「…で、どこ行く」
「…えっ、考えてなかったんですか」
しばらく適当に歩いていたら、またしても急に鳴海に話しかけられ。しかも聞かれたのは行き先だった。
「当たり前だろ」
さも当然かのように言うので、何やコイツ付き合えとか言うたくせに…と一瞬心の中で悪態をつく。
「えぇ…じゃあ、僕の行きたいとこでええんですか?」
「構わん」
「了。ほなカフェでも──」
「待て」
さっそくモンブランでも食べようと思い近くのカフェを調べるためにスマホを取り出す。と、鳴海がストップをかけてきた。
「はい?」
何や何やと思いながら聞き返す。
「今日は、その…」
「…その?その、何です?」
「そ、その、了、とか、隊長、とか、要らん、//」
「…え゙っ」
うつむきがちにそう言った鳴海。
えっ、は!?何やそれ…!照れながら何てこと言うとんねん…!!あかん待って、ちょ、動揺が…っ
「え、ぁ、なに、なんで、?え、どないしたんですか…?」
何とかそう聞き返す。
「き、今日はっ、プライベートだから!その隊長呼びとか了とかウザいから要らんってことだ!」
「あ、そうですか…」
何だかいつも別に期待してないのに撃沈している気がする。
ウザいて…!何やウザいて。まぁええですけど。まぁそりゃそうやろな、うん、分かっとる分かっとる。
「…じゃあ鳴海さんて呼びますね」
「…ん…」
「ほな近くにええ感じのカフェ見つけたんで、そこ寄りません?」
「構わん」
「ありがとうございます笑」
そう言って、2人で並んで歩き出す。
犬猿の仲と呼ばれている自分達がプライベートで外出なんて、傍から見れば異常な光景に見えるだろう。
「いやぁ、珍しいですね。鳴海さんが僕とデートしたいなんて」
「ッはぁ!?デッデデデートじゃねぇわッ!////」
「行き先決めてなかったんは減点ですけど」
「うるさいな!!」
鳴海がギャーギャー騒ぐもんだから、周りの人の視線が凄い。
というか、「え、あれ鳴海隊長と保科副隊長じゃね…?」と気付いて凝視する人が大半だ。
「もー、鳴海さんのせいでめっちゃ注目されてるやないですかぁ」
「元はと言えばお前が…ッ」
何か言おうとする鳴海の唇を、ふにっと人差し指で抑えた。
「ッ…!?」
「…静かにせな、次は僕の唇で塞ぎますよ?笑」
「…〜〜〜ッ!?!!?//////」
2段階で驚いた鳴海をけらけら笑い、スタスタと歩く。
…っ、あかん、僕何言うてんねん…////
羞恥で赤くなった顔を隠すようにして顔を背ける。
この男、実は遅れて恥ずかしさが襲ってくるタイプなのだ。
はー…僕今日めっちゃ浮かれとる…。気を付けなあかんな、。
そう思いながら、カフェへの道を歩いた。
カフェではモンブランタルトを食べたり、コーヒーを飲みながら鳴海と談笑したり。とても穏やかに時間を過ごした。
1時間半ほどカフェに滞在し、そろそろ出るかと席を立ったところで思い出す。
「あ、」
「あ?」
思わず零れた声が鳴海に拾われ、聞き返されてしまった。
「いや、書店寄ろかなと思うて。つまらんやろし、鳴海さん帰ってもろてええですよ」
「…今日はゲームのイベントもないし、暇だから着いてってやる」
「付き合えて最初に言うたん鳴海さんやのに…」
「うるさいぞお前そんなんだからモテないんだ」
「えぇ、酷…笑 まぁ鳴海隊長よりモテとるんでお構いなく〜」
「クッソ…!!」
悔しがる鳴海。はーこの人ほんまにおもろいなと思いながらレジにて代金を払う。
「ぁ」
「?、どうしました?」
今度は鳴海が声を漏らした。
「…別に。何も」
「そうですか。ほな行きましょ」
「ん」
何やったんやろ。まぁええか。
特に気にすることもなく、カフェを出た先で見つけた書店へ向かう。
少し小さめの書店で、推しの小説家の本を何冊か見つけ手に取る。
「んー、こっちは前作の続きかぁ…買うならこっちやな。でもこの新作も気になるんよなぁ…。単行本も捨て難いし…。」
「全部買えばいいだろ」
「鳴海さんと違てお金大切にする派なんで」
「そういう意味じゃないが!?」
呆れたように言う鳴海にムッとして反論すれば、なぜかキレてかかられた。
「え?」
「ボクが買うと言っとるだろ」
「えっ、いやええですよ、ホテル代も払ってもろたし」
「あれはノーカンだろ」
「えぇ…?」
なぜか今日は鳴海が異様に奢ろうとしてくる。先程のカフェの時も、店を出た時に「ボクが出したのに…」とかボヤいてて驚かされたものだ。
「せやけど、上官に奢らせるなんてそんな」
「だから今日はそーゆーの要らん」
「いやいや、奢らせとるのには変わりないですし」
「っだぁぁしつこい、黙ってボクに奢られとけ!」
「はぁ…?」
まさかこの男、誕生日だから奢ってくれているのだろうか。
「…僕が誕生日やからそんな奢ってくれるんですか?」
…少し、ほんの少しだけ、期待しながら聞いてみる。
「…別に。気分だ」
「……さいですか」
ここは嘘でも言ってほしかったところだ。
「ま、ええです。買うてくれるんならお願いします」
「ん、任せろ」
それから程なくして戻ってきた鳴海。手には数冊の本を抱えている。
「…レジ袋貰うとかなかったんですか」
「あ………いやSDGsに貢献しているんだぞボクは」
「…はぁ…さすがですねぇ鳴海さん(笑)」
思いっきり「あ」って言うたな今…笑
「何笑っとんじゃい保科ゴラァ」
「はは、何も」
笑って誤魔化し、やっぱりこの人おもろいなぁと思いながら次の目的地へと向かった。
コメント
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本垢の方から見てるんですけど、神ですよね???ガチ好き(?)
とりあえず可愛い!!!その言葉しか思いつきません🥹🎀照れながら言う隊長とか要らんにも何か意味がありそうで幸せnrm隊長の言動一つ一つ深掘りしてしまう🤞🏻❕