テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「位置について!」
出久はスタートラインに立っていた。
「……何引くんだろ」
「緑谷、緊張してる?」
「ちょっとだけ」
「大丈夫だって!」
友達が笑う。
少し離れたところでは、勝己も自分の出番を待ちながら出久を見ていた。
「出久!」
「かっちゃん!」
「転ぶなよ!」
「もう、それ何回目?」
「大事なことだろ」
「分かってるよ!」
笛が鳴り、出久たちが一斉に走り出す。
机の上に置かれた紙を一枚取って、出久が開く。
「……!」
そこに書かれていたのは――
『大切な人』
「…………えっ」
観客席から、ざわっと声が上がる。
「何それ!」
「大切な人って誰!?」
出久は紙を見つめたまま、きょろきょろする。
「大切な人……」
そして、真っ先に目に入ったのは。
「かっちゃん!」
勝己のところまで走っていく。
「かっちゃん!」
「何だよ」
「これ!」
「……」
「『大切な人』だって!」
「……で?」
「だから、かっちゃん!」
「は?」
「一緒に来て!」
出久が勝己の手を掴む。
「おい、待て」
「早く!」
「俺でいいのかよ」
「いいよ!」
そのままゴールへ向かって走り出す。
観客席が一気に騒がしくなった。
「えええ!?」
「爆豪くん!?」
「緑谷さんのお題『大切な人』って……」
「幼馴染だよね!?」
「幼馴染だよ!!」
勝己は走りながら、隣の出久を見る。
「お前……」
「なに?」
「迷わなかったな」
「だって、かっちゃんが一番に浮かんだんだもん」
「……」
「どうしたの?」
「何でもねぇ」
勝己の耳が赤くなる。
「かっちゃん、また赤い」
「走ってんだから暑いんだよ!」
「ふふっ」
ゴールに到着し、係の先生が紙を見る。
「『大切な人』……なるほど」
先生は二人を見比べて笑った。
「確かに、大切だな」
「うん!」
出久が嬉しそうに頷く。
勝己は少し気まずそうに目を逸らした。
「……おう」
戻ってくると、友達が出久を囲む。
「緑谷!」
「何?」
「お題見た瞬間、爆豪くんのところ行ったよね!?」
「うん」
「迷わなかったよね!?」
「うん」
「なんで!?」
出久はきょとん。
「だって、かっちゃんだから」
「……その答えが一番強いんだよ……」
勝己は横で聞いていたが、何も言わない。
ただ、少しだけ嬉しそうだった。
「かっちゃん」
「ん?」
「一緒に来てくれてありがとう」
「……別に」
「僕、嬉しかった!」
「……そうかよ」
出久が笑い、勝己も小さく笑った。
その二人を見ていた友達が、ぽつり。
「……あの二人、ほんとに幼馴染なんだよね?」
「そうだよ」
「なんかもう、何見てもカップルみたいに見えてきた」
「それは分かる」
「……分かっちゃ駄目だろ」
出久推し
172
185
コメント
1件
わあ、もう最高でした……!「大切な人」ってお題が出た瞬間、迷わずかっちゃんのところに走る出久くん、可愛すぎます。しかも「だって、かっちゃんだから」って、それが答えのすべてですよね。かっちゃんの耳が赤くなるところも、嬉しそうな小さな笑顔も、全部が尊すぎて胸がきゅんとしました。素敵なエピソードをありがとうございます!