんなことしたとバレたら彼は激怒するだろうか。馬鹿野郎と罵られるのだろうか。そんな考えは彼の寝顔を見た途端打ち砕かれる。キスしたこっちの顔が火照っている感覚がする。
背徳感でニヤニヤと口角が上がってゆくのを感じる。
…今日のフィンランドには、こう手にキスを落としても少し音を立てても起きない。それほどぐっすり眠っているのだろう。
このままいったら寝坊確定…というか既に寝坊してるが構わない。こんな顔を見れるのはきっと俺以外に居ないだろう。
「愛してるよ、フィンランド。」
君が望むなら何でもしよう。キリストに背く行いだってしてみせる。人肌が恋しいなら閨事でさえ。まあ、それに関しては専門外なんだけどね。
フィンランド、そろそろ起きても良いんじゃないか?ああでも、起きなくてもいいな。ずっと永遠にこの死神ではなく天使のような寝顔を見つめるのも良い。
フィンランドは、「どうして起こしてくれなかった」と怒るんだろうか?
……それとも、まだここの生活に慣れずに、前と同じくずっと呪文のように「ここから出して」とでも喚くのだろうか?ああ、どちらにせよ愛おしい。
昨日はここから出ようとするフィンランドに対して少し酷いお仕置をしてしまった。そのせいできっと疲れてこんな長い時間寝てしまっているのだろう。
「フィンランド、ずっと一緒にいようね。」
氷のように冷たい彼の手を強く握りしめる。彼は何も反応しない。起きる気配すら感じない。
まるで可愛らしいお人形みたいに動かない彼はなんて可愛いのだろう。彼の体の部位を切り取ってガラスケースに入れて自室に飾りたいところだ。愛おしい。ああ、なんて愛おしいのだろう!好きという感情が土砂崩れのように脳に流れ込んできて正気を失いそうになってしまう。ああ、愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい。可愛い。好きだ、大好きだ。彼のことを俺はきっと、いや絶対に世界一愛している。
フィンランドも絶対に絶対に俺を世界で一番愛してくれている。もう俺もフィンランドもきっとこの愛の沼から抜け出せない。そうだよね?フィンランド。
「愛してるよ、大好きだ。フィンランド。」