テラーノベル
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本来なら先生とイチャラブをするつもりだったのに、家に帰っても株のことが気になって僕はそっちに意識が行ってしまっている。せっかくお父さんが「自宅じゃないと眠れないから」って折り紙のある自宅へ帰ってくれたのに!
だめだなぁ、僕は。
先生がいちばん大切とか言っておきながら、胸騒ぎひとつ消化できずにこうして時間外取引の値動きを追って、どうマーケットに向き合うかということで頭を占めている。
だから先生にかっこいい告白もできないし、未だに手を出すこともできないんだ。
部屋でモニター数台を交互に睨みつけ、頭をガリガリ掻いていたら、ノックの音がした。
『睦月君、入ってもいい?』
「うん」
先生だ。
「お茶淹れてきたの。どうぞ」
アイスグリーンティーを持ってきてくれた。柔らかく爽やかな香りがする。
「いただくよ、ありがとう」
目の周りを少し揉んでから、先生の持ってきてくれたお茶を飲んだ。うまい。
「おいしい」
「よかった。根詰めすぎないようにね」
「うん」
こうやって先生と偽装でも夫婦関係を持つことが、どれだけ僕にとって幸せか…どう告げたら彼女に伝わるのだろう。でも、今はだめだ。頭がぐちゃぐちゃでまとまらない。
「遅くなると思うから先に寝ててよ。月曜日、コンペもあるし。資料のチェックもするから」
「わかった。おやすみなさい」
先生が部屋から出るのを見届けると、ふうーと思わずため息が漏れた。
ほんと、なにやってんだろ僕。
でも、先物の値下がり方がおかしいし、明日も暴落しそうな気がする。
翌日、僕の予感は的中した。日経平均株価は大幅に続落、終値は前日比2216円63銭(5.81%)安の35909円70銭だった。
終値で節目の36000円を割り込み、およそ半年ぶりの安値を付けたのだ。下落率は2020年3月13日以来の大きさ。下げ幅はブラックマンデー(香港を発端に起こった世界的株価大暴落の日がこう呼ばれている)翌日の1987年10月20日(3836円安、14.9%安)以来、およそ36年10カ月ぶりの大きさで、史上2番目の下げ幅になった。
日中はTENGAへの電話が鳴りやまなかった。
僕たちの会社は主に顧客から預かったお金で資産運用をしているが、竜志さんがいるので証券会社時代からの顧客もいる。なので個別株の取り扱いや推奨銘柄についてのアドバイスもやっている。
このままで大丈夫なのか、おたくを信用して預けている金は戻ってくるのか――しかし僕たちは一貫してこう答え続けた。
「僕たちを信用してください」
「無理な賭けをしている場合は、直ちにヘッジを持ってください」
「ここが底だと思って買いポジションを持ったりしないでください、特に信用買いはぜったいにしないでください」、と。
事務所の小さな電話では対応しきれず、僕や潤、竜志さんの携帯は常に鳴りっぱなしだった。こんなことは初めてだ。
「東証プライムの値下がり銘柄数は1626・全体の98%、全面安の展開…か」
マーケット終了後、潤が最終的に出てきた日経に関する記事を読み上げた。
「でも、この中でも値上がりしている銘柄もあるからすごいよね」
僕は感動を覚えてそう言った。全面安局面でも14銘柄は上がった模様。
雨鈴蓮花🫧ラムネ中毒者🫧
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コメント
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このエピソード、すごくいいところで心がギュッとなりました。先生とのイチャラブを我慢してまで株の値動きに頭を悩ませる主人公の、責任感の重さと自分の弱さへの自己嫌悪が痛いほど伝わってきて…。アイスグリーンティーを持ってきてくれる先生の優しさが、逆に胸に刺さりますね。全面安の中でも上がった銘柄に「感動」を覚える場面、投資家としてのプロ意識みたいなものが感じられて、読み手としても熱くなりました。次、どうなるのかすごく気になります!