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幻竜ジェロード改め、竜人ジェロード。
彼を引き連れて六駆はヌーオスタ村に戻って来た。
「あっ! 六駆くん! 良かったぁ! ちゃんと帰って来てくれたぁ!!」
「おかえりにゃー。莉子ちゃんが心配してたよー? 六駆くん、そのまま現世に帰るんじゃないかってさー」
「その手がありましたか!!」
「六駆師匠は心の裏表のない人です! むしろ、心がスケルトンです! いつでも透けて中身が見えるです!! みみっ!!」
チーム莉子、再会を喜ぶ。
それは良いが、後ろにいる体長3メートルくらいの竜人について説明しろ。
チーム莉子はもう慣れているのか「六駆くんがまた変なの拾って来た」くらいにしか思っていないが、ヌーオスタ村のホマッハ族には経緯を聞く権利がある。
ジェロードはこれまで、積極的にスカレグラーナの民を虐げてはいなかった。
だが、直近で異界の門の守護を帝竜バルナルドから命じられ、その際にヌーオスタ村の男たちに対して攻撃を加えていた。
幸いな事に彼らの耐久値が異常だったため死者は出ていないが、負傷者は多く、「今日からこいつ、仲間になったんでよろしく!!」では済まされない。
「あー。ええと、村の皆さん。ちょっとお話が」
そうである。
六駆は責任を果たすべきだ。
「この後ろにいる、イカした翼の生えた竜っぽい人、元幻竜ジェロードです。あのー。まあ、そのー。なんやかんやありまして。今では心を入れ替えて……は、ないか! 心は入れ替えてないですが、強いヤツと戦いたいとか戦闘民族みたいな事を言うので、これから始まる冥竜と帝竜を相手に戦力になってもらおうかと思います! まあ、怪我させられたり色々あったと思いますけど、僕も彼の背中にホグバリオンぶっ刺したりしたので! ね!! そういう訳で!! はい!!」
責任を果たせ。
これは、レアおっさんが繰り出す「中途採用の社員の紹介をおざなりにするせいで、新人と元からいる職員の双方に変な空気を与える」と言うスキルである。
ダメなおっさんの持つ108ある必殺技の1つだ。
「ちょ、ちょっとぉ! 六駆くん、それはさすがにダメだよぉ!」
「うむうむー。ルッキーナちゃんたちの心情的にもちょっとアウトだにゃー」
「六駆師匠がうちのおじ様と重なる良くない時のパターンです。みっ……」
チーム莉子も今回の暴挙には異を唱える。
ヌーオスタ村の皆も早く罵詈雑言をぶつけると良い。
それも、とびきり活きの良いヤツで頼む。
「幻竜殿。いや、竜人殿。ひとつ聞かせてくだされ。お主は冥竜と帝竜を倒したのち、どうされるおつもりじゃ?」
いいぞ、村長。
ジェロードは答える。
「貴公らに爪を立て、炎を浴びせた過去は消えぬ。我は死に場所を探しておるゆえ、貴公らが死ねと言うのならば、謹んで拝承しよう。無論、今すぐにと言う事であれば、逆神六駆にこの喉笛を叩き斬ってもらって構わぬ」
「その覚悟があるなら、別にワシらは構わんよ?」
「おお! 力が強そうだし、農業の手伝いを頼めるか?」
「うちの釜の調子が悪いんだが、ちょっと火を噴いてくれると助かる!」
ホマッハ族の物分かりが良すぎる問題が発生。
「えっ!? 許すんですか!? この殺戮のために生きて来た邪竜を!?」
六駆よ、お前は黙れ。
死ぬ気満々だったジェロードを勝手に劇的リフォームしたお前は黙れ。
「いや、まあ、ワシらも鳥などを殺して食べますからな。種族が違えばそう言う事もありますじゃ。よし、歓迎の32人バトルロイヤルをするぞ!!」
「いやぁ、愉快な人たちだなぁ! あっはっは!」
なんだか話が纏まった気配の中、クララが六駆に確認したい事があると申し出た。
「六駆くんも大人として立派だにゃー。ゴールデンメタルゲルの恨みを水に流してあげるとかー。お姉さんは感動したぞなー」
「はっ!? はぁぁぁぁっ! ジェロードさん、やはりあなたを殺します」
