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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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初回講習から数日後、召喚モンスターのダンジョン外召喚許可証が発行された。

今回の許可証で無制限で召喚が認められる範囲は、政府に認められた私的・公的訓練所内、

スキル制限を掛けられる必要があるのが召喚主の私有地もしくは居住不動産の敷地内まで、

最大限の制限を掛けることと、二ヶ月毎の更新を条件に居住地所在の町内も認められていた。

以降は冒険者としての実績等を鑑みて、召喚可能範囲が広がっていく事になる。


許可証が発行されたのを報告すると、両親が待っていたとばかりに召喚をせがんできた。

契約事項の問題もあるし、いろいろ用意した上で早速召喚する。

まずは、母さんが待望していたであろうウルフ二匹だ。

王王王の契約の時はアレだったがダンジョン内の様子を見るに問題はなかろー、と



そんな事を思っていた時期が私にもありました



初手:小野麗尾 守 王王王を召喚

第二手:王王王 小野麗尾 守に突撃

第三手:小野麗尾 守 王王王の突撃を腹部で受け止める。 が、失敗…… 圧倒的失敗……! 庭に押し倒される

王手:王王王 小野麗尾 守の顔を嘗め回す、ひたすらに嘗め回す……!


「わんわんおー」

そんな間の抜けた鳴き声を上げて、くっ付いてくるナマモノ、駄狼、いや駄犬を引っぺがす。

送還しようと思ったが、まだ対価を支払っていない上なんとなく悲しそうな感じだったので仕方なく取りやめる。

足に擦り寄ってきたが、勢いは付けていなかったので背中を撫でてやる。

「わんわんおー↑」

嬉しそうに尻尾を振る王王王を見て母が一言


「まぁ、とても仲がいいのねぇ」


そう見えますか、見えますよね。向こうからの一方的な親愛なんですけどね!


続けて呼んだセキローは大人しかった。指示にも従順で主人に迷惑を掛けまいとする心意気を感じた。

同じウルフ種なのに、この違いは本当に何なのか。

と、思っていたら王王王が俺から離れて行った。

何となくダンジョン召喚時の王王王の様子と雰囲気が同じような……

[個体特性]《三位一体》と[個体技能]《主格交代》から推察すると多重人格、いや多重犬格なのか?


「わん」


途中から考えていた事を呟いていたのか、正解だという意思が込められた声を掛けられる。

本契約した召喚モンスターとはこんな感じで声に込められた意思を感じ取る事ができるのだ。

ちなみに王王王が召喚直後に発した最初の「わんわんおー」には、


「あ、ごしゅじん、ごしゅじんだ。ごしゅじんにあえた! ごしゅじんがよんでくれた! うれしいな、うれしいな ごしゅじんさまよんでくれてありがとう! ぼくごしゅじんさまによんでもらえてこんなにうれしいよ!」


意訳するとこんな意思が込められていた。 長いわ! どんな圧縮言語だ!


ウルフ二匹は母さんに引き渡して毛づくろいをしてもらう事に。

契約内容として俺がする事になっているのだが、母さんが是非にと押してきて、ウルフ2匹もそれで良いとのことだった。

身づくろいは王王王だけで良いのだが、母さんはセキローにも手を出していた。

一匹だけだとアレというのは分かるけど、契約的にはどうだろうなぁ。

まぁ、待遇を悪くした訳でもないからいいか。


続けて小鬼二匹とバルクさんを呼ぶ。

こちらは父さんが大喜びで、指輪がどうとかはしゃいでいる。

今日は契約の対価の支払いで読んだ事を伝えると、小鬼二匹は喜んで、バルクさんは家主である父さんに挨拶をした。

父さんには「グオゥ、グルァグファ」としか聞こえなかっただろうから、

「召喚主の父君殿、本日はお招きに預かり感謝する。」

と言っている旨を通訳したところ、父さんが偉く感激してバルクさんにいろいろ話しかけ始めた。当然向こうは日本語が分かる訳ではないので、またしても俺が臨時通訳を勤める事に。


一通り話し終えた頃に、庭に大型のブルーシートを広げ全員分の昼食の準備をした。

母さんが朝早くから腕によりを掛けて作った料理を車座に囲み、食事を始める。

父さんは相変らずバルクさんと小鬼達に話しを聞き、その生態や武勇伝に感動して、

母さんは父さんの嬉しそうな顔を満足そうに眺めていた。

その隣でウルフ二匹が骨付き肉を齧り、俺はひたすら通訳する傍らで料理を摘まんでいた。

料理には全員満足したようで、小鬼達はまた次も同じのをとか言い出しそうだったので先手を打って今回は特別にと釘を刺しておく。危ないところだった。食材費は後で俺に回ってくるのだ。贅沢はハレの日に。

