テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
14 バグった私と狂った君
夏祭りが終わりに近づいてきて、花火が始まろうとしていた。
あと30分。花火が終わるのと同時に私はいなくなる。
それなのに、生きてるときに言いたかった『大好きです』の言葉を何度も飲み込んだ。
嫌われたらどうしようなんて考えて、動けなかった。
結局、成仏するから嫌われたって変わらないのに___。
「ここ、結構眺めいいんだよ。」
私が連れてきたのは私が死んだ公園だった。
公園は立ち入り禁止になってて、私は公園を囲っている柵を登った。
ここで始まって、ここで終わる。
私の夢物語はここで終止符を打つ。
自分の決めたことなんだ。
周りの人たちがザワザワし出して、『ドンッ』という音と一緒に最初の花火が打ち上がる。
ピンク色のちょっとだけ、歪な形をした花火だった。
「ねぇ、さもくん。」
そんな花火を見ながら私はさもくんに話しかけた。
「私さ、元々死んでるんだよね。」
周りは楽しそうに花火を見上げているのに、君だけ顔面蒼白になっていた。
水色、紫、黄緑、青、赤、
色とりどりの花火が打ち上げられて、周りの人たちがシャッターを切っていた。
「一年前の今日、私がトラックに轢かれたのも。さもくんが参加してくれた私のお葬式だって。」
皮肉な運命に振り回せれている私も、現実逃避している君も。
バグってしまった私も、狂ってしまった君も。
全部。
全部。
「嘘じゃないんだよ。」
私がゆっくり話している間も花火は打ち上がる。
空気を読まない周りの雰囲気に気が滅入りそうだ。
「じゃあ、ななっしーって___」
さもくんのその絶望したような顔を見ているのが辛い。
強張った顔のさもくんに一通の手紙を渡す。
「この1、2週間ぐらい、確かに楽しかったんだよ?」
もう一回、生きてるみたいでさ。
遠くから放送が聞こえてきて周りの人たちがスマホを確認するような行動が見える。
「今日はもうすぐ雨だから早めに切り上げるみたいだね。」
花火が何発も同時に打ち上げられてすごく綺麗だった。
「あ、それと_____。」
忘れるところだった。
これだけはちゃんと言わないと。
最後の一発に最初と似たような桃色の歪な花火が打ち上がった。