このサイコパス、情緒不安定が過ぎる。
莉子がリーダーとして、有栖ダンジョンで起きた六駆おじさんチョイス・一番悲しい思い出をジェロードに説明した。
竜人は六駆に頭を下げる。
「それは知らぬこととは言え、すまぬ事をした」
「困るんですよねぇー。そうやって謝って? 謝る側は気分が良いでしょうけど? 謝られる側としては? このシチュエーションで許さなかったらこっちが悪者みたいになるじゃないですか? そういうの、僕は本当に嫌だなぁ!」
逆神六駆、今度は悪質なクレーマーみたいになる。
クララはこの男を動画に録って、SNSで拡散すると良い。
「代わりになるか分からぬが、貴公と初めて見えた異界の門に、我の爪と翼が残っていると思う。アレは恐らく、貴公らの世界では希少価値が高いと愚考するが。いかがだろうか?」
「南雲さんやーい!! ちょっと来てくださーい!!」
サーベイランスがやって来る。
『逆神くんね、私を筋斗雲みたいに呼ぶのはヤメてくれる? 呼ばれたら来るけども。もう少し上官に対するリスペクトと言うものがだね』
「そんな事は良いんです! 古龍の爪と翼、協会本部は買い取ってくれますか!?」
『私がちょっと目を離した隙にまた意味の分からない事になっているのは分かった。そりゃあもう、争奪戦だよ。各監察官室で取り合いが起きる。500、いや、700万くらいにはなるんじゃないか?』
六駆は「それが聞きたかった!!」と言って、ジェロードに右手を差し出した。
「これから、共に戦いましょう!! ね、過去の遺恨は忘れて!!」
「貴公が貴公の世界でも異端者であるという事は我も理解した」
こうして、強力な仲間が増えた。
勢いそのままに古龍の住処へ殴り込みをかけるのか、チーム莉子。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、コンバトリ火山では。
冥竜ナポルジュロの能力によって、事の成り行きが全てバレていた。
「これは驚き申した。よもや、竜を人に変えるスキルを持つ人間がいるとは」
「余も正直なところ、軽く引いておる。しかも、あの者の名は逆神と言ったが?」
「ははっ。恐らくですが、逆神大吾の縁者ではないかと思われまする。さすれば、あの者の異常な強さも納得ができるかと」
「その上、ジェロードが懐柔されたか。冥竜ナポルジュロよ。貴公ならばあの姿になったジェロードに勝てるか?」
「そこは問題ないかと存じます。姿が小さくなった分、明らかに古龍の形態よりも弱体化しておるようで、煌気も随分と矮小になりましたゆえ」
「ならば、こちらから手を打とうではないか。貴公、すまぬが手を汚してくれるか」
冥竜は帝竜の意を汲み取り、「ははっ。拝承つかまつりました」と答える。
「王都にて捕らえておるホマッハ族を使いましょう。幻竜ジェロードは武士道精神などに目覚めた愚か者ですが、我らは愚行を犯しませぬ。人質を取れば、いかに強大な力を持っていても人の心と言う脆弱なものが邪魔をするでしょう」
そう言うと、冥竜ナポルジュロは王都・ヘモリコンに向けて飛び去った。
両陣営に激しい動きのある、人VS古龍の争い。
現在、六駆が使い慣れないスキルでハッスルした影響で一時的に疲弊しているのは、古龍たちにとっての好材料。
だが、それよりも大きな不安材料もある。
逆神六駆に人の心を求めるのは間違いである。
そんな事、この戦いを見守っている者なら全員が知っているのだ。
コメント
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ジェロードの“死に場所を探してる”覚悟に、ホマッハ族があっさり「別にいいよ」って流す緩さがもう……この世界の優しさにじんときました。六駆さんの情緒不安定っぷりも笑えるけど、最後の冥竜の策謀で一気に空気が変わって続きが気になる! 人質って……大丈夫なのかなあ。