「あーあ」帝王の魂はおもいっきりあくびをした「せっかくがんばってみたのに」
哲学者はそっぽを向いている。
「先生。さっきから何見てるんですか」と帝王の魂が言った。
「さっきから」といって哲学者の魂は笑った「もう三十年は経つんだけど。もちろん、あの星でのカウントの仕方で」
哲学者の魂は地球の北半球、バルカン半島とアナトリア半島の境、ヨーロッパとアジアの境にある街を眺めていた。そこに、寝ぐせ髪で、生地のところどころ痛んだジャケットを着て、大きな鞄を肩にかけている青年がいた。
「まさか、アイツ見守ってるんですか」と帝王の魂が聞いた。
「彼は引越の仕事が入ってたんだけど、行ってみたら仕事がなかった」と哲学者の魂は言った。
「ダセェー。でも何でです?」
「人間達のエゴがつくる、不況のせいだよ。しばらくあの階段のあたりに座り込んで事務所に電話かけたりしてたけど、今さっき諦めて立ち上がったとこだよ」
青年の足は止まったり歩いたりで、方向を失っているように見えた。
「象徴は送ってるんだけどね」と哲学者の魂。
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