また少しの時間が流れた。
あれから弐十に「付き合ってみよっか」って、改めて言われて。
晴れて――というには、ちょっと気恥ずかしいけど――俺たちは正式に恋人になった。
……とはいえ、日々の生活はほとんど変わらない。朝はぎりぎりまで寝て、夜は編集、まいたけやニキたちと集まってゲーム、合間に配信したりして、飯も掃除も各々気分次第。
相変わらず、なんてことないルームシェアの日常を送ってる……ようで、でも時々、ふとした瞬間に「今までと違う」って実感する。
たとえば、こんな夜――。
「思ったんだけど。
これから俺ら、BL界隈とかなんとかっていじられても、なーんも言い返せないね?」
夜の配信を終えて、ソファでチューハイ片手にくつろいでいたキルに向かって、
弐十が笑いながら、いつもの調子で言った。
「は? いや、それは違ぇだろ」
気の抜けた声で返しつつも、キルはどこか照れているようにも見える。
「じゃあ、おっさんずラブ界隈?」
「うーん……。まぁ、どちらかと言うと、そんな感じ」
「そこはいいんかい笑」
顔を見合わせて、ケタケタと笑うふたり。
こんなふうに、どうでもいい話で笑い合えることが、今はただ、すげー幸せだと思う。
「……つーかさ」
ふいに、キルが真面目な声で呟く。
「これから、こうしてずっと一緒に暮らすの、やっぱ変な感じすんだよな」
「何が変なんだよ。元から一緒に住んでただろ?」
「いや、そうなんだけど……。前までは、“ルームシェア”だったじゃん」
「うん……今は?」
「今は……」
キルは少し考えてから、視線を逸らす。
その横顔を見ながら、弐十は静かに息を吐いて、隣に座り直した。
「……じゃあ、“同棲”?」
「あー…そうなるの、か?」
「だって、もう恋人だもん。ね、トルテさん」
弐十の腕が自然と伸びて、キルの肩をぐいっと引き寄せる。
最初は少し驚いたキルだったけど、やがて力を抜いて、そっと身を預けた。
「にと…やかましいって」
「照れんなよ笑」
ソファのクッションが、ふたり分の重さで少し沈んでいる。
そのすぐ隣に、ずっと欲しかった温もりと、笑い声と、これからの時間が並んでいた。
重ねた時間も、すれ違った気持ちも、すべてが今に繋がってく。
――この“ルームシェア”は、ふたりが“恋人になる”までの物語だった。
room share おわり
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