テラーノベル
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星々が静かに瞬く夜空の下、部屋の中には穏やかな時間が流れていた。
王耀は手向けられた花を見つめたあと、ゆっくりと床に膝をつき、布団に眠る時雨の傍らにそっと腰を下ろした。もう二度と動かないその手を取ると、自分の頬に優しく当てる。かつて温もりをくれたその指先はひんやりとしていたが、彼にとってはそれが今や、彼女が確かにそこにいたという何よりの証だった。
「さてと……、あまりいつまでも湿っぽい顔をしてたら、時雨に『耀さん、情けないです』って怒られそうアルな」
誰もいない部屋に向かって、王耀は少しだけ自嘲気味に、しかしどこか優しい笑みを浮かべた。
彼女が生きていた数十年の間、彼らはたくさんの時間を共に過ごした。朝の淹れたてのお茶の香り、庭の季節の移り変わり、くだらないことで笑い合った夜、そして――あのお酒の匂いが混じり合った、不器用で甘い夜の記憶。
それらすべてが、色褪せることなく、まるで昨日のことのように彼の脳裏に鮮やかに蘇ってくる。
人間から見れば、王耀の生きる時間はあまりにも長く、そして過酷だ。愛した者が次々と去りゆく孤独に耐えることが、彼の宿命だとずっと思っていた。
けれど、時雨は教えてくれたのだ。愛することは、失うことの悲しみだけではなく、消えない光を胸に灯し続けることなのだと。
王耀はゆっくりと立ち上がり、障子を開けたままの窓辺に歩み寄った。
夜風が彼の長い髪をふわりと揺らす。外の世界は相変わらず静かで、冷たく、そしてどこまでも広大だった。歴史の波はこれからも容赦なく押し寄せ、時代は移り変わり、世界は形を変えていくだろう。
しかし、彼の足取りはもう迷っていなかった。
「……行くアルよ、時雨」
呟いた声は夜風に溶けて消えたが、その胸の奥には、世界で一番愛した女性の温もりがしっかりと息づいていた。
王耀は振り返り、静かに眠る妻の姿に最後の一瞥をくれると、背筋をまっすぐに伸ばし、新しい朝へと続く扉を開くために静かに歩き出した。
二人の物語は幕を閉じたが、彼の中でそれは決して色あせることなく、永遠に生き続ける。星の光に照らされたその背中は、かつてないほどに穏やかで、そして強く、誇らしげに輝いていた。
めーし
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瑞希 流星♟也中
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コメント
1件
ああ、もう……泣いたわ。このエピソード、静かで、それでいてすごく熱いものが込み上げてきた。 時雨がもういない世界で、それでも彼女の温もりを胸に生きていく王耀の決意が、ひたすらに尊い。「愛することは、消えない光を胸に灯し続けること」って台詞、胸に刺さりすぎて吐きそうになったよ……。最後の背中、誇らしげに輝いてた。本当に良い話だった。完結?まだ続くのかな、続くならめっちゃ読みたい🔥