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「…
………
………………わぁ。」
辺りを見渡すと真っ白な世界。
無知であり、無垢な子は脳を刺激する色無しの光に照らされ、自分の存在の有無すらも気にしなかった。
右手を見れば、白で覆われたような青い花々がきらきらと個々で咲いている。
左手を見れば、白で覆われたような黄色の花々が俯くようにみんなで咲いている。
この世の全てが白であり、今までを覆い隠す彼女の色はここで一生の間変化することは無い。
なぜなら、彼女は無知であり、無垢であり、
蕾であるからだ。
「あぁ……わぁ……わっ……」
彼女は喋れない。それは無知であるからだ。
彼女は考えられない。それは無垢であるからだ。
彼女は感動している。白に覆われた青い個々の花々よりも、白に覆われた黄色いみんなの花々よりももっと奥の白い世界に。
その一点だけを見つめ、世界を見ている。
だから、彼女は無知である。無垢である。
彼女の下には世界が広がっている。
それは彼女の栄養だった。
無知な彼女に必要な知識。
言語能力。思考能力。表現技法。
身体能力。理想と現実。真っ黒な世界。
彼女は無垢だ。それらを知る必要はない。
あの子は死んだ。そして、生まれ変わった。
不完全な存在に。でも、彼女は不変でいい。
彼女の周りには誰もいない。
大人も子供も男も女も。
彼女は自由であった。感動し、なんの無駄なことも考えないからだ。
人だ。彼女は人だ。
髪が生えてる。目が付いてる。口がついてる。耳がついてる。鼻がついてる。皮膚がある。
心が付いてる。
彼女はこれから失われる。
だから、蕾は変わる。全てを受け入れる。
殺すことは罪じゃない。
それは、死んだという事実を曲げた妄言なのだ。
だから、彼女は死んだ。
白をみた。空をみた。ふぅっと舞った。そうして眠った。
世界は白いままなのに。