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男は朝、目を覚ました。
うとうとしながら水の入った器に口をつけ、ゴク〃と音を鳴らして水が喉を過ぎていく。
毎日のように規則正しい生活をしている男は飽き飽きしていた。
体調に被害はないし、友人関係も別にどうと言うことはない。
ただ友人と居る時間があまりに多すぎる。一人の時間が全くもってない。男は住み家から外へはでない。だがそれは友人が常に家の中いるから、逆効果である。
その上自由がないのだ。狭い部屋の中でしか行動を許されない。部屋から出れば大騒ぎになる。
男はずっとこの日常に違和感を感じていた。
無機質に繰り返される音楽が今日も流れはじめ、外での人の声が多くなってくる頃。
「俺今起きた」
隣で眠っていた友人が目を覚まし、眠たそうに欠伸をした。
「遅いな」
無関心極まりない。人の起床時間など知って何の特にもならないし、退屈なこの日々から逃れるきっかけにもならない。
「冷たいよな、お前」
友人が少し尖る口調でそう言った。確かに尖っていたが、針先は柔らかいような物言いだった。
「この生活に嫌気がさしてるだけだ」
溜め息をついてそう答える。その回答を聞いた友人は、馬鹿馬鹿しい、体調不良にならないだけマシ言えと文句を言った。
「…こうは言ったが、退屈なときもあるよな」
我に返ったのか、今度は男に共感の念を見せてきた。男はその感情の揺らぎ具合に困惑しつつも、共感してくれたことがどこか嬉しそうに見えた。
飯の時間になり、皆それぞれの飯の場所につく。こことぞばかりに喰らい付く者、他者の飯をねだる者。
いつもこの時間は騒がしい。でも男には関係ないように感じた。その上それこそ馬鹿馬鹿しく感じたのだ。毎日味は変わらない。男の精神がやられただけなのかも置いておいて、よくも飯ごときでそんなに昂れるものだなと感心まで表すほどだ。そんなことを考えていると、いつも通り男は飯をねだられる。が、これも生きる為だと言い聞かせていつも礼儀良く断っている。
そういうといつもそれをケチというし、飯を無理やり食べられることもあるが、さほど興味はない。
食べ終わると、毛深い手を床に置けばそのまま男は寝転がった。
他にすることもない。若い者は玩具などで遊んだりしているが、あまりにも乱暴な遊び方しかないためすぐに壊れてしまう。
壊れたとしても、数日後には元通りになっていることが殆どだが。
再び男は眠りにつく。男がいつもいる部屋の隅で人間の夢をみている頃。
「みて、あのライオン寝てるよ」
「ほんとだ、かわいい~」
ガラスを一枚はさんだ先に黄色みを帯びた声が響く。
スマホを此方に向けて写真を撮っている。どうやらここは、動物園という娯楽施設らしい。