少し昼休憩を取った後、小鬼達にはお土産代わりに対価の残り食事二食分の弁当とダンジョン用の装備を持たせて、バルクさんには弁当と武器の手入れ用具を渡して送還する。

MPが掛かるのは召喚した時のみで、召喚中に時間経過で消費があるわけではないのだが昼食前後からご近所さんの目が……


隣近所には事前に連絡したけど通行人の人たちが物珍しさで庭を覗いてくるのは些か閉口するのだ。

写真撮影してくるのもいた上、その内の一人が家のチャイムを押してきて、何をしやがるのかという思いで若干イラッとする事もあったが話を聞いてみると、その人は物珍しさで写真を撮ったが盗撮をしようと思っていたわけではなかった、申し訳ありませんと謝って来た。

撮影したデータを全部消しますので許してくださいと言っていたので家族・モンスター達と相談したところ、モンスター達は何が問題になるのか分からないようで、両親は特に気にしないとの事だった。俺は自分のテリトリーに他人が土足で踏み込んできた印象を受けていたので若干気になったが、バルクさんは大きいから目立っただろうし、ご近所では冒険者が居ると言う話を聞いた事もない。

モンスターをテレビやネット以外で実際に見た事のある人はほとんどいなかったんだろうなぁ、と思うとすぐに飽きるだろうしと思い直し、個人のみの利用かつ事前に許可を申し出てくれれば盗撮でなければ庭先の撮影データは消さなくていい事を伝えた。


庭の片付けを済ませた後、ウルフ二匹を連れて散歩に出かけた。

散歩コースは事前に決めていて、二匹とも今日はそれで良いとの事。 今日は……?

そこはかとなく次回以降に波乱の予兆を残しつつも散歩は何事も無く終了。

通行人の皆さんも俺が連れているのが、まさか狼とは思わなかったのだろう。

通行犬の皆さんは逃げ出そうとしたり服従のポーズをキメたり激しい反応をしていたけど。

飼い主さん共々申し訳ないことをした。次も迷惑を掛けると思うけど許して欲しい。


散歩の後でこちらもお土産持たせて送還。

母さんは夕食も一緒にと思っていたかもしれないけど、甘やかしすぎるのはイカンと思うのです。


そして夕食後。日が沈みきり月明かりが出ているのを確認し、庭に折りたたみのテーブルセットを展開する。

ティーセット良し、お茶菓子のスコーンとジャム・クッキー良し。父さんと母さんも既にスタンバイ済みだ。

本日最後のゲスト、マリオネットを呼ぶ。


<<あら? こんばんわ。私はまだダンジョンに行っていないのだけど、今日はどうしたのかしら?>>


うまい言い回しは出来そうにも無いので、

「ええ、ですがまぁせっかくですので。気になるようでしたら前払いと言う事でいかがでしょうか?」


<<ふふっ それでは貴方の好意として本日はお呼ばれさせていただきますわ>>


「あ、父さん母さん今の彼女の発言(念話)だけど通訳は必要かな?」


「……はっ いやすまん大丈夫だ。少し呆けてしまったがちゃんと聞こえているし、意味も理解できる。日本語を話せるとは本当に意表を突かれたと言うか、何と言うか……はっはっは」


「ええ、とても日本語がお上手なのね。ビックリしたわ」


もっと指摘する点は(主に顔とか)あると思うのだが、二人ともそこはスルーする事にしたようだ。


月夜のお茶会は一時間ほど続いた。

マリィさんは紅茶に若干こだわりが有る様で、次回の紅茶の銘柄は「もしよろしければ」という言い回しの御要望で指定を頂いた。

今日は夜が明けるまで庭に居るとの事で、小野麗尾家一同は途中で自宅に戻る事を申し訳なく伝えながら就寝に付いた。




事件が発生したのは午前0時頃。




庭から絶叫が響き、駆けつけた俺と両親が見た物は物静かに佇むマリィさんと、向かい側に置いたままにしておいた椅子に横たわるように座っている男が一人。

ご近所さんの通報で駆けつけた警察官が事情徴収したところ、男は昼に小野麗尾家の庭先を覗いた通行人の一人で、モンスターが寝ている姿を見てみたかったので庭に入ったとの事。

庭で何があったのかは何故かまったく覚えていないようで、本人が思い出そうとすると思い出せないにも拘らず体が震えだしていた。

不法侵入として起訴しますか、と聞かれたが極めて短時間の家族会議の結果、不起訴になった。

たしかに不法侵入はされたのだが家に被害は無く、どちらかというと向こうの方が被害者に見えるという俺の主張が決め手となった。


決して、マリィさんの御手をこれ以上煩わせるのが恐ろしかったのではない。(強弁


最後はマリィさん対策、もとい環境への配慮に頭を悩ませながら早朝に帰宅する事になった。

いやぁ、充実した一日でしたね!(白目

ある高校生冒険者のAdventurer's Report 転載版

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