コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「イマジナリーフレンドの出現、それには”条件”があるの」「……条件?」「あなたのパターンを話す前に、イマジナリーフレンドについての簡単な説明をします」曰く、それは自分の中だけで生きている”空想の友人”、生み出した本人は会話をしたり、遊んだりすることもできる。主に幼児期に生成され、青年期には本人の記憶から消えてしまうことが多いそうだ。だが当然、例外もある。稀に青年期以降も関係が継続していたり、新たな”友人”が生み出されるケースもあるらしい。「あなたの場合は幼児期に起きた誘拐事件が原因となって”亜無”という想像のヒーローが生成された」「待ってください、それだと矛盾します!俺は師匠と違って”勘”が鋭くないし”勇敢さ”だって師匠の方が何倍もあるんです!俺にないものを何故、想像が!」「それだって、本来は全てあなたの先天的な能力だとしたら?」「そんな……!」「あなたを事件の恐怖と苦痛から救うために、あなたの優秀な部分が形に成ったのだと思うの」ここで彲さんは俺を待たせて下に行き、暫くしてあるものを持って戻ってきた。「それは…うぅ!くっ、俺は……あがっ…”私”は―」「そうね、思ったとおりだわ」彲さんの手にはお洒落なティーカップが。「師匠さんの出現条件は[珈琲豆を挽いて淹れられた珈琲のアロマ]」「そ…んな……師匠は、”私”の―」「ねぇ、一人称が変わってるわよ」「―!!!」「あなたは師匠さんがかつての誘拐犯の復讐によって殺されたと信じてやまなかった。この場合の亡くなるは、イマジナリーフレンドを失うということ。今、本来の性格や能力があなた自身に還ろうとしている」「私、ぐがぁ!……俺は!!俺だ!!うっ…」嫌だよ、師匠にはずっと側で見守っていてほしいよ……。”腕”を上げたなって誉めてほしいよぉ……。気がつくと泪が溢れていた。「怖かったのね、辛かったのね、いっぱい泣いていいのよ」彲さんの胸に包まれて俺はただひたすらに泣いた。14年ぶりに、こどもみたいに泣いた。そして泣き疲れて、こどもみたいに眠った。 「……。」ベッドの上で目を覚ます。「彲さん?」添い寝されていた。「あら、お目覚め?」俺は急いでベッドから立ち上がる。ドキドキする!「はい、ご迷惑をおかけしました!」「その様子だと吹っ切れたようね、顔が明るくなってるわ、よかった」「長い時間、すみませんでした。他の患者さんにも謝らないと」「今日はあなたともう一人しか来ないから大丈夫よ、でも、そうね。そろそろ来る時間ね」彲さんにお礼を言って俺は一階に降りた。お、女性がいる、男性は久々だって言ってたもんな。俺はそのまま帰ろうとしたが些細な違和感に足を止めた。あれ?この女性、どこかで会ったことがあるような。マスクをしているが綺麗な目元に見覚えがあった。「あの、北戸さん?」 彼女はそのつぶらな瞳に、泪を湛えていた……。 次回 第8話「吐露」